Steam Deck販売元KOMODOにインタビュー。日本での売れ行きや反響、他携帯ハードと比べての差別化点について訊いた

Steamを運営するValveが手がけた携帯型PCゲーム機「Steam Deck」。日本などアジア圏の一部の国では、Valveと提携する株式会社KOMODOを通じて販売されている。今回弊誌は、KOMODOのリッキー・ウーイ氏に、Steam Deckの日本での展開などについてお話をうかがった。

Steamを運営するValveが手がけた携帯型PCゲーム機「Steam Deck」。7インチディスプレイを搭載し、両サイドには本格的なサイズのコントローラー部が配置され、いつでもどこでもPCゲームを楽しむことができるデバイスだ。2022年2月に北米と欧州の一部で販売開始されるやいなや、ゲーマーの間で大きな話題となった。日本においては、2022年12月より予約者向けの出荷が開始され、そして2023年1月からは即時購入の提供が開始されている。

実はSteam Deckは、欧米ではSteamを通じてValveが直接販売しているが、日本などアジア圏の一部の国では、Valveと提携する株式会社KOMODOを通じて販売されている。今回弊誌は、KOMODOの共同創業者で代表取締役社長を務めるリッキー・ウーイ氏に、Steam Deckの日本での展開などについてお話をうかがった。


──Steam Deckの日本での展開が発表された際に、初めてKOMODOという会社のことを知った人もいるかと思います。御社の成り立ちや、どういった経歴の人が所属しているのか、またValveとの関係をあらためてお教えいただけますか。

リッキー・ウーイ氏(以下、ウーイ):
KOMODOは、ジャック・モモセと共同で設立しました。私がValve社でアジア地域のSteam事業展開を統括していた頃にジャックと京都で出会いました。その後、長年にわたりお互いをよく知り、今は共に仕事をすることを楽しんでいます。

Degicaという決済会社の設立者であるジャックは、当時、Steamの地域決済サービスの提供のほか、ゲームのパブリッシングや流通部門もおこなっていました。Degica社の決済事業の急成長に伴い、ゲームパブリッシング・流通部門を分ける必要性が出てきました。ジャックと共に、新しく独立した事業を始めるにあたり、Degica社のゲーム部門からできる限りの事業を引き継ぎたいという考えがあったため、当時のゲーム部門に在籍していた多くのメンバーでKOMODO東京オフィスの初期チームを形成することになりました。

現在、KOMODOは東京とホノルルに拠点を置いており、ゲーム開発やパブリッシング、流通で長年の経験を積んだ社員が在籍しています。先日、KOMODOとして初の自社制作ゲームとなる『ポケットミラー~黄金の夢』をSteamでリリースしたばかりですが、コミュニティの皆さまの反応に感激しているところです。また、当社は新しいマンガプロジェクトにも取り組んでおり、世界に発信することを楽しみにしています。当社のさらなる発展に向け、才能あるデザイナー、アーティスト、エンジニア、マーケティング担当者などを積極的に採用しておりますので、これを読んでいる方で、もしご興味がおありの方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください!

──日本などアジア圏でKOMODOがSteam Deckを販売するというのは、どういった経緯で決まったのでしょうか。

ウーイ:
ハードウェア製品を販売するには、物流・フルフィルメント・マーケティング・ローカライズサポート・決済などのさまざまな課題があり、現地の知識や経験が不可欠です。このような課題に対する解決策を提供できることは、ハードウェアの制作会社にとっては価値のあることであり、Steam Deckのように、異なる地域の新規顧客に対して迅速に紹介できるようになります。

そういった意味では、KOMODOはValve Index以外のハードウェア製品についても、ゲーミングノートPCや電子機器の日本販売代理店として販売してきた経緯があり、この分野では一定のノウハウを持ち合わせています。また、Steamではゲームタイトルのパブリッシングも数多くおこなってきました。Valve社からSteam Deckについての話をいただいた時は、すごく嬉しかったです。私たちの歴史と実績を考えると、それは自然な組み合わせでした。


──海外では、512GBモデルがもっともよく売れているという話を聞いたことがあります。日本では各モデルどの順番で売れていますか?また予約開始直後や、しばらく日にちが経った後では売れ筋のモデルに変化はありましたか。

ウーイ:
売れているモデルの比率は一過性のものであり、その時々で変動しています。ここで分かったことは、それぞれに事情や好みに合ったモデルがあるということです。512GBのモデルに関して言えば、より大きく高速なストレージや専用ケースが付属している点に加え、他のモデルよりも光の反射を抑え、屋外でのプレイに最適なプレミアム防眩エッチングガラスを採用している点が魅力的だと言えるでしょう。

