『Battlefield』シリーズ、SIEに「『Call of Duty』には及ばない」と突如ディスられる。マイクロソフト対SIEの流れ弾
マイクロソフトが今年1月にActivision Blizzardを買収する方針を発表してから、各国・地域の規制当局では承認審査が進められている。この過程では、関係各社が当局に提出した、意見書の内容が公開されることも。イギリスCMA(Competition and Markets Authority・競争市場庁)が先日より公開している資料もそのひとつだ。そのなかでソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)がFPSゲーム『Battlefield』シリーズに言及。同シリーズが“流れ弾”的にやや貶されることになり、注目を浴びているようだ。海外メディアThe Vergeなどが報じている。
今回注目されている資料は、CMAがマイクロソフトのActivision Blizzard買収に関して、今年10月に出した声明に対するSIE側の意見書だ(資料PDF)。まず前提としてCMAは、この買収において反トラスト法(独占禁止法)違反の可能性について懸念を示し、特にSIE/PlayStationの競争力を損ねる恐れがあると指摘していた(その結果、消費者が損害を被るという理屈)。SIEは、この買収に反対の立場を鮮明にしており、CMAがその主張を受け入れた格好となっている。一方のマイクロソフトは異なる見解を示しており、買収によって同社が優位になりすぎることはないとの旨を主張をしている。
マイクロソフトとSIE双方が、相手の優位性を際立たせようと主張を重ねる様子はやや奇妙である。たとえば、マイクロソフトはSIEが手がける独占タイトルが「自社より品質がよい」「『Call of Duty』ファンはほか作品ファンに比べて特別ではない」との旨を主張。一方でSIEは「マイクロソフトのXbox Game Passの加入者数が凄い」などと主張している。自社を下げ、相手の業績やタイトルを褒める様相は、背景を考えなければ「謙遜しつつの褒め合い」にさえ見える。そして、今回そうした奇妙な応酬に、Electronic Arts(以下、EA)が手がけるFPSゲームシリーズ『Battlefield』が巻き込まれることになった。
前述の資料のなかでSIEは、「『Call of Duty』シリーズは唯一無二の地位を確立したタイトルである」とコメント。続けて『Call of Duty』シリーズの凄さをとにかく褒めちぎっている。そんな中でSIEは、突如EAにも言及。「EAは長年にわたり『Battlefield』シリーズで『Call of Duty』に対抗しようとしているものの、追いつけていない」と主張し始めたのである。さらには「2021年8月時点で、『Call of Duty』シリーズ は約4億本を売り上げている一方、『Battlefield』シリーズは“ただの(just)”約8800万本に留まる」と追い打ち。なぜか無関係のEAおよび『Battlefield』シリーズが引き合いに出され、いわば流れ弾を食らうかたちとなった。
上述のSIEによる主張は、Activision Blizzardが手がける『Call of Duty』シリーズの優位性を際立たせ、マイクロソフトの同社買収の影響は大きいと示す意図だろう。マイクロソフトが同シリーズを独占化するのかどうかというのは、今回の買収手続きにおける大きな焦点のひとつでもある。同社ゲーム部門CEOのPhil Spencer氏は先日、「PlayStationが存在する限り、『Call of Duty』のPlayStation向けリリースを続けることが、我々の意図するところだ」とコメント(関連記事)。同社はSIEに対して、さしあたり10年間の提供を約束するオファーをおこなったとThe New York Timesに伝えており、マイクロソフトとしては独占の意図がないことを強調している。
規制当局を舞台にしたSIEとマイクロソフトの対立は続いており、承認審査においてどのような判断が下されるのか注目される。 一方で、一連の舌戦はやや滑稽であり、突然『Call of Duty』の引き合いに『Battlefield』を出されたEA側もとばっちりだろう。今後もお互いの主張を繰り広げるなか、ユーザーやメディアの注目を集めるようなコメントが飛び出す可能性もありそうだ。