中世を生きるアクションRPG『Mount & Blade II Bannerlord』を遊ぶと時間が溶ける。自由度と苦しみがもたらす没入感
『Mount & Blade II Bannerlord』は、TaleWorlds Entertainmentが開発し、PLAIONより11月10日にPlayStation 5/PlayStation 4パッケージ版がリリースされる、ストラテジー・アクションRPGだ。PlayStation 4/PlayStation 5ダウンロード版も同日より販売開始。PC版(Steam/GOG.com/Epic Gamesストア)、Xbox Series X|S/Xbox One版は、一足早い10月25日から正式リリースされている。今回は、PLAION監修のもと本作の魅力を紹介する。
本作は架空の中世「カルラディア」を舞台に、混沌を極める乱世を自由に生きることができる。その自由度の高さは折り紙つきで、辺境の村で自らの部隊をつくることからはじまり、やがて大陸の一大勢力として国を興すことさえ夢ではない。他国と同盟を結ぶことも、戦争をしかけることも可能だ。もちろん、英雄になるだけが人生ではない。貧しい村を襲う略奪者として生きるもよし、特定の人物に肩入れして策謀を張り巡らせるもよし、町を行き交い商人として交易で利益を生むもよし。さらには恋人をつくって結婚し、子供を授かることまでできてしまう。プレイヤーの思うままに生きられるのが本作最大の魅力だ。
ゲームの進行はおもに2つのパートにわかれている。1つ目はワールドマップを移動しながら、情勢を鑑みて行動を決定していくパート。そして2つ目は、自身を操作しながら軍勢を率いて、敵と戦闘をおこなうアクションパートだ。実際に本作をプレイした上で、どちらのパートにも共通していることがある。それは本作が、非常に癖の強い作品であるということだ。プレイヤーとして行動を決定するのも、戦闘において敵と交戦するのも、独特のシステムに慣れるまで苦労した。そして癖の強さは、操作や基礎的なシステムだけに留まらない。本作を遊ぶ限り、プレイヤーは絶えずさまざまな気苦労と対峙する生活を強いられることになるのだ。
ではそのようなゲームが果たして面白いのか。答えは是である。不思議なことに、まるで現実世界を生きるかのような苦労の積み重ねこそが、本作の魅力でもあるということをはじめに明言しておきたい。また、本作はタイトルからもわかる通りシリーズの続編である。しかし前作を遊んでいなくとも問題はなく、本作から入っても十分楽しめるようになっている。では具体的に本作に触れることで、どのような面白さを体験できるのか。そしてプレイヤーが実際には、どのような苦労を重ねることになるのか。本稿ではゲームの概要を解説しながら、本作の魅力について紹介していく。
リアルであるがゆえに、生きるのもひと苦労な乱世
まず、本作の時代背景について少しだけ触れておきたい。舞台となるカルラディアは、500年にわたり帝国が全土を支配していた。しかし長い年月によって帝国内では腐敗が進み、やがて内戦とともに分裂してしまう。かつて帝国に虐げられた者や、新たに王座を狙う者たちも争いに参加することで、大陸全土は戦乱の時代へと突入。物語の開始時点では、さまざまな勢力が入り乱れた状態となっている。
そうした時代背景の影響を受けるのは、大陸で暮らすNPCに限った話ではない。なぜならプレイヤーもカルラディアで暮らすひとりの人間だからだ。本作はいたるところまでこだわり抜かれており、プレイヤーはゲームを進めるたびに、その緻密な設定と、世界観を忠実に反映したゲーム性に驚かされることになるだろう。
それはゲーム開始前のキャラクタークリエイトの段階で、早速体験することができる。キャラクターには文化を決める項目があり、カルラディアのどの地域、どの部族出身であるかを選ぶことができる。この項目はただのロールプレイ要素に留まらず、文化に応じたステータスの補正を受けるのだ。たとえば砂漠の民出身ならば、砂漠における移動速度の低下ペナルティを受けない代わりに、部隊に雇った兵に支払う賃金が増加してしまう。遊牧民族出身ならば、騎馬中隊の雇用やアップグレードにかかる費用が減り、統治する村にいる家畜の生産性が上がる。その代わりに、町から徴収できる税収が減ってしまう、といった具合だ。このように、それぞれ出身としての得手不得手が、ステータスにも反映されている。
