AUTOMATON vs. 小清水史 大阪のピグミースタジオに妖精が集う (中編)

前編から引き続き、ピグミースタジオ小清水史へのインタビューです。

前編から引き続き、ピグミースタジオ小清水史へのインタビューです。

 


――お話をうかがうに、わりと原点回帰といいますか、昔ながらのゲームがお好きなのでしょうか?

いろんなゲームをやっていますよ。『BEYOND』『The Last of Us』『BADLAND』『Tengami』『Monument』『百鬼大戦絵巻』『Clash of Clans』等など、みんなおもしろすぎて困ります。

 

――『The Last of Us』等は、ストーリーにですか?

ストーリーはもちろん、僕は、あんまり"ゾンビゲーム"を普段やらないんですが、このゲームは私もふくめて、そういう「ファンでない人」にも届けられたのでは? その点ですごいと思います。『The Last of Us』は、父親心をわしづかみにするなにかがありましたね。娘がいる私にとってああいうアプローチのゲームは卑怯だ(笑)

ゲームコンセプト、ゲームデザイン、グラフィック、どれをとっても素晴らしいですよね。そんなゲームがある中で、それなりのコスト感で存在感を出していかなければならない。気持ちを引き締められますよね。

ほかにも面白いゲームはいっぱいありますけれど、新規タイトルとしてのセールスという点では、海外は元気ですよね。『The Last of Us』も相当売れてましたし(注: 2014年3月段階でワールドワイド600万本)。日本でも『ポケモン』や『モンハン』は数百万規模で売れましたが、この手の新規IPはそんなにたくさん出ていない印象ですし。

 

――『ポケモン』が何百万本売れるのは「いつものこと」でもあります。

ファンがちゃんといて、その期待に裏切らないように続けていくということは、メーカーの使命としては大事なことです。

 

――「Steamであのゲームがはやってる!」という話はちらほらと聞くのですが、それが何百万本も売れたのか?となると事例はほとんどないと言ってもよさそうです。

海外だからってすべてのセールスがいいかというとそうでもないですよね。

 

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そうそう!『野犬のロデム』をリリースしました!今回、監修として一緒にゲーム制作にたずさわっていただいたラショウさんは『ボコスカウォーズ』の作者としても知られていますが、Macユーザーのなかではイタチョコゲームのクリエイターとしても人気があります。熱狂的なファンを大切にされている。See also: ロフトプラスワン

新宿ロフトプラスワンでおこなった「野犬のロデム発売記念LIVE」のイベントでもそうそうたる「お客さん」にご来場いただきましてね。世界的なアーティストからカリスマゲームクリエイターまで。このゲームを発売したということで、応援にかけつけてくださった。飯田和敏さん、木村祥朗さんもイタチョコゲームのファンのようで、なんだか不思議なマインドの人達が集まった印象です。なんだか「このゲームを出すということにちゃんと意味はあったじゃないか」と思えて、すこし嬉しくなりましたね。

 

――そもそもピグミースタジオさんとラショウさんがつながったきっかけというのはなんだったのでしょうか?

ラショウさんとのつながりは、僕が1997年にラショウさんと大阪でお会いしたところから始ります。当時、「Mac Fan Expo in Kansai'97」というものがあって、企業ブースが立ちならぶなか、ラショウさんの手作りヘンテコオーラがたちこめてるのを目の当たりにして。僕は、そこから彼の活動を遠巻きに見ていたのですが、ちょうど神戸にアトリエを移されたタイミングでようやく具体的にゲームを一緒に創っていくお話をさせていただく流れとなりました。人形浄瑠璃、「マスクドシャンソン」(ラショウ流、自作の歌をマスクをかぶって歌うエンターテイメント)、演劇などを通じて、クリエイターとしてラショウさんは数段パワーアップしていましたね。

ゲームの企画の話を最初にしました。そこで、今までの集大成として『野犬のロデム』を創り、ひとつの完結としたいということになりました。最初は、『野犬ロデム』を家庭用ゲーム機に少しの調整を加えてもっていきましょうっていうくらいで考えていたのですが、一緒にアイデアを交わしていくうちに、全部詰めこみたくなってきまして。(笑) ゲームもふくめて、総合芸術的にやってきたわけですからね、ゲームに全部入れられたら面白いだろうなと。仕上がりとしても、まさしく集大成といえる作品になったのではないでしょうか。

 

――『野犬ロデム』のリメイクではないと。

もはやリメイクという言葉ではおさまりませんね(笑)

 

――ちなみに、これはラショウさんにおうかがいしたほうがよろしいのかもしれませんが、ロデムの名前の由来は?

それについてはいつもラショウさんが茶化してるんですけどね……彼がつける名前はユーモアで名前をもじってつけることが多いです。だから、お聞きしてもよくわからない返答で返ってくるでしょうねぇ……ということで、皆さんの想像にお任せしますよ(笑)

 

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――すこし話が巻き戻ってしまいますが、小清水さんが現在40歳で、「ゲームやろうぜ!」が始まったのが1995年ごろから、いまから20年くらい前です。それくらいの年齢の段階からゲームを創る、いまでいうところのインディーゲームマインドのあるような作品を創ると決めていらっしゃったのですか?

