クラファンで約4000万円を集めたゲーム、支援者全員に返金実施へ。紆余曲折を経た注目FPS開発元、親会社と共に心機一転を図る

BULKHEADは7月11日、『Battalion 1944』のKickstarterでのクラウドファンディングキャンペーンに関して、すべての支援者に返金をおこなうと発表した。同キャンペーンは2016年に実施され、約31万7000ユーロ(当時のレートで約4000万円)を獲得していた。

BULKHEADは7月11日、『Battalion 1944』のKickstarterでのクラウドファンディングキャンペーンに関して、すべての支援者に返金をおこなうと発表した。同キャンペーンは2016年2月から3月にかけて実施され、約31万7000ユーロ(当時のレートで約4000万円)を獲得。その後Steam向けにリリースされたものの紆余曲折を経ており、それが返金の背景としてあるようだ。PC Gamerが伝えている。


『Battalion 1944』はBULKHEADが手がける対戦FPSゲームだ。Steam向けに2018年2月に早期アクセス配信開始され、2019年5月に正式リリースされた。その後、2022年8月に『BATTALION: Legacy』と名を改めて、基本プレイ無料タイトルとして配信されている。本作は第二次世界大戦をテーマとしており、5v5の戦闘が展開される。サーチ&デストロイモードのほか、チームデスマッチモードなども用意。30種類以上の武器が登場する。

本作は2016年2月に、Kickstarterにてクラウドファンディングキャンペーンが実施。1か月間で目標額の3倍以上となる約31万7000ユーロを獲得し、大成功を収めた。今回、その際の支援者に向けた支援金の返金対応がおこなわれている。なぜ今になって返金が実施されたのか。それは本作および開発元BULKHEADが歩んだ紆余曲折の歴史が関係していると見られる。


BULKHEADはKickstarterでの成功を収めたのちの2017年3月、「Square Enix Collective」を通して、スクウェア・エニックスとの本作におけるパートナーシップを結んだことを発表。Square Enix Collectiveとは、同社が実施しているインディーゲームおよび小規模開発ゲームをサポートする支援プログラム。開発費やパブリッシング面で、本作の開発は順風満帆な船出を見せていたといえる。なお本作は当初PS4/Xbox One向けにもリリースが予定されていた。

そして2018年2月には、Steam向けに早期アクセス配信が開始。当初開発元は初日の同時接続プレイヤー数を3000人程度と見込んでいたそうだが、実際には1万6771人を記録する好調ぶりを見せた。一方でマッチングエラーを中心に不具合を残した状態でのスタートであり、徐々にプレイヤー数は減少。開発元はアップデートを重ねていたものの、配信から半年後には同時接続プレイヤー数がピーク時でも200人程度まで落ち込んでいた(SteamDB)。


そんな本作は2019年5月に正式リリースされた。同時接続プレイヤー数はピーク時約9300人を記録したものの、その後プレイヤー数は再び減少。同年12月のアップデート以降新たな展開もおこなわれず、2020年以降プレイヤー数は減少の一途を辿った。

そうした中でBULKHEADは2022年8月、Square Enix Collectiveに基づくスクウェア・エニックスとのパートナーシップを解消したことを発表。コンソール向けのリリースは中止され、Kickstarterにてコンソール版をリワードとして選択していた支援者に返金をおこなうと伝えていた。また本作のタイトルを『BATTALION: Legacy』と改め、Steam向けに基本プレイ無料化することが発表された。


その後BULKHEADは2022年12月、Splash Damageに買収されたことを発表した。Splash Damageはイギリスを拠点とするデベロッパーだ。同スタジオが黎明期に手がけた『Wolfenstein: Enemy Territory』は当時大人気を博したほか、『BRINK』や『Dirty Bomb』といったオンライン対戦FPSを開発。対戦シューター開発に定評のあるスタジオである。

BULKHEADは傘下スタジオとしてサンドボックス要素のあるFPS『Wardogs: King of the Hill』を開発中。また最大4人プレイのオンラインアクションゲーム『Transformers: Reactivate』をSplash Damageと共同開発中だ。


そしてこのたび、BULKHEADは『Battalion 1944』のKickstarterでのすべての支援者に対し、返金をおこなうことを発表した。上記の動画によると、今回の返金はリワードとして選択していたプラットフォームに関わらず、すべての支援者におこなわれるという。同スタジオは以前より支援者への返金のために資金を貯めていたそうで、これを親会社であるSplash Damageに伝えたところ、返金に協力する申し出があったそうだ。これにより、BULKHEADの想定よりも早いタイミングでの返金が可能になったわけだろう。

Splash Damageはプレイヤーと開発者の関係の重要性を理解してくれたという。つまり同社にも、作品に期待をかけてくれたプレイヤーたちに対して、BULKHEADから義理を通してほしいという想いもあるのだろう。なおBULKHEADは動画にて、物品でのリワードは支援者を待たせた挙句、用意できなかったとも説明。Splash Damageによる協力がなくとも、将来的に返金を実施する計画はあったのかもしれない。


大きな期待をかけられながらも早期アクセス配信開始時に大きく躓き、移行活気を取り戻せなかった『Battalion 1944』。『BATTALION: Legacy』として基本プレイ無料化した直後は約1500人の同時接続プレイヤー数を集めたものの、その後再び減少を見せ、直近ではピーク時にも約10人のプレイヤーが遊ぶにとどまっている。アップデートを重ねた同作のゲームプレイには一定の評価が寄せられているものの、人口減少は大きな課題となっているようだ。

いずれにせよBULKHEADはSplash Damageの傘下スタジオとして、新たなゲームの開発をおこなっている。過去の失敗に向き合い、心機一転して同スタジオが手がける新作の続報に期待したい。

『BATTALION: Legacy』はPC(Steam)にて基本プレイ無料配信中だ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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