作成するプレイヤーの分身には、どの一族の生まれかを決める項目も存在。両親が変われば、当然ながら身につくスキルも変化する。さらに幼児期・思春期・青年期・若年期にはどのような性格であったか、何をして過ごしていたか、どんなエピソードがあるのかまで設定できる。それらの設定に応じてスキルポイントがステータスとして割り振られていくのだ。たとえゲームの主人公であろうとも、スキルを身につけるにいたる出来事もなく、いきなりスキルを身につけることはできないのだ。
これはゲームプレイにも同じことが言える。特定の武器種の扱いに熟練するためには、当然ながらその武器を使って戦闘をしなければならない。騎乗スキルを獲得するためには、馬に乗り続けなければならない。本作全体の共通認識として、「経験したことのないこと」は「できない」ようになっている。何事も実際に経験を積み重ねなければ、自らの技術として身につけることはできない。このあたりはフィクションの世界とは思えないほどに、現実世界のようなリアルさが徹底されている。
プレイヤーは何を主軸に据えてゲームプレイをしていくのか、自由に選ぶことができる。獲得できる経験やスキルを重視して、キャラクターのバックボーンを選ぶのも良いだろう。逆にプレイヤーが望む生い立ちを選ぶ、ロールプレイを意識したクリエイトも良い。世界への没入感と、キャラクターへの愛着が増すはずだ。実際のプレイにおいても、神の視点から物語を俯瞰し、自分が望む結末を実現するために奔走するのもひとつの遊び方だ。一介の人間として、時代の流れに翻弄される遊び方も味わい深いものがあるだろう。
戦闘も一苦労
そしてプレイヤーの方針が定まってきたとき、そこで初めてリアルな世界が立ちはだかる。本作ではことあるごとに、現実という壁をプレイヤーへと突きつけてくるのだ。それを最初に実感できるのは、やはり戦闘パートだろう。本作のアクションは自由度の高い操作性をしていると同時に、とにかく癖が強い。
剣の攻撃はカメラ操作を同時におこなうことで、縦振りや横振り、突きといったアクションに変化する。敵の構えや立ち位置、距離に応じて適宜使いわけることが必要になってくる。また、その攻撃動作そのものも緩慢だ。スタイリッシュなアクションゲームのように、軽々と武器を振り回してはくれない。攻撃の動作中に敵から攻撃を受けると、こちらの攻撃が中断されてしまう。先制攻撃できるように、武器を振りはじめるタイミングを見極めることも重要になってくる。
チュートリアルでは武器の扱いを練習することができるのだが、これがなかなか難しい。とにかく剣を思ったように扱えない。ひとつひとつの動作は問題なくこなせても、敵を前に実践しようとすると、思考で動きが止まってしまう。さらには思うように攻撃が出ない。馬に乗って走りながら攻撃を当てるのは、もっと難しい。止まっている的を相手に、何度も空振りしてしまうひどい有様だった。
個人的にひときわ難しいと感じたのは、盾の扱いだ。盾もまた、カメラ操作と合わせて構える向きを変えることができる。一見便利に思えるかもしれないが、裏を返せば敵の攻撃に対して、適切な場所に盾を構えければ意味がないのだ。キャラクターを操作してから、実際にアクションを実行してくれるまでのタイムラグを考慮しながら、敵の攻撃をいなしつつ、こちらの攻撃を的確に当てていく。アクションゲームでは無意識にやっているはずのことが、本作では思うようにいかないことが多かった。
そうして操作するキャラクターだがその強さは困ったことに、少なくとも序盤においては一般兵や盗賊とあまり大差ない。実際、一対一にもかかわらず負けてしまったり、盗賊に囲まれて一方的にやられてしまうこともあった。覚えておきたいのは、本作はアクション要素こそあるものの、その本質はリアルタイムストラテジーに寄っているという点。基本的には兵に指示を出して、数的有利な状況をつくりだして戦うのが基本となる。
