WW2リアルタイムステルスゲーム『ウォー・モングレルス』紹介。 “いま”だからこそ現実感を増す、戦争の重み

『ウォー・モングレルス』紹介。第二次世界大戦の時代にドイツ軍から脱走する主人公たちを通して、戦争の痛みや苦しみを描いた作品である。

DMM GAMESは7月13日、リアルタイムタクティクスゲーム『ウォー・モングレルス』をPS4/PS5向けに発売する。

『ウォー・モングレルス』は俯瞰視点・リアルタイムのステルス戦術ゲームだ。ポーランドのデベロッパーDestructive Creationsが開発を手がけ、2021年・2022年には、PC(Steam/Epic Gamesストア/DMM GAME PLAYER)版が、2023年4月にはXbox One/Xbox Series X|S版が発売されている。第二次世界大戦の時代にドイツ軍から脱走する主人公たちを通して、戦争の痛みや苦しみを描いた作品である。

PS4/PS5版の発売に先駆け、筆者はPS5版をプレイする機会をいただいた。本稿では、そこで触れた内容をお伝えしていく。チャプター1までの内容に言及しているものの、物語やゲームの根幹に関わるネタバレには触れていないため、プレイを検討している方は参考にしていただければ幸いだ。

シリアスな雰囲気・世界観で第二次世界大戦を描く

『ウォー・モングレルス』は第二次世界大戦における光と闇を描いた作品だ。ドイツ政府のプロパガンダに踊らされて戦争に参加することになった主人公のマンフレッドとエバルトは、自軍の兵士による民間人への残虐行為を目の当たりにしたことで心情が変化。命令という名の虐殺を拒否した2人は罰として危険な任務に送られることとなる。物語は、マンフレッドとエバルトの2人がこの作戦から脱走を企てるところからスタートする。

『ウォー・モングレルス』のメインメッセージは、「この紛争に関与したすべての一般の人々が犠牲者であり、戦争がどのように彼らを変えていったのか」というものだ。ゲームのシナリオは歴史上の出来事にインスパイアされており、歴史的証拠や専門家の話に基づいて制作されたという。物語そのものは架空の出来事であるものの、「実際にあったかもしれない物語」として精巧に作られている。

そんな前提もあり、物語は終始重く、シリアスで暗いものを感じさせる。ミッションの端々に挟まれるアニメーションも彩度が低く重苦しい雰囲気が漂っており、戦争の暗鬱さや悲哀がひしひしと伝わってくる。いわゆる“戦争モノ”のなかでも、活劇的であったり明るい物語を求めている人々には、留意点として申し添えておきたい。


しかし筆者は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに世界中で戦争への不安が高まっている現在だからこそ、「過去にあったかもしれない物語」ではなく「現在も起きているかもしれない物語」として、『ウォー・モングレルス』をより身近に感じることができたように思う。PC版の発売当初とは世界情勢が異なってしまった今だからこそ理解しやすい物語になっていると感じてしまったのは、少々悲しい話でもあるが。

リアルタイムの緊張感を活かすゲームシステム

本作のゲームプレイの軸となるのが、ステルスメインのタクティカルバトルだ。ゲームは、俯瞰視点でリアルタイムに進行。プレイヤーは1キャラ単位で指示を飛ばし、「操作タイミングをはかる」など緊張感のあるアクション性要素も考慮しつつ戦術的にミッションを進行していく。ミッションごとに指定された事項を達成する事でミッションクリアとなる。例えばチャプター1では、脱走兵であるマンフレッドとエバルトを操作し、村から脱出することが目標となる。

ゲームは12のミッションで構成され、ステージ毎に異なるキャラクターを使用し、固有のスキルを駆使して状況を切り開いていくことになる。たとえばチャプター1では、主人公のエバルトは「乱闘」で一度に2人の敵を無力化できる。もう一人の主人公であるマンフレッドは高所によじ登ることが可能で、2人の得意分野をうまく活かしながら目標に向かって少しずつ前進していくこととなる。また、落ちているアイテムを上手く駆使することでも状況を打破することができる。

ミッション中にはさまざまな戦術を試行錯誤することができる。フィールドには多くのギミックが点在しており、拾ったアイテムで敵の気を引いたり、地形を活かして罠をしかけたりと多彩な行動が可能。ミッション達成のための道筋はひとつではない。2人での協力プレイも可能なため、友人と話し合いながら作戦に挑んでもいいだろう。


大量の敵がうごめくなか、2人のキャラクターを同時に動かすための仕組みが「計画モード」だ。このモードに入ると時間の流れが極めて遅くなり、敵をどう“処理”していくか、焦らずにキャラクターに指示できるようになる。1人目のキャラクターが手前の敵を倒し、もう一人のキャラクターが奥の敵を無力化するといった同時並行処理をしやすいシステムだ。通常の戦闘モードと切り替えつつ、うまく先へと進んでいこう。

ゲームは基本的に、敵の視野を確認し、一瞬で敵を無力化できる手段を考えながら隠密行動をしていくことになる。音を立てればたちまち兵士に囲まれるような状況が常であるため、一瞬の油断が命取りだ。しかし、状況によっては敵から銃を奪って敵を殲滅するなど、勇気ある行動も必要となる。プレイヤーは緊張感に身を置きながら、常に自分が取れる最良の選択肢を模索していかなければならないのだ。

筆者は、ずっと息が詰まるような気持ちでプレイをしていた。こちらが動かせるキャラクターは2人。武器もナイフがあればマシな方だ。対する周囲には、銃火器で武装した兵士が闊歩している。絶望的な状況だが、キャラクターの心情を考えるならこんなところで死にたくはない。藁のように細いチャンスをひとつひとつ掴みながら、どうにか生き延びる。しかし、現実にはこういったチャンスを掴むことができずに亡くなった人々もたくさんいたのだろう。そういった幕の外にいる存在にも思いを馳せながらコントローラーを握っていた。
 


開発元のDestructive Creationsはポーランドのゲームスタジオだ。ポーランドは第二次世界大戦においてドイツとソ連に分割され、民主化にいたった現在でもなおドイツとの賠償請求のやり取りが続いているなど、多くの戦争の傷痕が癒えきっていない国と言える。そんな国の視点から描かれる戦争風景はゲームプレイのみならず、エクストラコンテンツとして閲覧可能な映像でも確認できる。当時の映像なども利用されており、現実を突きつけられる覚悟の必要なムービー群だ。

緊張感のあるタクティクスゲームやステルスアクションが好きな人なら、本作のゲームシステム部分は気に入るかもしれない。しかし筆者は本作のことを、ゲームジャンルの好みという基準だけで人に勧めるのは難しいタイトルだと考える。ゲームはゲームとしてカジュアルに摂取したい人に手渡すには、本作のテーマは重すぎるからだ。

一方で、世界情勢について深く考えたり、ゲームを通じて現実とのつながりについて思案したい人には、本作は深く突き刺さるだろう。戦争に対する怒りややるせなさがひしひしと伝わってくるタイトルだからだ。戦争がより身近になった現代において、過去の戦争の“あったかもしれない現実”を描いた作品に触れるのは意義あることと考える。

ウォー・モングレルス』PS4/PS5版は、7月13日発売予定だ。

Aki Nogishi
Aki Nogishi

ポストアポカリプスとドット絵に心惹かれます。AUTOMATONではFF14をメインに担当します。

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