──具体的に何台売れているのか、公開できる数字はありますか。

ウーイ:
具体的な数字は申し上げられませんが、大変ご好評をいただいており、各地域でさまざまなモデルが完売することもあります。

──では、これまでの日本での売れ行きについては、どのように受け止めていますか。

ウーイ:
Steam Deckは本当に素晴らしいデバイスだと思いますし、日本でのPCゲームの人気はここ数年加速しているので、当初から前向きに見ていましたが、それでも予想以上の売れ行きだと思います。また、KOMODOが運営するオンラインショップ「Steam Deck ストア」でSteam Deckをご購入くださったお客様からも、非常に多くのポジティブなコメントをいただき、大変嬉しく思っております。

──KOMODOは韓国・香港・台湾向けの販売も扱っていますが、そちらでの売れ行きはいかがでしょうか。PCゲームがよくプレイされている地域だと思いますが。

ウーイ:
日本と同じく、これら地域での売り上げも非常に好調です。Steamを中心とした携帯型ゲーミングPCとして、Steam Deckには発売当初から豊富なタイトルが揃っています。また、PCゲームを新しく始める方々にとっては、Steam Deckの形状により、PCゲームをより身近なものに感じれるかと思いますし、PCゲームユーザーの方々からは、カスタマイズ性を高く評価していただいております。そのため、Steam Deckは幅広い客層に支持されているだけでなく、あらゆる市場で一貫した人気を誇っています。


──海外のSteam Deck公式Twitterアカウントでは、Steam Deckでよく遊ばれたタイトルを毎月公開しています。日本のユーザーに限定した場合、何か地域性はみられますか。

ウーイ:
日本語で発売されているタイトルで、ゲーム性や機能に地域差がないタイトルの場合は、それほど大きな差はありません。優れたゲームには地域性は無いと言えるでしょう。

──Steam Deckを手にした日本のユーザーからは、どのような反応が多くみられますか。ユニークな使い方をしているユーザーもいますか。

ウーイ:
すばらしい質問ですね。現在、お客様からたくさんのご好評をいただいております。初めてプレイをした後にいただく感想の多くは、「Steam Deckは想像以上に軽かった」というものです。露天風呂などの意外な場所で使ったり、ターンテーブルに接続してDJプレイに使ったりなど、外出先へSteam Deckを持ち出して楽しんでいる方も多いようです。また、スリープモードのおかげで、お子さんのお昼寝中に短時間でもプレイできるなど、生活の中に再びゲームを取り込むことができるようになったといった声も多数聞かれます。どこでもPCゲームを楽しめることがSteam Deckの特徴のひとつなので、プレイヤーの皆さんには、今後も一風変わった楽しみ方をしていただきたいと思います。

──日本のゲームメーカーや開発者からの反響はいかがでしょうか。

ウーイ:
日本のデベロッパーの皆さまからも肯定的なフィードバックを沢山いただいています。Steam DeckはPCゲームをこれまで以上に便利で身近なものにしましたし、多くの方々の頭の中にある「PCとは何か」という概念を再定義することにも貢献したとも思っています。長い間、PCゲームはパソコンを起動して机に向かって遊ぶものでしたが、Steam Deckのパワーと携帯性により、PC ゲームの魅力がより幅広いゲーマーに広がり、Steam Deckをきっかけにして、これまで以上にPCゲームに親しんでいただいていると思います。これはPCゲーム市場の拡大にも繋がり、PCのプラットフォームが開発者にとってより一層魅力的なものになりました。


ウーイ:
少し話は逸れますが、PCが開発に便利なプラットフォームである理由は、そもそも開発者がゲームを開発するための環境だからです。今後もゲーム開発者の方々と協力してPCゲームの良さを伝えていきたいと考えているところですが、つい先日、Steam Deckでの互換性確認済みの『ケットミラー~黄金の夢』を自社制作したところです。

──Steam Deckが登場したタイミングは、先行したGPDやAYANEOなど他社のゲーム向けUMPCが成熟してきた時期でもあったと思います。そうした他社製品についてはどう捉えていますか。また他社製品と比べた場合の、Steam Deckの強みは何だと考えていますか。

ウーイ:
他社が携帯型PCゲームに取り組んでいるのは素晴らしいことだと思います。Steam Deckは新しいカテゴリーのデバイスを象徴するものであり、これはほんの始まりに過ぎません。PCが常にオープンなプラットフォームであることが強みのひとつだと思うのですが、その理由はイノベーションに適した環境条件を提供するからです。また、PCゲームに投資する人や企業が増えるほど、コミュニティはさらに強く大きく、面白いものになると思っています。

Steam Deckは、携帯型PCゲームのあるべき姿の最初のビジョンを実現したものであり、Valve社がSteamを最大限にサポートするために作ったものなので今後も注目されることでしょう。また、Valve社はハードウェアのアップデートを随時おこなっているので、ハードウェアを追加で購入しなくても、時間と共にSteam Deckもドッキングステーションもより良い製品になっています。また、Steam Deck上で入念に審査されている、Steam Deckとの互換性確認済みカタログが充実している点も魅力のひとつだと思います。今ではSteam Deckとの互換性で「確認済み」または「プレイ可能」とされているタイトルは8000以上にもなります。