特に戦力が心許ない序盤においては、戦闘におけるプレイヤーの役割は遊撃が中心となることが多かった。馬に騎乗して歩兵へと一撃離脱を繰り返しながら、陣形を乱してバラバラに引き離す。そうすると後から追いついた歩兵たちが、バラバラになった敵を順番に処理してくれる。歩兵同士の衝突は味方側への被害も出てしまうので、損耗を抑えるという点でも合理的な戦い方となる。人数差のある敵に対して、くれぐれも正面きって戦闘をしかけようなどとは思わないことだ。数の暴力によって、あっという間に現実をわからされてしまう。
そうして戦闘をこなせるようになった後は、いよいよカルラディアでの暮らしを意識する段階となる。チュートリアル終了後、自由に探索してくださいという一文とともに、プレイヤーは広大なマップに身ひとつで放り出されることになる。大筋としてのメインシナリオは存在しているものの、プレイヤーの選択によって結末は変わってくる。また、必ずしもシナリオを進めなければならないというわけでもない。シナリオ攻略をそっちのけに、やりたいことをやるというのもまた一興だろう。
そもそも生きるのが大変
しかし何をするにしても、まずはこの世界で生活をしていかなければならない。カルラディアでは、身ひとつではどうにもならないことばかりだ。ワールドマップを移動する際には時間が経過する。その時間経過に応じてお腹は減るため、食糧はつねに確保しておかなければならない。しかし1人では持ち歩けるアイテムの数も限られ、そもそもマップを徘徊している略奪者や盗賊たちは、基本的に徒党を組んでいる。そのため、まずは最低限の戦力として兵を雇うことになるのだが、当然ながら毎日賃金を支払わなければならない。兵が増えれば必要な食糧も増える。マップを移動するだけで食糧と所持金が減ってしまうため、序盤における行動範囲は自然と限られてしまうのだ。
序盤に生計を立てる手段としては、依頼を受けて報酬をもらう。または略奪者や盗賊を襲い、金品を奪うといった手段になるだろう。しかし前者は妥当な選択に見えるが、実際にはいくつかの問題がある。まず依頼がそこまで多くないという点。ギルドのような依頼を斡旋する場所もなく、基本的には悩みを抱える人と直接交渉する必要がある。しかしお金を稼ぐために隣町へ依頼を受けにきたものの、プレイヤーの知名度がなく相手にもされないといったことも起こりうる。中には正規の市場には流せない盗品を買ってくれ、といった依頼もある。物々交換のような内容もあり、必ずしも報酬が金銭とは限らない。
さらに依頼には期限がある。数日以内にという急ぎの依頼もあれば、1か月や年単位の長い期限の依頼も存在する。マップの移動で月日が経過する仕様上、発生している依頼をとりあえずすべて受けておく、というRPGでやりがちなムーブがしづらい。しかし少しばかり考えてみてほしい。マップに点在する村や町で暮らす人々にも、当然ながら生活というものがある。急ぎの依頼なのに、何年も放置できてしまうのは不自然だろう。困っている依頼者が貧しい人ならば、報酬としてお金を差し出すのが難しいのも、いたって自然の摂理といえる。
また、賊との戦闘でアイテムを入手し、不要なものをすべて売却するという行為も、できないケースが発生する。買い取る商人にも、その手持ちには限りがあるからだ。商業の町で暮らす裕福な商人ならばまだしも、辺境の村で生活する商人相手では、あまり多くのものを買い取ってもらうことは難しい。各地に存在するNPCは、決してプレイヤーにとって都合のいい存在ではない。カルラディアという世界で生きる人々なのだ。
暮らしを続けていけば、兵を増やして育成するほどに、賃金や食費がかさんでいくという問題にも突き当たる。この問題を解消するために、どこかの国に傭兵として仕えるのも悪くないだろう。傭兵となれば、盗賊ではなく敵国の貴族や商隊を襲えるようになり、より稼ぎを得ることが可能だ。その結果、襲った一国の有権者たちを怒らせてしまうこともある。しかし所属している国の貴族が守ってくれるので、個人で活動しているときよりも、後ろ盾があるという安心感が得られる。
