Steam人気ゲームのレビューで「アンチチートソフトの削除手順」を記載したユーザー、Valveに規制される。「参考になった」を押した大量のユーザーもろとも

Steamで配信中の『Warlander』にてネガティブレビューを投じたユーザーと、そのレビューに対して「参考になった」を押したユーザーが規制される一幕があったようだ。アンチチートソフトをめぐる議論が関連しているようである。

Steamで配信中の『Warlander』にてネガティブレビューを投じたユーザーと、そのレビューに対して「参考になった」を押したユーザーが規制される一幕があったようだ。問題はすでにおおむね解決しているものの、当該レビューは消えたまま。レビューの内容に問題があったようである。PC Gamerが伝えている。

『Warlander』は対戦型オンラインファンタジーアクションゲームだ。基本プレイ無料形式にて現在Steamで配信されている。プレイヤーは戦士、魔法使い、僧侶の3つのクラスからキャラを選び、最大20人の陣営で相手本陣の最奥にあるコアの破壊を目指す。2陣営が正面からぶつかり合うモードや、5陣営100人による乱戦モードが用意されている。開発は国内デベロッパーのトイロジック、販売はPLAIONが担当している。


同作のリリース直後となる1月25日に、渦中のレビューが投稿されたようだ。投稿者
FREEDOMS117なる人物。レビューの内容としては『Warlander』のアンチチートツールSentry Anti-Cheatの挙動を批判するもの。FREEDOMS117氏はSentry Anti-Cheatはゲームを閉じても動いており、さらにスタートアップ時も起動しているとコメント。そしてゲームが起動していない時も含め、日本のIPにパケットを送っていると報告。プレイヤーの個人情報を勝手に収集しているのではないかと糾弾していた。FREEDOMS117氏は、Sentry Anti-Cheatのアンインストール方法を、Steamレビューで丁寧にレクチャーしていたわけだ。

Sentry Anti-Cheatは、日本生まれのアンチチートソフトウェアである。東京・港区に拠点を置く株式会社Sentryにより開発された。同ソフトウェアは、Windows カーネルモードドライバーを搭載。OSカーネルレベルでシステム全体の整合性の確保及びバックドアやルートキット等の異常検出を実現、戦いの最前線で徹底的にチートの「防止」及び「検出」を手伝うとしている。


そのためタスクトレイにもソフトウェアが常駐。さらにややこしいのが、Sentry Anti-Cheatのプロセスを閉じても、タスクトレイにアイコンが残るという不具合が存在(現在修正済み)。タスクトレイから消えず、あまり知られないアンチチートツールということもあり、怪しげなツールに見えたのだろう。FREEDOMS117氏は、そうした背景を踏まえ、アンインストール方法をレビューにて案内したのだろう。

一方で、株式会社Sentryの沖絢斗氏は、個人情報を収集しているとの指摘に対して強く反論。そもそも個人情報を収集するモチベーションがなく、「リスクを負ってまで個人情報を収集する合理的な理由はどこにも見当たらないことは明らか」とコメント。またSentry Anti-Cheatのサポートサイトにおいても、同様の説明が記載されている。ユーザー側の主張は、あくまで推測であることを留意したい。

https://twitter.com/kento932376/status/1648060975139155968

【UPDATE 2023/4/18 9:20】
株式会社Sentry社の拠点について修正。また株式会社Sentry代表取締役の沖絢斗氏による反論を掲載


結果的に、当該レビューは4月中旬になり非公開となった。あわせて、FREEDOMS117氏はSteamコミュニティ上での活動が1か月全面的に制限された。さらには、このレビューに対して「参考になる」を押したユーザーたちは1か月レビューに投票できなくなるという旨の通知が寄せられたという。これらの通知を確認し動揺したユーザーたちが、Steamコミュニティにて状況を報告。当該スレッドでは多くのユーザーが混乱している様子が確認できるが、それもそのはず。同レビューに「参考になった」を押したユーザー数は2439人にのぼったとの報告もある(Slashdot)。つまり、2439人のユーザーがレビュー規制をかけられた可能性があったわけだ。


その後、Valveは問い合わせを介してFREEDOMS117氏に状況を説明。まず当該レビューが非公開にされたのは、モデレーターの判断だとコメント。非公開扱いとなった理由としては、レビューを通じてアンチチートツールを削除する手順を案内していた関係で、チート方法やアンチチートツールの改ざんを説明していたと判断されたという。さらにFREEDOMS117氏はレビュー内でレジストリを編集するプロセスを案内していたことにも言及し、他プレイヤーを危険に晒したとして、アカウントをロックしたと述べた。

一方でValve側は、態度を軟化。FREEDOMS117氏の活動や「参考になった」を押したユーザーの活動の制限を解除。一方で当該レビューについては、非公開解除にするにあたっては、レジストリを編集するなどの記載があることを踏まえ、「自己責任」といった記述をすることが望ましいとした。FREEDOMS117氏はValveの返答を受けて、現在の『Warlander』においては、Sentry Anti-Cheatの問題は解決されているとコメント。レビューの復活をValveに要請するとともに、「当該問題は解決している」旨の追記をすると、Steamコミュニティ上で語った。

アンチチートツールをめぐって投じられたレビューが、思わぬ波紋を起こした今回の騒動。Steamレビューは自由で、無秩序な部分がある。比較的“なんでもあり”のSteamレビューにて、重めの規制がかかったことに驚いたユーザーもいたかもしれない。Valveの判断は、些細なことでもデベロッパーとユーザーの両方に重くのしかかるだけに、モデレーターであっても細心の注意を払うことが求められるだろう。

なお、『Warlander』においては、PS5/Xbox Series X|S版のリリースも控えており、現在多数の新コンテンツ開発と各種改善が進められている。続報を楽しみにしておこう。

【UPDATE 2023/4/17 21:22】
Steamレビューが完全に無秩序ではないことを追記

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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