『エルデンリング』&『Vampire Survivors』開発者、“なぜ売れたかわからない”。邪念になるので考えない

『Vampire Survivors』と『エルデンリング』、2022年に目覚ましいヒットを遂げた2作には奇妙な共通点が見られる。いずれのタイトルの開発者も、なぜ成功したか理由が「わからない」と述べているのだ。

Vampire Survivors』と『エルデンリング』、2022年に目覚ましいヒットを遂げた2作には奇妙な共通点が見られる。いずれのタイトルの開発者も、なぜ成功したか理由が「わからない」と述べているのだ。

左:『Vampire Survivors』、右:『エルデンリング』


『Vampire Survivors』は、poncleが手がける見下ろし視点アクションゲームだ。プレイヤーは任意のキャラを選び、攻撃しながらフィールドを移動。攻撃手段を増やしたり強化したりするのだ。プレイヤーと共に敵も強化され、やがて敵は大群になっていく。そうした大群を自分だけのビルドで撃破し生き残るのだ。

本作はSteamで2021年12月17日に早期アクセス配信開始され、昨年10月に正式リリース。記事執筆時点でSteamユーザーレビューは12万件以上寄せられ、そのうち98%が好評とする「圧倒的に好評」のステータスを獲得している。早期アクセス配信期間中から「低価格」「手軽で夢中になれるゲームプレイ」「頻繁なアップデート」などの要素で多大な人気を集めた。

『Vampire Survivors』は当初、Luca Galante氏が個人開発していた。2021年12月の早期アクセス配信後、同時接続プレイヤー数はうなぎのぼりに増加(SteamDB)。この反響を受けて同氏は2022年2月に、海外メディアNMEのインタビューにて、本作の成功が予想外の出来事であると語っていた。同氏いわく、当時においても本作の成功は「期待の1000倍以上」だったという。

先日公開されたIGNのインタビューによると、Galante氏はそうした成功を受けて会社を立ち上げ、ほかのスタッフを雇うことができたという。そして開発スピードが増したことで、同氏の立てていた目標は予想よりもはるかに早く達成されることになった。そのため正式リリース時には、当初のロードマップと比較して2倍以上のコンテンツが実装されるに至っている。対応プラットフォームはXbox One/Xbox Series X|Sのほか、iOS/Android向けにも拡大。さらにPC/Xbox向けには12月16日、初のDLC「Legacy of the Moonspell」が発売となった。

『Vampire Survivors』 DLC「Legacy of the Moonspell」


ここ数か月間でさらなる展開を見せる本作に対し、Galante氏が抱く「予想外の成功」という印象はさらに強まっているそうだ。本作は、先月の「The Game Awards 2022」にてBEST DEBUT INDIE部門にノミネートされた(関連記事)。同氏は先述のインタビューで、このノミネートについて本当に信じられないことだとコメント。この1年間、本作がもたらす予想外の成功ぶりがピークに達したと思うたびに、それを上回る出来事が起きてきたと述べている。

さらに本作の成功の理由について、Galante氏は「わからないし、それが本当に怖い」という。同氏は本作の早期アクセス配信後、(反響に)夢中になってしまわないようにオンライン上の反響や数字をなるべく見ないよう努めていたそうだ。ほぼプレイヤーからのフィードバックのみに集中し、本作の開発と会社の運営にのみ集中してきたとのこと。またそうした中でプレイヤーとのオープンなコミュニケーションを保っていたコミュニティマネージャーに対し、Galante氏は賛辞を贈っている。

『Vampire Survivors』の成功がまったくの予想外で、理由もわからないと語ったGalante氏。そして「売れた理由がわからない」という点は、『エルデンリング』にも共通するようだ。同作も2022年に目覚ましいヒットを遂げ、「The Game Awards 2022」ではゲーム・オブ・ザ・イヤーを受賞したタイトルである。

『エルデンリング』


先月開催された「PlayStation Partner Awards 2022 Japan Asia」のメディアインタビューでは、『エルデンリング』の成功についてディレクターの宮崎英高氏がコメント。同作が今までのフロム・ソフトウェア作品より高い売上を見せた理由について、「まだ全然わからず、再現してくれと言われても困る」と述べていた。さらに同氏は今回の成功を受けて、今までどおりの作り方を変えるつもりはないという。成功の理由を分析しても「邪念になりそう」なので、あまり考えないようにしているそうだ。

2022年を代表する人気タイトル2作について、いずれも開発者が「成功の理由がわからない」と語るのは興味深いところ。また数字や成功の理由を意識しない開発姿勢が共通しているのも注目されるところだろう。

なおGalante氏は、『Vampire Survivors』がこれほど注目を浴びるのは信じがたいとする一方で、どんな人でも成功し得るのだと示せたことは嬉しいと述べている。本作の成功が、より多くのインディー開発者たちを勇気づけられることを願っているそうだ。そしてこの想いは同氏の親切心ではなくわがままでもあるという。同氏には、『Celeste』『Undertale』『PowerWash Simulator』といったインディー作品がふさわしい注目を浴びるところをもっと見てみたいという想いがあるそうだ。

『Vampire Survivors』


なお『Vampire Survivors』の今後については、Steamニュースにて明かされている。ここ数か月は正式リリース、Xbox/モバイル版展開、DLC発売と、“狂った(mental)”スケジュールが続いたため、そして、PC/Xboxとモバイルという2つのバージョンでのゲームの維持が必要になってくるため、今後はより持続可能なペースでアップデートなどを進めていくとのこと。パッチの配信頻度は2022年よりペースダウンするという。

今後の本作の展開としてはDLCの成功を受けて、さらに別の世界での戦いを描く計画もあるという。さらにponcleでは、『Vampire Survivors』以外の何かも水面下で開発中とのこと。2023年もponcleがもたらすサプライズに期待しておこう。

『Vampire Survivors』はPC(Steam/Microsoft Store)/ Xbox One/Xbox Series X|S向けに発売中。iOS/Android向けには無料配信中だ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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