“「ソニック」の新境地を開拓する”という『ソニックフロンティア』は結局どういうゲームなのか

セガが11月8日に発売する、アクションアドベンチャーゲーム『ソニックフロンティア』。話題性は高いものの、どのようなゲームであるか把握していない方もいるだろう。「ソニック」最新作を紹介する。

セガが11月8日に発売する、PS5/PS4/Nintendo Switch/Xbox One/Xbox Series X|S/PC(Steam)向けアクションアドベンチャーゲーム『ソニックフロンティア』。話題性は高いものの、どのようなゲームであるか把握していない方もいるだろう。このたび、筆者は本作のPC版を先行プレイできる機会をいただいた。本稿では、初のオープンワールド風の世界に足を踏み出した、「ソニック」最新作の魅力をお伝えしたい。


「ソニック」シリーズをプレイしたことがないという方でも、ソニックという超高速で走る青いハリネズミのことはご存知だろう。セガが1991年にメガドライブ向けに発売した『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』以来、多くの「ソニック」シリーズがリリースされてきた。フィールドを走り回るだけではなく、時にはレースカーに乗ったりピンボールの玉になったりして、セガを支えてきた。さらに任天堂の『スマッシュブラザーズ』シリーズにゲスト出演したり、セガと任天堂が共同開発したオリンピック競技のゲーム『マリオ&ソニック』シリーズに登場したりもしている。

さらに2020年にはハリウッド製作で、「ソニック・ザ・ムービー」として映画化。2022年8月には続編となる「ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ」が公開された。そして、12月15日にはNetflixでアニメーションシリーズ「ソニックプライム」の配信も予定されている。ゲーム関連では今年6月、過去作のリマスターを詰め込んだ『ソニックオリジン』が発売され、過去作をプレイしたことがない方にもソニックの原点を知るきっかけとなったことだろう。そんな“ソニックイヤー”と言って過言ではない2022年。5年ぶりの「ソニック」の完全新作アクションとして発売されることになったのが『ソニックフロンティア』だ。

『ソニックフロンティア』とは


『ソニックフロンティア』は、ステージ選択時に使用されていたワールドマップ自体に遊びを拡張し、遊べるワールドマップ「オープンゾーン」として進化させた、次世代のステージクリア型アクションゲームだ。主人公のソニックは仲間のテイルス、エミーと共に、大きな力を秘めた宝石カオスエメラルドの反応を追ってスターフォール諸島へ向かう。しかし、一行は島に到着する直前に電脳空間へと飲み込まれて離れ離れに。電脳空間を抜け出したソニックは仲間たちを探すため、古代文明の遺跡が残されたスターフォール諸島を駆け巡ることになる。

移動時の基本的な操作は、前後左右への移動、ジャンプ、ダッシュの3つに加え、オブジェクトに急接近するホーミングアタックが可能。そして、新アクションのサイループは、フィールド上に隠されたギミックを見つけたり操作したりと、謎解きの鍵になるアクションだ。これらのアクションを組み合わせ、ハイスピードに広い世界を突き進む。


バトル時は攻撃ボタンを連打するだけで基本コンボが可能。スキルピースを手に入れて新たなアクションを習得すれば、コンボがさらにスタイリッシュに進化する。さらに敵の攻撃を避ける際に有用な左右のステップ、敵の攻撃を跳ね返せるパリィなども用意されており、プレイを重ねるほどソニックを格好良く戦わせることができる。

オープンゾーンであるスターフォール諸島を探索し、仲間たちを探していくことが本作の主な目的だ。仲間を助けて物語を進行するためには、スターフォール諸島のあらゆる場所に点在しているメモリーと呼ばれるアイテムが必要になる。さらにソニックの前には謎めいた敵も立ちはだかる。ソニックは冒険の中で、それらの敵とバトルを繰り広げ、スターフォール諸島の謎や今回の事件の真相へと近づいていく。


本作のジャンルについて、公式サイトでは“新境地アクションアドベンチャー”と表記されている。セガ自らジャンルに“新境地”と冠する本作は、新しいことをしようという開発者たちの意気込みが感じられる。しかしながら、「ソニック」シリーズは30年以上もの歴史を重ねて多くのファンを獲得してきた作品だ。新しいことに対して、過去作からのファンには不安もあることだろう。過去作を知らない新規プレイヤーには、『ソニックフロンティア』だけで楽しめるのかという疑問もあると思う。しかし、本作は新たなユーザーを取り入れるための新時代の「ソニック」を生み出しつつ、往年のファンの期待に応える形に仕上がっている。

新時代の「ソニック」とは


『ソニックフロンティア』がこれまでの「ソニック」シリーズと大きく違うところ。それは新たなシステムとしてオープンゾーンを採用していることだ。舞台となるスターフォール諸島は、いくつかの島によって構成されている。ソニックが最初に降り立つクロノス島は緑豊かな島だ。ほかにも砂漠に覆われたアレス島、火山地帯のカオス島などがソニックを待ち受けている。