──昨年の東京ゲームショウでは、大規模なブースで出展されました。日本ではインディーゲームイベントもさまざま開催されていますが、今年も試遊の機会を設ける計画はありますか。

ウーイ:
Steam Deckについて私たちが学んだことのひとつは、多くの方々が実際に触れることで最初の印象が変わり、その軽さ、快適さ、そしてパワフルさを感じることです。今後は日本国内に限らず、多くの方々がSteam Deckを実際に体験して楽しんでいただけるようなプロモーションイベントを企画しています。例えば、先日、日本のエディオンや香港、台湾のエイサーのようなリテールストアでSteam Deckの販売を開始しました。ローンチの際には店舗での試遊イベントを開催しましたし、今年7月に京都で開催されるBitSummitにも出展する予定です。また、当社の倉庫に眠っている巨大なSteam Deckの模型を再利用する方法も考えなければなりませんね(笑)。

──ちなみに、マスコットキャラクターのSteam Palはどういった経緯で生まれたのでしょうか。

ウーイ:
「Steam Pal」というマスコットは、Valve社のデザイナーであるローレンス・ヤン氏が紙ナプキンに手描きした絵から誕生し、その後日本のイラストレーターCHANxCO氏によっていくつかのバリエーションが生み出されました。お客様だけでなくValve社からも好評で、Valve社からの要望で、当社が2022年の東京ゲームショウで使用したSteam Palのノベルティグッズを先方のオフィスへ送ったこともあります(笑)。


──Steam Deck各モデルおよびドッキングステーションの現在の在庫状況はいかがでしょうか。即時購入の提供を開始した今年1月時点では、64GBモデルとドッキングステーションは予約注文が継続されていましたが。

ウーイ:
一時そのような状況が続きましたが、現時点では日本国内ですべてのモデルの在庫を確保しています。先日記念セールをおこなったばかりなのですが、その影響でいくつかのモデルが一時品切れになってしまいました。

──日本でのSteam Deckのサポートは、現在どういった体制で提供されていますか。また、海外ではiFixitにて修理パーツが販売されていますが、日本ではいかがでしょうか。

ウーイ:
お支払いや配送に関する問題やご質問がある場合は、当社のお問合せフォームより受け付けており、お客様の地域の言語でのサポートを提供しております。その他、設定や初期不良、保証修理、あるいはソフトウェアに関するお問い合わせは、Steamサポートよりサポートを提供しております。日本での保証外修理については、今後のアップデートにご期待ください。

──Steam Deckは、欧米では出荷開始から1年が過ぎ、日本でも即時購入の提供が開始されてからしばらく経ちました。Steam Deckの販売や宣伝に関して、今後何か計画していることはありますか。

ウーイ:
当社は、常にお客様の体験を向上することを目標に掲げています。Steam Deckをご購入いただいた各地域のユーザーの皆さまからは、嬉しいコメントをたくさんいただき大変励みになっております。また、今後も小売パートナーの皆さまと協力しながら、各地域でSteam Deckの常設デモスペースを提供し、より手軽にSteam Deckをお試しいただけるようにしたいと思います。

Steam Deckは、当社が運営するオンラインストア「Steam Deck ストア」に加え、日本ではエディオン、ユニットコムの一部店舗、台湾と香港ではエイサーの各店舗、先週開始されたばかりの韓国のエレクトロマート各店舗でご購入いただけます。さらに近日中に新たな小売りパートナーの発表もおこなう予定です。また、「Steam Deck ストア」では正規取扱店舗のリストページも更新する予定ですので、お客様はご購入の前に実際に試遊できる場所を簡単に探せるようになります。

より多くのゲームユーザーの皆さまにPCゲームを身近に感じていただけるよう、オンラインとオフラインの両方でプロモーションやイベントを企画しています。今年も皆さまに引き続きSteam DeckでPCゲームをお楽しみいただけるよう、ワクワクするような発表を予定しています。

──ありがとうございました。


Steam Deckは、KOMODOが運営する「Steam Deckサイト」を通じて販売中だ。内蔵ストレージ容量や同梱品などの違いにより3モデルで展開されており、価格は64GBモデルが5万9800円、256GBモデルは7万9800円、512GBモデルは9万9800円となっている。外部ディスプレイや周辺機器との接続に便利なドッキングステーションも、1万4800円にて販売中である。

このほか、パソコン工房 秋葉原イイヤマストア(東京)やエディオンなんば本店(大阪)が、Steam Deckの正規取扱店舗となっている。各店舗では実機が展示され、在庫販売が実施中。Steam Deckの購入を検討している近隣の方は、まずは店頭で実機に触れてみるのも良いだろう。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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