経費をおさえるため、あるいはより良いものを身につけるために、商いや鍛冶に手を出すことも視野に入ってくる。特筆すべきは、鍛冶で生み出した武器は、市販の流通品から性能を変化させられるという点だ。威力を上げたり、細身にして攻撃速度を上げるだけでなく、刀身の長さを伸ばすことも可能。自分の好みに合わせて、オンリーワンの一品を生み出せる強みがある。やがて素材集めに奔走する日々が始まり、長い寄り道をする場面も出てくるだろう。
本作では素材を調達するのも、金銭をやりくりするのも、戦力を整えるのも、なにかと手間がかかったり、頭を使わなければならない。そうやって少しずつできることを増やしながら、同時に新たなリスクを抱えていく。まるで現実世界のように、生活するだけでもひと苦労するのが特徴的な作品だ。決められたタスクだけをこなせば良いのではなく、つねに取捨選択をしなければならない。そうやってこのゲームでは、プレイヤーの選択が生まれてくるのだ。
自由すぎるがゆえに、目的を決めるのもひと苦労な乱世
先ほど述べたように、本作は現実的なシステムが多いあまり、できることが限られるというジレンマに陥りやすい。その最たる例こそ、序盤における生計を立て方だろう。戦力が整っていれば、より大きな戦ができる。資金があればそれを元手にして、大きな商売をはじめることもできる。より名声があれば、各地の有力な貴族たちに認められ取り入ることもできる。実際にとれる手段は多いはずなのだが、さまざまな状況によって、実際には選択肢が限定されやすいのだ。
そうした悩みを打破する手段として、常識にとらわれない選択をできるということを覚えておきたい。この世界は現実的であるがゆえに、各地で暮らすNPCの生活も、村や町の運営も、果てには国家にかかわることまで、できないことのほうが珍しいといえる。たとえば、手っ取り早くお金がほしければ、無抵抗な村人から略奪することもできる。彼らは訓練もしていない非戦闘員であり、城を守る兵士と比較すれば、取るに足らない相手だ。
襲うことができるのは、なにも人だけではない。村ごと占領して、自らの勢力地にしてしまうことも可能だ。気に入らない人物がいれば挑発することもできるし、逆に特定の貴族へ取り入ることもできる。そうしてプレイヤーは選択によって、世界に影響を与えていくことができるようになっている。
当然、悪行には相応の報いが待っていることも覚えておきたい。領地を奪われた勢力からは、取り戻すための兵が派遣される。何気ない気持ちで占領した辺境の村に、とんでもない数の軍隊が差し向けられるなんてこともある。また、悪さをすれば世の中には悪い噂が飛び交い、特定の地域や人物から、口を利いてもらえなくなることもある。プレイヤーとの各地の人物との友好関係は、所属する勢力だけで決まることはない。積み重ねてきたおこないと、それに応じた名声によって決まるのだ。
しかし現実がそうであるように、善行を重ねたからといって報われるわけではない。善意で助けていたら、実は利用されていたなんてこともある。本作における勢力争いは、単純な戦いだけではない。表面上は有効的な関係が築かれているように見えるが、その水面下では策謀が張り巡らされている。敵組織からスパイが送り込まれることも考慮しなければならない。助け合いが必要なときもあれば、相手を見限る冷酷さが求められる場面もあるだろう。
最終的には、国を治める立場に登りつめることも可能だ。その先では、どの国と友好関係を結ぶのか、敵対関係を結ぶのかも自由に選べるようになっている。国の安定を第一にすることも、大陸の統一を目指すことも夢ではない。国の未来を変えるほどの戦に参加できるようになれば、序盤からは想像もできないほどの大規模戦闘も体験できる。