当時はプレイステーションが始まったころで、イカ天が好きだったってこともあるんですけど……。なんだか同じような匂いがしたというか、とにかくおもしろそうだったし、なにかヘンテコなものを生み出すことに興味があった。

この「やろうぜ」の流れは、『XI』『どこでもいっしょ』を生み出してから『勇者のくせになまいきだ』『TOKYO JUNGLE』『rain』と続いていくのですが、今考えてもこれらの作品を容認して売り切るということでは、すごいことなんじゃないかなって思いますよね。

そんなこんなで色々と関わらせていただいて、結果的に僕みたいな経験をした「やろうぜ野郎」が起業して、僕がソニーさんからやってもらったことと同じようなことを他のクリエイターにしはじめる…何の因果なんでしょうね(笑) お父さんにやってもらったことを子どもにしているというか、とにかくピグミーとしてできることをしていきたいなと。僕は、勝手にやろうぜのDNAを継いでいるつもりでいます。

 

――ゲームを自己表現としてとらえられている?

ゲームで自己表現とは考えたことがないですね。そこの中だけでおさまりたくないというか。でもね、ゲームで新しい刺激を与えたいとはつねに思ってます。そこで、自分ができることをやっていきたい。たりないものを集めたい。

 

――"アプローチ"で連想するのですが、小清水さんの来歴のなかですさまじい存在感を放っている「ベーカリーショップ経営」です。あれはいったい?

調べられたんですか(笑)今は、ゲームのプロデューサー、CEOなのですが、この会社の前に実は、クリエイティブ・ディレクターという立ち位置におりまして。ようするに、クリエイティブな業務においてトータルなディレクションを行うということです。それで、パン屋もクリエイティブだと言い張る(笑)

ピグミースタジオの創業前に別の会社を運営していまして、そこでゲーム、コンテンツ制作以外にもクリエイティブ・ディレクターとして色々と各方面の仕事をしていたら、結果的にそっちの方が儲かっちゃった。で結果的に、17店舗くらいまでパン屋が拡張しましてね。最初にやっていたゲームの人員は、十数人しかいないのに、パン屋の従業員はアルバイト含めて250名(笑)

それはそれで人生としては悪くないかなとは思ったんですが、なんか僕にはやり残したことがあるような気がしまして。勝手に言っていますがDNAとして……

パン屋はパン屋で楽しいから、これは別の会社でやらないといけないということで、ピグミースタジオを立ちあげました。最初から決めてましたね。「ここはまずスタジオって名前をつけよう」って。そうすればパン屋になることはないだろうと(笑) ピグミーというのはこびとの妖精。そのこびとが集まるスタジオということで名前をつけました。いろんな妖精さんが集まってきて不思議なゲームを作るといった会社を目指すという感じで。

 

――それでラショウさんがやってきたと。彼も妖精ですか?

ラショウさんは、見ての通りトント系の妖精ですよ。ここに来る人は、みんな不思議な人ばっかりだと思いますよ。『僕は森世界の神になる』の北山功さんもこびとの妖精ですよね。おそらくホビット。AIの基礎知識とか半端ないですし、実力的に「まだ彼は2割くらいしか使っていない」んじゃないかと。8割はハードの制約その他の理由で実現できていないような気がしますし。今後、もっともっと不思議なゲームを楽しませてくれますよ。いや、発揮していただきます(笑)

NIGOROのみなさんは妖精でいうと……ドワーフですね。トンガリの靴を履いて踊ってるようなタイプではなく、もっと土のところをドカドカ走り回っているような感じ。手先が器用で攻撃力高い! ……この感じ、わかります?

これからもピグミースタジオという森で、同じ波長を持ってる妖精達がたくさん集まってくれると嬉しいですね。僕はできるだけそれを維持したいし大きくしたい。だからこそ、創る満足感だけではダメで、きちんと食べていけるようにしたい。札束風呂に入りたいとかそういうのでなくて、妖精社会人としてちゃんと生活ができるようにね。ファンもクリエイターには、そのように望んでいるでしょうしね。

 

――現在進行中の作品というと、Vita版『LA-MULANA PORTABLE(仮)』の作業の進捗はどれくらいでしょうか?

一般的に移植と呼ばれる部分はほぼ終わっています。今回のVita版にともない調整が必要と思われる部分はNIGOROチームと議論しあい実装を続けている状況ですね。また、新規要素である図鑑機能でモンスターのステータスなんかが表示されるのですが、そのあたりはまだこれからという感じですね。

 

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あと、進捗のお知らせとしましては、先日のイベントに来て頂いたファミ通さんやファンの皆様には、お伝えしたんですけど、すでにラショウさんのあの次回作に取りかかっています。

 

――みなさんが求めている。「あの」。

うん、「あの」(笑) あとは飯田和敏さんらと進めている、『モンケン』のスピンアウト企画『石器モンケン(仮)』ですね。See also: モンケン

 

――『モンケン』スピンアウトですか。ジャンルは?

大きい枠で言えばアクションになるのかな。でも、モンケンとはコンセプトも世界観もまるで違います。僕にとっては、「飯田和敏さん=太陽のしっぽ」なんですよ。今は、これくらいの情報で!又、『野犬のロデム』の時のように……スピンアウトじゃなくて新作になっちゃうかもしれないけど。(笑)

 

――構想段階は脱している?

もうイメージボードとか世界観の資料等もいっぱいできてます。
まだ言えませんが、ゲームコンセプトとしても新しいゲームファンへのアプローチができるのではと期待しています!

 

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後編へ続きます(7月17日公開予定)。

Nobuki Yasuda
Nobuki Yasuda
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