Nintendo Switch新作『カブトクワガタ』が“あまりにも尖っている”として注目集める。配分の偏りがすごすぎる低予算パンチ

小学館は3月15日、『カブトクワガタ』を発売した。本作のリアルなムシたちのグラフィックが注目される一方、荒削りでシュールな要素もユーザー間に反響を呼んでいる。

小学館は3月15日、『カブトクワガタ』を発売した。対応プラットフォームはNintendo Switch。本作のリアルなムシたちのグラフィックが注目される一方、荒削りでシュールな要素もユーザー間に反響を呼んでいる。筆者は同作を購入しプレイしたことを踏まえて、その内容を紐解いていく。

『カブトクワガタ』は、甲虫バトルゲームだ。舞台となるのは巨大なムシたちが住む異世界。カブトムシとクワガタムシ(以下、カブトクワガタ)が大好きな主人公はある日、現実世界からこの地に迷い込んでしまう。異世界では目の赤く光る凶暴化したムシたちが現れ、人々を襲っていた。主人公はカブトクワガタを育成して戦い、ムシたちが凶暴化した謎に迫っていくことになる。

本作は、ゲーム開発を題材とする漫画「ゲーつくっ!!」との完全連動企画として制作されたタイトル。「ゲーつくっ!!」は、小学館「コロコロコミック」の公式サイトコロコロオンライン内の「週刊コロコロコミック」にて連載中だ。


このたびそんな本作が発売となり、ユーザーからゲーム内のさまざまな要素が注目を浴びている。理由としては、とにかく尖ったつくりなのだ。中でも話題を呼んでいるのが、ゲーム内のキャラクターボイスに合成音声が用いられている点。通常ゲームでは、人によるボイスが部分的あるいは全面的に導入されているケースがある。もちろん、そのほとんどが声優によって吹き込まれた声だ。一方で、本作では合成音声を導入。その試み自体は意欲的なのだが、本作ではセリフとテキストだけでなく、テキストのないセリフやUI操作に至るまで、さまざまな音声が抑揚なく合成音声で読み上げられるのだ。

特に声不要なシーンでも迫真かつ抑揚のない読み上げ音声が、ゲーム機から発せられるシュールさがユーザーの笑いを誘っているようだ。ちなみに本作では、カブトクワガタもなぜかけたたましい鳴き声を上げるため、終始賑やかなゲームとなっている。

奇妙なのはボイスだけではない。というか、本作はツッコミどころだらけなのだ。すべてが唐突なストーリー展開や、基本的にはルーレットを目押しして大きい数字で止めるだけのシンプルな戦闘システム。さらに驚くべきは、Nintendo Switchのホーム画面上でゲームタイトルが間違っている。「カブクトクワガタ」になっているのである。意図的なのか天然なのか、見分けがつかない。ちなみに筆者がプレイする限りでは大きな不具合は見られず、ゲーム自体は問題なくプレイ可能だ。


一方で、すべてが奇妙なわけではない。グラフィック面はかなり力が入っている。具体的には、カブトクワガタをかなりリアルに再現したモデリングは一見の価値ありだ。本作には各種カブトクワガタにオスとメスの両方が登場するほか、産卵・育成要素もあり。ムシごとにサナギのグラフィックも用意されているなど、開発陣のこだわりも垣間見える。


御神木を見上げて敵を探すシステムや、戦闘時の演出などもなかなか豪華。シュールで荒削りな部分がありつつも、尖った特徴もあるといえる。ちなみに発売前からシュールな宣伝映像が複数打ち出されている。公式も尖った作品として本作を押し出す狙いがあったのかもしれない。このCMを見ると不安を掻き立てられる人がほとんどだろう。宣伝的なミスリードはないと言えるかもしれない。

本作のプロデューサーは、「月刊コロコロコミック」の前編集長である和田誠氏が担当。そしてディレクターは植村比呂志氏が務めているという(コロコロオンライン)。植村氏は、セガのアーケード用ゲーム『甲虫王者ムシキング』(以下、ムシキング)のプロデューサーとして知られる人物だ。両氏には、当時の小学館の学年誌やコロコロコミックで『ムシキング』を扱っていた縁があり、今回タッグを組んで『カブトクワガタ』を手がける運びになったそうだ。

本作のターゲット層は小学生にくわえて、『ムシキング』のブームを小学生として経験したユーザーだという。現代の表現力を活かしたRPGとして、育成要素を取り入れている点が特徴とされている。そのため、ムシ同士を交配しながらさらに強く大きい個体を作り上げるゲームサイクルが採用されたそうだ。開発陣は書籍や論文に目を通してマニアックで面白い要素を抽出。大きいメスの個体だけが強く大きいムシを産めるなど、ゲーム内の要素に反映させているとのこと。


ツッコミどころとこだわりの両方が垣間見える本作。和田氏いわく、本作はほかの出版社のゲーム開発プロジェクトに比べて「圧倒的に予算が少ない」とのこと。奇妙な要素も見られるのは、こだわりたい部分にリソースを集中させた結果かもしれない。本作に向けては今後DLCの配信も計画されているそうで、ムシやマップの追加のほか、ローカル対戦機能追加も検討されているという。発売時に盛り込めなかった人気のある甲虫もDLC向けに実装予定だそうだ。筆者としては本作を楽しくプレイしているが、ゲームとしてオススメできるかといわれると、少々口をつぐんでしまうところである。主に低年齢層をターゲットとしていることは留意すべきだろう。

『カブトクワガタ』はNintendo Switch向けに発売中。4月14日23時59分まで定価1980円の50%オフとなる980円で販売中だ。なお本稿でツイートを引用させていただいたDAIKAI-6氏は自身のブログで本作のレビューを掲載している。そちらを読んでみるのもいいかもしれない。



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Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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