ゲーム開発者たちによる「罪の告白」集まる。『スカイリム』の「棺入れてなかった告白」から、実は213GBあったVRゲームまで、多彩なぶっちゃけ話
ゲーム開発者たちの「罪の告白」が集まっている。「罪の告白」と言えど、ゲームに仕込んだ小さなイースターエッグから、技術的問題に直面した話まで、内容はさまざまだ。いわばゲーム開発における「話しづらい話題全般」とも言える。
流れのきっかけは、あるゲーム開発者による「罪の告白」だ。『オーバーウォッチ』シリーズの開発に関わったシニアキャラクターアーティストのDanny Sweeney氏は11月18日、自分が過去に「ゲームの古いプロジェクト内に、ネットミームを仕込んだ」ことをTwitterに投稿した。さらにTwitter社の買収にまつわる騒動を、ある種の”終末”にたとえ、「Twitterが破滅に向かいつつある今、ゲーム開発者は自分が開発中に犯した罪を認めなくてはならない」とツイート。自身の告白を呼び水に、ほかのゲーム開発者にも同様の「罪の告白」を呼びかけた。
同氏がゲーム内に仕込んだ“罪”として告白したのは、「Loss」と呼ばれるミーム画像。これは元ネタのとあるWebマンガ、およびそれを抽象化したシンプルな「棒」を組み合わせた画像を指す。Know Your Memeによると、最初に「Loss」が登場したのは2008年。英語圏においては、今なお極めて知名度の高いミームのようだ。なお、Danzig氏は自身が隠した「Loss」について、「まず見つかることはないでしょう」と述べている。
このDanzig氏のツイートに、ほかのゲーム開発者たちも反応。当該ツイートには、ゲーム開発におけるさまざまな「罪の告白」が寄せられた。hot gamer dad氏は自身が手がけたPC向けゲーム『satiRPG』に、Danzig氏と同じく「Loss」を仕込んだことを告白している。またVFXアーティストのAndrea Jörgensen氏は、ゲームに登場する室内用の照明器具について、一部を飲料ボトルで代用した例を挙げている。照明器具の3Dモデルを作る代わりに、別の3Dモデルの一部を再利用したかたちだ。
これらの「ゲーム内にネットミームを仕込んだ」「プレイヤーから見えないところで3Dモデルを再利用した」といった内容は、開発者のちょっとした遊び心と捉えることもできるだろう。しかし、楽観的な内容ばかりでもないようだ。開発環境における「罪の告白」も多く寄せられている。例を見ていこう。
Dana Nightingale氏は、自身が開発に関わった『Dishonored』にまつわるエピソードを告白。彼女は同作の開発中、プレイヤーにキーアイテムの位置を伝える看板を「MSペイント」で作ったという。OS付属のペイントソフトで作った、いわば仮データだったのだろう。しかしこの仮データが、リリース予定のゲーム内にも残っていたという。気づいたNightingale氏は急いで上司にこのことを報告、「ペイントで作った看板」はリリース前のゲームから除外された。
VR向けガンサンドボックスゲーム『Hot Dogs, Horseshoes & Hand Grenades』の開発者であるAnton Hand氏は、自身のゲームデータが「ファイル数69万、ディスク上のサイズ213GB」という、膨大なデータ量になっていることを告白。開発環境とはいえ、インディータイトルのゲームデータとしてはかなり大規模だ。またHand氏は、Gitなどのバージョン管理システムを使用していないとのこと。この場合、新旧のデータ管理が煩雑になるといったデメリットがある。Hand氏がバージョン管理システムを使用しない理由は不明だが、この事実はほかのインディーゲーム開発者を驚かせたようだ。
一方、3Dシューティングゲーム『Rogue Eclipse』を開発中のMcdoogleh氏が投稿したのは、大量のノードが無造作に並ぶUnreal Engineの画面だ。一般にこうしたノードベース開発では、どこに特定の処理やノードが配置されているのか、一目見てわかりやすい状態が好ましい。しかし画像のノードは、とても整理された状態とは言い難いものだ。無造作に配置された大量のノードもまた、開発者としては少々恥ずかしいものなのかもしれない。
開発上の制約や技術不足により、開発中に起きたトラブルを意外な方法で解決したケースもある。デザインディレクターのEmil Pagliarulo氏は、『The Elder Scrolls V: Skyrim』の開発秘話を語った。同作ではDark Brotherhood(闇の一党)クエストにおいて、プレイヤーが棺の中に隠れる場面がある。棺に隠れるとイベントが発生し、暗闇の中でミイラがプレイヤーに語りかけてくるというものだ。このイベントでは操作キャラが実際に棺の中に入っているように見えるが、実際の処理は異なる。棺とプレイヤーの位置が干渉するため、そもそも操作キャラが中に入ることができないためだ。実際には「カメラを固定し、室内を暗くして、背後で棺が閉まる音を鳴らしただけ」だという。開発スケジュールの遅れから、比較的開発の負荷が低い演出を編み出したのだ。
※該当のイベントシーン
Sebastian Aaltonen氏は、自身が開発に関わったPSP/DS向けソフト『Warhammer 40000: Squad Command』に触れている。同作のメモリ管理には問題があり、一部のステージをプレイするとゲームがクラッシュする恐れがあったとのこと。この問題は根本的な解決には至らず、やむなく「ロード画面を表示している間にソフトを再起動する」ことで対応したという。メモリが枯渇してゲームがクラッシュする前に、ゲームが自ら再起動することでメモリをリフレッシュするのだ。結果、プレイ中にこの「ロード中の再起動」が始まると、ロード時間が20秒以上長くなったという。クラッシュを避けるためとはいえ、プレイヤーにも不便を強いるかたちだ。
ここで取り上げた「罪の告白」は、まだほんの一部に過ぎない。全てのゲームがその内部に至るまで完璧である必要はないが、開発者にとって恥ずかしさや後ろめたさがある話題なのかもしれない。そうしたゲーム開発者たちの語られざるエピソードが、この機会に多数共有されたかたちだ。