『SEKIRO』を“2画面同時”プレイでクリアしたプレイヤーあらわる。右に修羅、ちょっとズレて左も修羅

普通に遊ぶだけでも歯ごたえ十分な『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』を、“2画面同時プレイ”でクリアしたプレイヤーがあらわれた。

フロム・ソフトウェアが手がけた人気アクションゲーム『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』(以下、SEKIRO)。同社の他タイトルと同じく、高い難易度も本作の持ち味のひとつ。普通に遊ぶだけでも歯ごたえ十分な本作を、“2画面同時プレイ”でクリアしたプレイヤーがあらわれた。なお本稿には作品のネタバレが含まれるため、閲覧の際は留意されたい。


『SEKIRO』は、戦国時代を舞台にしたアクションアドベンチャーゲームだ。プレイヤーは隻腕の忍び「狼(おおかみ)」となり、幼き主君をめぐる容赦なき死闘に身を投じていく。本作の特徴のひとつは、敵の攻撃を弾き続け、体制を崩す戦闘システム。一方で弾くことができない攻撃も存在し、一瞬の油断が命取りになる。そのほか戦闘では、義手に仕込まれた忍具や忍術も使用可能。使用には形代と呼ばれるコストを消費する。そうした忍具や忍術も、適切な使用タイミングを逃せば無駄となる。本作の戦闘において、タイミングはあらゆる面で極めて重要なのだ。

そんな本作を2画面同時プレイするとは、どういうことか。それは、「ダブルでゲームを起動し、ひとつのコントローラーを使用して同時操作する」という挑戦だった。挑戦したのは、クリエイターの相原みずき氏。同氏は過去にも、本作のさまざまなチャレンジを達成している。同氏は8月2日のTwitch配信にて、PS5とPCの同時操作で本作のRTAに挑戦。見事2人の狼をクリアまで導いている。弊誌は今回、相原氏に本RTAに関して詳しく訊いた。以下では同氏の回答も交えながら、2画面同時RTAの様子を紹介していこう。なお以下の動画は、同氏が投稿した本RTAの解説付きのダイジェスト編集版となる。


チャレンジの大敵は“遅延”

ノーカット版の動画によれば、相原氏はDUALSHOCK 4をPCとPS5に同時接続する方法を発見し、今回のチャレンジに思い至ったという。PS5からの映像はキャプチャーボードを経由し、OBSのプレビュー画面にてPC画面に出力しているそうだ。そのため、出力される映像には若干の遅延が生じるとのこと。上述の動画を確認すると、PC/PS5の2人の狼たちには、たしかに若干の動作タイミングの違いが生じている。

些細なタイミングの違いは、大きなズレを招いてしまうことも。相原氏はそうした2画面プレイ独自の難しさを確認しつつ、ゲーム開始直後のステージ「葦名城 水手曲輪」を攻略。そのなかでは、雑魚敵の動きの違いも“2人の狼”のズレを広げる要因となっていることがわかる。一方で同氏は、水手曲輪の強敵である組頭との戦闘時にはさっそくコツを掴んでいる様子。かなりのズレがあるにも関わらず両画面で攻撃を弾きつつ、まずPS5版で組頭を撃破。PC版では同タイミングで惜しくも死んでしまったものの、後から難なく撃破している。


光る“狼同期”テクニック

その後も鬼仏を用いて2人の狼を“同期”させるといった2画面プレイ独自のテクニックを見せる相原氏。同氏は順調に攻略を進め、序盤のボス鬼刑部との戦闘に突入。ここで、2画面同時プレイでは本作のロックオンシステムが命取りになる点が解説されている。本作では回生や忍殺の際に、敵へのロックオンが外れてしまう。その場合2画面同時プレイでは、片方の画面だけロックオンが外れる状態に陥る。ひとつのコントローラで同時操作しているため、ここで普通にロックオンしなおそうとすると今度はもう一方のロックオンが外れてしまうのだ。同氏は片方で忍殺中にもう一方でロックオンを外すなどの工夫でこれに対処。チャレンジ後半では、メニュー画面を開いて調整するという手法を編み出した。