新たに描かれる「ソニック」の世界は、とても広く、美しい。遠景に見える大きな山々や、謎めいた塔、巨大な敵など、フィールドを進んでいくだけで好奇心をくすぐられる。次はどんな場所が待ち受けているのだろうか、という好奇心を満たすため、ソニックを島のあらゆる場所へと音速のスピードで走らせるのだ。

筆者が最初に本作の広さを感じたクロノス島でのワンシーン。遠くに見える巨大な塔を登ることも可能だ。


このスターフォール諸島では、ソニックは自由に移動が可能。走る、跳ぶ、さらにレールの上を滑ったり、スプリングで大きくジャンプをしたりと、広いフィールドを縦横無尽に駆け抜けていく。目標地点までソニックは上記の方法で移動するのだが、その道のりが楽しい。スターフォール諸島のフィールドには、スプリングやレール、ダッシュパネルといったさまざまなギミックが、至るところに用意されている。ダッシュパネルに触れると、ソニックは吸い込まれるように先に設置されているスプリングへ。高く跳んだソニックは上空のスプリングを跳ね回り、最終的に空中の足場へと導かれる。

この一連の動作は、オープンワールド風なのに往年の「ソニック」そのものだ。こういったこれまでの「ソニック」を思わせる場面が、本作にはたくさん存在している。その散りばめられた数が凄まじく、少し走ればすぐに遭遇するほどだ。広いフィールドの中にお馴染みのアクションをたっぷりと盛り込み、それだけでも楽しめる「オープンゾーン」という形に昇華させている。

本作ではいわゆるオープンワールドではお馴染みの、アイテムを集める要素もある。ストーリー進行に必要なメモリーや、ソニックの能力を強化するアイテムがその対象だ。『ソニックフロンティア』では持ち前のスピードと爽快感で、そのアイテム収集も飽きさせない。ちなみに筆者は、ソニックを動かしているのが楽しくて、気づいたらいろいろなアイテムが手に入っていた。さらにリング(ソニックのライフ代わりとなるアイテム)を取得した際の気持ち良い音は健在で、その音も「ソニック」らしさと爽快感を演出することに一役買っている。

レール上にはリングやメモリーがあることも。つい釣られて滑ってしまう。


フィールドにはアイテム収集のみならず、謎解きやアクションをクリアすることでマップが開放されるギミックもある。本作では移動自体を楽しませる作りのおかげで、それらの要素も楽しめるようになっている。目的地へ向かっている間に何かを見つけ、ついつい寄り道したくなる。

「ソニック」とオープンワールドの親和性は、意外なほどに高いものだった。ソニックの速さと、その速さを生かせる広いフィールド。2つの要素の相乗効果によって、『ソニックフロンティア』は移動も楽しいオープンワールド風のゲームの新しい形になった。そして、新しい形の「ソニック」が誕生したのだ。

ちなみにオープンワールドでお馴染みのファストトラベルは、ゲームが進むことで開放される。しかし、ソニックの高速移動のおかげで、普通に移動しても目的地まではあっという間。フィールドに設置されているスプリングなどを駆使すると、ただ走るよりもさらに速い移動が可能。リングを所持上限まで集めれば、ソニックの最高速が最大に引き上がり、ますます高速で移動できる。この最高速での移動が楽しすぎて、ファストトラベルを使う機会は少ないかもしれない。なお、オプションで速度の調整も可能となっている。ソニックの高速移動を制御しきれないというプレイヤーにもありがたいシステムだ。

ソニックの前に立ちはだかる巨大ボス


そんな楽しさが詰まった広大なフィールドには、スターフォール諸島に存在した古代文明の遺跡から目覚めたメカのような存在が、敵として蔓延っている。その中には、ソニックよりも遥かに大きな敵も存在し、遠くからでも姿を確認できるほどの大きさだ。そんな敵たちを、ソニックのアクションを駆使してなぎ倒していくのだ。通常のフィールドでそのまま巨大ボスと戦えることも、本作の醍醐味だろう。

しかしさすがのソニックでも、山よりも大きい敵を相手に格闘で勝つのは難しい。そこでソニックのスピードを駆使し、巨大な相手の弱点に接近して倒していくことになる。たとえばクロノス島に出現する巨大ボスである、守護神ASURAは、山のように大きな巨体で、手のような部位を地面に叩きつけて攻撃してくる敵だ。プレイヤーはASURAが手を叩きつけた隙にソニックを腕の上へと走らせると、頭上に乗り込んで弱点を攻撃することで倒すことができるのだ。