やりたいことが多すぎると、かえって何も手につかないという経験はないだろうか。本作はその自由度から、似たような状況に陥りやすい。選択のリスクやリターンを考えはじめたら、迂闊に行動できなくなっていしまう、なんてこともあるはずだ。実際に行動しなくとも、何をしたいのか熟考し、計画を立てているだけでもあっという間に時間が経過していく。ことワールドマップにおいては、非常に多くのシミュレーション要素があるのも、時間が過ぎる一因となっているのは間違いない。
苦労ばかりの人生だが、そこに魅力がある
さて、ここまで本作で実際にできることと、やらなければならないことについて紹介してきた。気をつけなければならない点に関しては、今回触れていないものも多く、実際にプレイしてみると想像以上に多くの苦難が待ち受けていることだろう。しかしこれだけ気苦労が多いと、素直に楽しめないのではないかという懸念を浮かべる人もいるだろう。ここからはそうした苦労の先に待つ、本作の楽しさについて紹介していきたい。
わかりやすい魅力として、さまざまな成長要素について触れていく。キャラクターは戦闘や暮らしを積み重ねることで成長し、各種スキルが成長していく。スキルが成長するとパークを取得できるようになり、戦闘面ではわかりやすく恩恵を受けられる。パークは純粋にダメージを上昇させるもののほか、攻撃速度や操作性が向上するものも存在している。
戦闘以外では、社交性や知性に関するスキルが成長することで変化が訪れる。魅力が伸びれば、誰かと関係性を築きやすくなったり、説得の成功率が上がったりパークを取得できるようになる。中には妊娠させる確率を上昇させるユニークなものも存在しており、総じて他者との関係性にかかわるスキルとなっている。
キャラクターが成長することで、できるようになることが明確に増えていく。序盤におけるプレイヤーが、一般的なキャラクターとの差を体感しにくいぶん、余計に成長を感じられるのではないだろうか。成長はキャラクターの能力面に限らず、プレイヤーの知識や経験という形でもあらわれる。失敗を繰り返して、経験を積み重ねたからこそ、できるようになってくる事柄もあるはず。そうしてプレイヤーが成長したとき、キャラクターもまた世界に影響を与えられる存在へと成長しているのだ。一介の村人と大差なかった人間が、やがて国をまとめるほどの武力やカリスマ性を身につけられるようになるというのは、わかりやすい成功体験の一例だろう。
また、戦力を拡大するためにクランを立ち上げると、プレイヤーの勢力もやがて大所帯となってくる。プレイヤーを信じ、付き従ってくれる大勢の兵たちを食わせるためには、より良い暮らしを目指さなければならない。手間のかかる要素にため息をつきながらも、兵たちを育成していくその様子は、さながら面倒見の良い保護者のようである。他の要素にも当てはまることだが、本作は手間な要素が多いぶん、なにかを成し遂げたときには、相応の大きな達成感が得られる。その達成感を得るために、常日頃からコツコツと積み重ねていくタイプの作品なのだ。
各地を旅していく中で、愛着のある町や土地にめぐり会うこともあるだろう。そうした場所を活動の拠点とし、そこで暮らす人々をひいき目に世話したくなるときもあるだろう。大きな見返りがあるわけではないが、お気に入りの町が発展していく様子を見守るのは、自然と嬉しい気持ちになるものだ。そして、いつかは別れが訪れることを知りながらも、想い人と出会い、家族となることもあるだろう。本作を遊ぶというのは、草花を育てる感覚に近いのかもしれない。
そして本作最大の見せ場となるのは、間違いなく攻城戦だろう。城を攻め落とすべく、100人を超える大規模な戦闘をおこなえるのが攻城戦だ。本作における攻城戦は、ただ戦うだけではなく、城を包囲して陣営を設営するところからはじまる。設営後は両陣営の兵器による前哨戦へと移行する。攻撃によって城壁を破壊することができれば、城内に侵入することができる。また、包囲した段階から兵糧攻めをおこなうことも可能。食料の残量が尽きることで、士気が下がり脱走兵が生まれる。