鬼刑部を下し、ほかのボスを撃破しつつさらに歩みを進める相原氏。ここでさらなる狼“同期”テクニックが顔を見せる。それは鉤縄ジャンプで屋根に着地し、ぶら下がってカメラをリセットするというテクニックだ。2画面プレイでは狼の動きだけでなく、カメラの向きもズレていく。そのため、時おりカメラの“同期”を挟むことも必要となるわけだ。


なおこのテクニックは、本作の「目隠しRTA」で採用されていた位置固定のセットアップだという。目隠しRTAは、主にMitchriz氏がおこなっているRTA種目(関連記事)。相原氏は今年1月に開催されたRTAイベントAGDQ2022 にて、Mitchriz氏の目隠しRTAを国内向けチャンネルJapanese Restreamにて解説していた。相原氏の幅広い制限付きRTA知識が、今回の2画面同時プレイにも活かされているわけだ。そして、目隠しと2画面、何も見ないか、2倍見るかという正反対にも思えるふたつの種目でも、共通して応用できるテクニックがあるのは興味深い。


2画面プレイの3大難所

その後も相原氏は順調に2つの画面で攻略を進めたものの、葦名城のボスに思わぬ足止めを食らってしまう。そのボスというのが狼の宿敵・葦名弦一郎、ではなく葦名流 佐瀬甚助だ。佐瀬甚助は高速の居合切り、葦名十文字を連発してくるボスであり、これを連続で弾き続ける必要がある。さらに弾きが不可能な攻撃も織り交ぜてくる強敵だ。


相原氏は孤影衆 太刀足、葦名流 佐瀬甚助、柔剣 エマの3人のボスを今回のチャレンジにおける難敵として挙げている。同氏によれば、これらのボスは攻撃の出が速く、威力が高く、丁寧に弾かないとすぐに体幹を崩されてしまう点が凶悪なのだという。また、2画面プレイでは攻撃を弾くのが困難で、ガードすれば体幹を崩される点も被弾につながっていたそうだ。

さらに太刀足および佐瀬甚助戦はマップが狭い。回生時にロックオンが外れる仕様によって、狭いマップ内ではロックオンを戻せず逃げ切れないまま被弾に繋がっていたという。また比較的序盤に挑むため狼の体力上限が低い点も、苦戦の要因であったとのことだ。


不死斬り、そしてエンディング

そして本RTAで相原氏は、難敵への苦戦を受けて攻略ルートを変更。本作のキーアイテムである刀「不死斬り」の入手を優先する決断を見せた。不死斬りを手に入れた後は、強力な流派技を使用可能となる。同氏は金剛山仙峯寺を攻略し、無事不死斬りを入手。その後は不死斬りや忍具を織り交ぜながら巧みに攻略を進め、「修羅」のエンディング前に到達する。

最後の難関である柔剣 エマ、そして葦名一心との戦闘で相原氏は、外れたロックオンをメニュー画面を駆使して調整するなど、さらに洗練された2画面プレイングを見せている。一方でエマは先述のとおり、本チャレンジ難関ボスのひとり。2画面ともに撃破するのは非常に困難な様子だ。いつしか片方の狼はエマと戦い、もう片方はその後の一心と戦うという異様な戦闘が繰り広げられている。本チャレンジならではの混沌としたプレイ画面が展開する中でも、冷静に2人の狼をコントロールする同氏。忍具や流派技を織り交ぜる本チャレンジでは形代量の把握も必要になる。2画面を見ながらの操作だけでなく、先の展開の考慮まで必要となるわけだ。