ASURAの腕を登るシーン。ソニックと比較してどれほど巨大かわかる。


ほかの守護神も巨大で、さまざまな形状をしている。ソニックは一寸法師のように、うまく弱点を突いて巨大な敵を倒していく。腕を駆け上がっていったりレールを滑っていったりなど、巨大な相手の弱点に到達して倒すまでの過程がことごとく格好良い。さらに、新たなスキルを習得することで、スピーディに倒せるようになる。新たなスキルも駆使して、より鮮やかなアクションで守護神を倒せると、うまくなったという実感も得られるはずだ。

そして、守護神以上の強敵となる巨神とのバトルが、各島の最後にソニックを待ち受けている。巨神は守護神よりも大きな体を持ち、その攻撃も壮絶だ。しかし、巨神とのバトルでソニックは、カオスエメラルドの力でスーパーソニックに変身。スピードとパワーを兼ね備えているスーパーソニックで、巨神との空中戦に臨むことになる。


初めこそ倒し方がわからずに苦戦する可能性はあるが、コツさえつかめば爽快感あふれるバトルに変貌する。敵の攻撃を巧みに跳ね返し、隙が生まれたところに大技を叩き込む。そして、怯んだ巨神にラッシュを仕掛け……と、スーパーソニックの圧倒的な強さが堪能できる、最高のボス戦だ。巨神戦で流れるBGMは疾走感のある楽曲で、バトルをさらに盛り上げてくれること請け合い。最初から最後までハイテンションな戦いが楽しめるだろう。

これまでの歴史を活かしながら、新しいものを目指した「ソニック」


守護神から得られるポータルギアを使うことで突入できる電脳空間は、スターフォール諸島とは異なりクローズドなアクションステージとなっている。ソニックが最初に迷い込むことになる電脳空間は、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』のグリーンヒルゾーンをモデルにしたステージだ。カメラも背面からソニックを追いかける形となる。これも『ソニックアドベンチャー』などこれまでの3D「ソニック」シリーズを思い出させる、ファンを喜ばせる演出だ。

このグリーンヒルゾーン以外にも、横スクロールステージなど、さまざまな電脳空間がある。どの電脳空間も「ソニック」らしさを盛り込まれている。それらのステージは、往年のファンを懐かしい気持ちにしてくれるはずだ。また、クリア時間などのチャレンジ要素もあり、つい意地になって繰り返しプレイをしてしまう。


電脳空間以外にも、ファンに向けられた要素はまだまだある。それはやはり、ソニックと彼を取り巻くキャラクターたちだろう。ソニックをはじめ、テイルス、エミー、さらにはソニックのライバルであるナックルズらも登場。ナックルズの種族が“ナックルズ族”から“エキドゥナ族”に変更になっているといった変更点もあるが、基本の関係性は過去の「ソニック」から踏襲されている。クールでちょっとキザなソニックが、いつものキャラクターたちと繰り広げる会話もどこか安心させられる。


ただし、これらはあくまでファンがうれしい要素のひとつであり、『ソニックフロンティア』はこれまでの「ソニック」を知らずとも楽しめる作品だ。足の速いソニックを操作して爽快。そんなシンプルな味わいは、本作から「ソニック」のゲームをプレイした方でも存分に堪能できる。物語を二の次にしたとしても、アクションだけで楽しめるのが『ソニックフロンティア』の魅力である。歴史のある作品だから、と尻込みする必要はないのだ。ぜひソニックと共に、未知の世界へと足を踏み出してほしい。

ソニックを自由に駆け巡らせよう


本作の攻略において基本的な流れは存在する。しかし、それは些細なものだ。スターフォール諸島でひたすらにマップを解放してソニックを強化してもいいし、ソニックの強化よりもストーリー進行を優先してもいい。電脳空間のタイムアタックに挑むのも面白いだろう。釣りに勤しんで、報酬で手に入った強化アイテムやポータルギアを手に入れてゲームを進めていくのも1つの手だ。『ソニックフロンティア』では、どんな手順で攻略をするかはプレイヤーの手に委ねられている。

こういった形で、それぞれの遊び方やルートでクリアを目指せる『ソニックフロンティア』は、これまでの「ソニック」にはない新しいものだ。しかしながら、古いものを生かしつつ新しいものを作ろうという絶妙なバランスは見事だ。繰り返しになるが、これは「ソニック」だ、と思わせる説得力も十分だ。スターフォール諸島のそれぞれの島々で特色が違うこととソニックの速さのおかげで、オープンワールドの作品にありがちな中だるみも感じにくい。ぜひスターフォール諸島への冒険に挑んでほしい。

ソニックフロンティア』は本日11月8日に、PS5/PS4/Nintendo Switch/Xbox One/Xbox Series X|S/PC(Steam)向けに発売だ。

Koutaro Sato
Koutaro Sato

何でも遊びますがメトロイドヴァニアとトレハン、ゲーム内の釣りが大好物。クリエイターやプレイヤーの人となりと、彼らが生み出す盛り上がりが大好きです。

Articles: 367