『.hack』周年番組で松山洋氏が「新作制作発表……フェイントボケ」をかまして期待と混乱を招く。ぴろしのジョーク爆弾に海外メディアたじたじ
バンダイナムコエンターテインメントは3月12日『.hack』シリーズの節目を祝う「.hack20周年スペシャルライブ」を配信した。同イベントでは、主題歌アーティストによる生歌唱のほか、シリーズの立役者である松山洋氏もトークを披露。そのなかでの同氏がシリーズ新作について「うっかり」とも「ボケ」とも判断しかねる発言をし、多くのファンの期待と混乱を同時に引き起こす事態を招いているようだ。
『.hack』は、ゲーム・漫画・小説・アニメなどにまたがり2002年より展開されているメディアミックスプロジェクトだ。作中オンラインゲーム『The World』の世界と、作中の現実世界が錯綜する物語が特徴となっている。ゲーム版については“オンライン風オフラインRPG”として、1stシーズン4部作の第1作目となる『.hack//感染拡大 Vol.1』が2002年6月にリリース。作中の“ゲーム”と“現実”での出来事がそれぞれ違うメディア媒体で描かれるなど、メディアミックスならではの仕掛けなどで人気を博した。以降のゲーム版については、サイバーコネクトツーがメインとなり手がけている。
根強いファンも多く、多くのユーザーからゲーム含む新作展開が望まれる同プロジェクト。リマスター作品としては、ゲーム『.hack//G.U.』3部作のリマスター&新規コンテンツ追加版『.hack//G.U. Last Recode』Nintendo Switch版が昨年発売されたといった動きもあった。しかし、新作ゲームとしては2016年配信・同年サービス終了のアプリゲーム『.hack//New World(旧題:ニューワールド)』が直近の動きとなる。
そうした背景もあり、ファンたちはシリーズへの想いと、新作展開への淡い期待を胸に「.hack20周年スペシャルライブ」配信に集っていた。同配信では、アーティストのLieN -リアン-によるシリーズ楽曲の生歌唱が披露されファンの心を震わせた。また、サイバーコネクトツー代表取締役であり、ゲーム含む『.hack』シリーズに深く携わる松山洋氏が登場。バンダイナムコエンターテインメントのプロデューサーである月田百合香氏とのトークを繰り広げた。そこで松山氏が言い放ったひとことが、ファンの心中に喜びと混乱を引き起こすことになった。
トークコーナーにおいて、月田氏が松山氏に向けて「今後の『.hack』の展開」との話題を振った。すると松山氏は、「はい」と頼もしく返事。「新作ゲームを、すでに制作を進めておりますとぉ」とハキハキ伝えたのだ。すると月田氏が慌てて「おい!!おいおいおいおい、おいおい」と鬼気迫る調子でツッコミ。松山氏側もその反応を受けていたずらっ子のように笑いつつ「……という風にね!いえるとよかったんですけども!」と強調気味にフォローした。つまり「新作制作発表と思わせておいて、そこは伝えられない」という冗談、いわゆる「ボケ」とも解釈できる。類似例としては「よーいドン!……といったらスタートです」のような冗談があるだろう。
しかし、月田氏の「おい!!」のスピードと温度はかなり真剣なトーン。また、松山氏は「今あなた(月田氏)の上司が向こう側で慌てふためいてると思いますけれども」としており、本当にポロリしてしまったような雰囲気もある。松山氏は“時を改めて”どこかのタイミングで新作についての報告ができればいいなと思っているとの旨を丁寧にコメント。新作展開はファンの応援次第であるとした。
松山氏は「ぴろし」の愛称で親しまれ、YouTubeでの軽妙なトークなどでも知られる人物。そうした松山氏が、突然ギョっとする冗談を言い放っても不思議ではない。しかし、動画で見られる絶妙な空気感からは「本当は秘密のことを発言してしまったのでは」との印象は拭いきれないだろう。
こうした発言に大きい反応と困惑を見せたのは、国内ファンや月田氏だけではない。海外ゲームメディアNoisy Pixelは本件について「サイバーコネクトツーのCEOにより、『.hack』新作が発表」として報道し、後に「Hiroshi Matsuyama氏のジョークだったようである」として記事を訂正・謝罪するに至っている。この報道をほかの海外メディアも引用し報じており、それらもやはり訂正するハメになっている。松山氏の“冗談”は、日本人であっても冗談なのか本当なのか把握しづらい。“ぴろしのジョーク”が海外で思わぬ波及を見せたかたちだ。
松山氏の語った内容をまとめれば、現在『.hack』新作が開発中であるかは明かせない一方で、今後の新作展開について前向きな姿勢を見せたかたち。突然の爆弾めいた“ボケ”にドキドキした世界中のファンは、シリーズを応援しつつ動向に目を配っていくとよいだろう。