総攻撃に移ることで、いよいよ敵陣営との正面戦闘となる。守備兵を壊滅させることができても、逃亡した守備兵が多いと立てこもりが発生することもある。立てこもった兵たちを掃討できれば、いよいよ攻城側の勝利だ。指揮官は手にした拠点を略奪するか、あるいは慈悲をかけるか選ぶことができる。略奪は味方の士気が上がるが、町としての繁栄度は下がってしまう。逆に慈悲をかけると、拠点の衰退は抑えられるものの、兵たちは不満を抱き、士気が下がってしまう。ここでもまた、プレイヤーの選択が介在する余地がある。
当然ながら、攻城戦は守り側の場合も存在する。籠城しながら兵の士気を維持したり、兵を犠牲にしてでも包囲網を破って脱出しなければならないこともある。ひとえに攻城戦といっても、さまざまなケースがある。ただ正面から戦闘するのとは違って、軍略を張り巡らせる必要がある。宣戦布告する前に、勝算のある戦いなのか見極める必要がある。不利だと感じたら戦を避ける以外にも、あらかじめ各地の戦力を削っておくといった対策もできる。そして攻城戦がはじまれば、戦況を読む力も重要になってくる。
総括すれば攻城戦とは、ゲーム内でできることを自然と活用していく場となる。まさに、これまで培った経験を遺憾なく発揮する局面なのだ。そうして攻城戦をおこなう段階までたどり着くことができれば、いよいよ大陸をめぐる争いに加わることができる。歴史を変えるほどの重大な選択を、プレイヤー自らが下せるようになるのだ。序盤では1人の人間を助けることしかできなかったプレイヤーの行動が、世界をも動かすほどの力となる。それこそが本作で苦節を積み重ねていくことの価値だ。
すべてはプレイヤーの選択次第
最後に本作において、もっとも重要なことについて話しておきたい。本作では苦労する場面や、数多の選択が待ち受けている。そして選択したあとには、成功か失敗のどちらかが待っている。しかし忘れないでほしいのは、本作において絶対的な答えは存在しないということだ。当然、後悔の念を抱くことはあるかもしれないが、その失敗談が必ずしも無意味だったとは限らない。
実際、本作を初めてプレイしてから、数え切れないほどの失敗を経験した。略奪者に襲われ、命からがら逃げ出すこともあった。食糧を持たずに歩きまわり、飢餓に苦しんだこともあった。戦いが起これば、当然ながら人が死ぬ。プレイヤーの下した指示によって、味方の兵が犠牲となることもあるだろう。金品に目がくらみ人を襲った結果、罪人として投獄されてしまうこともあるかもしれない。良好な関係を築いている勢力の商隊を誤って襲ってしまい、友好関係に亀裂を入れてしまったときは、さすがに肝が冷えた。
しかし、実際にそういった経験をしたおかげで、カルラディアという世界で生き残る術を学ぶことができたともいえる。現実では大きな失敗をすれば、二度と取り返しがつかないことが多い。しかし本作では失敗さえも糧にして、そこからまた踏み出すことができる。そのすべてが経験となり、やがてプレイヤーの力となる。現実のようなリアリティある暮らしを、ある意味では現実以上に味わえる。それこそが、本作を通じて得られる本質といえるのかもしれない。
平凡で安定した生活を望むことも人生であり、失敗を恐れずに挑戦することもまた人生だ。大勢の仲間に囲まれた暮らしも、孤高な生き方も自由自在。戦いに明け暮れるだけでなく、商いに人生を費やす道もある。戦乱に巻き込まれる人間となるのか、はたまた巻き込む側の人間になるのか。カルラディアの行く末を含め、すべてはプレイヤーの選択次第だ。本作に興味をもった方はぜひ、たくさんの苦労を積み重ねてほしい。その先に見える景色は、きっとあなただけの価値あるものとなるはずだ。
『Mount & Blade II Bannerlord』は、11月10日からPlayStation 5/PlayStation 4版がリリース。価格はPC版が5480円、PlayStation 4/PlayStation 5版は5980円(税抜)、Xbox Series X|S/Xbox One版は5800円(税抜)。PC版(Steam/GOG.com/Epic Gamesストア)、Xbox Series X|S/Xbox One版は10月25日から正式リリースされている。