そして相原氏のチャレンジはついに達成を迎える。約1時間の死闘を制し、先に一心を撃破したのはPS5版の狼だ。その後PS5版のカットシーンが流れるなか、まもなくPC版の狼も一心を撃破。晴れて前人未到の2画面同時RTAは達成となった。タイムは5時間42分52秒であった。


挑戦し続ける理由

相原氏は弊誌の質問に対し、過酷なチャレンジにおいて難所を乗り越えるコツとして、Twitch配信での視聴者とのやり取りを挙げている。視聴者のコメントやほか配信から視聴しにきたユーザーの応援は、励ましや精神的な休憩になっているそうだ。またそれでもどうしようもなく煮詰まったときは、しっかりご飯を食べてお風呂に入り、ゆっくりと寝ることが大事だという。

また『SEKIRO』や『エルデンリング』といったフロム・ソフトウェア作品は、ゲーム外での制限を設けた過酷なチャレンジの対象になることが比較的多い。こうしたプレイヤーが一定数存在する理由について考えを訊いたところ相原氏は、公式が用意した難易度上昇要素をすべて遊びつくした結果、感覚がマヒするためではないかと推察している。


また“縛り”を設けたチャレンジをクリアできるかどうか試してみたいという好奇心も、過酷な挑戦に惹かれる理由のひとつだという。そしてそうしたチャレンジは、実行に移してみると意外にも達成できるケースもあるそうだ。同氏は、過去のチャレンジはいずれも好奇心で試したらクリアできてしまったと述べる。チャレンジと達成の積み重ねが、さらなる難関への挑戦へと人を動かすのだろう。

ちなみに今回注目を集めている動画は10月に投稿されたもの。投稿から少し時間を空けて注目されている点について、相原氏は驚きとともに、ありがたいと感じているそうだ。2画面同時RTAは誰かに見せるための曲芸というよりは、先述のように純粋な好奇心からのチャレンジをまとめた動画であったという。8月のTwitch配信当時は動画編集の想定もなく、本チャレンジは同氏にとって予想外の反響となっているそうだ。


おすすめRTA動画とテクニック

相原氏は『SEKIRO』にて本チャレンジのほかにもさまざまなチャレンジを達成し、その模様をYouTubeにて投稿している。「鬼仏禁止の全ボス撃破チャレンジ」や「左手使用禁止チャレンジ」は2画面同時操作RTAに興味をもったユーザーにおすすめとのことなので、ぜひチェックされたい。

*鬼仏禁止の全ボス撃破RTAは解説・編集付きのバージョンも公開中だ

なお相原氏にRTAで使える汎用的なテクニックを訊いたところ、「テクニックというか仕様」としつつ、攻撃動作では段差の下に落ちない挙動を教えてくれた。たとえば、家屋の縁側のような段差の端っこでも、攻撃に伴う前進では踏み外さない仕様だ。これは、RTAに挑戦し始めたプレイヤーが、ショートカットの場所を覚えるのに苦戦しているとき利用できるとのこと。前述のMitchriz氏による目隠しRTAの位置固定セットアップでも利用されている。霧ごもりの貴人前のショートカットの位置調整では実用しやすいそうだ。

また移動入力がニュートラルの際のステップは、狼から見て前方に固定距離を進む、という仕様も役立つかもしれないテクニックとして紹介してくれた。こちらも目隠しRTAなどで活用できるテクニックとなりそうだ。通常の難易度では満足できなくなった人は、上記テクニックや相原氏の動画を参考に、制限付きRTAの世界に足を踏み入れてみてはいかがだろうか。

相原氏は直近では『エルデンリング』にて暗月の大剣を最短で取得し、クリアまで使い続けるRTAも実施し、こちらも解説・編集付き動画が投稿されている。TwitchではさらなるRTAに向けた調査の様子を配信。今後も同氏は『SEKIRO』『エルデンリング』の双方で新たな活躍を見せてくれそうだ。相原みずき氏のこれからのチャレンジにも注目していきたい。


※ The English version of this article is available here

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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