『Among Us』開発チームは、ヒット直前まであきらめムードだった。「もういいか」と思ってたらバカ売れ
『Among Us』開発元の共同設立者が、本作が一時期「開発終了」寸前の状態にあったと明かした。人気作となる直前の本作開発チームは、以降の開発やアップデートを終了して別の作品に取り組もうと考えていたようだ。海外メディアOvercomeによるインタビューを、PCGamesNなどが紹介している。
『Among Us』は宇宙船などを舞台にした人狼ゲーム。4人から15人までのプレイヤーが一緒に宇宙船に乗り込み、さまざまなミニゲームとしてタスクに取り組むこととなる。しかしプレイヤーの中には、インポスター(裏切り者)が存在。インポスターは殺害によるクルー数の減少や、サボタージュの成功を目指して暗躍することになる。一方のクルー側は、インポスターが誰なのかを探り当てるのが基本ルールとなる。シンプルながらも、奥深い駆け引きが魅力のゲームだ。
そして『Among Us』はかなりの期間「売れない」状態が続いていたタイトルでもある。本作は2018年6月にモバイル向けにリリース。その後、PC版がitch.ioおよびSteamにてリリースされた。しかし、本作はリリースから約1年以上にわたり、プレイヤー人口が伸び悩む期間が続いていたのだ。たとえばSteam版では、発売後の数か月間は毎日のピーク同時接続者数は1桁~2桁で推移。2019年中頃からは数百名のプレイヤーが遊ぶなど密かな人気を獲得したものの、横ばい傾向が続いていた(SteamDB)。率直にいって過疎だったのだ。
しかし2020年9月、本作に突然の転機が訪れる。本作がバイラル化し、プレイヤー数が急上昇。Steamにおいては、一時は44万人以上が同時に本作を遊ぶほどのヒット作と化したのだ。この出来事に、開発チームがむしろ対応に苦慮する一幕もあったほどだ(関連記事)。なお、本作は現在も根強く人気であり、Steam版では毎日のピークプレイヤー数2万人前後で推移している。
そんな本作については、「売れなかった時期の話」もしばしば語られている。たとえば、「リリース後、アップデートなどの開発停止を検討していたものの、熱心なファンの声で開発を継続した」といったエピソードも過去に語られてきた。また、本作開発元Innerslothの共同設立者であるMarcus Bromander氏は、「ぼくらはマーケティングが本当にヘタなので」とも語っていた(Kotaku)。ともかく、本作は開発チームが諦める寸前の所で、爆発的に売れたわけである。
Overcomeは7月27日、そうした経緯について開発者が振り返る動画を公開した。動画にて語ったのは、上述のBromander氏だ。同氏によれば、2019年初頭における本作開発チームは「『Among Us』開発はもういい」と考えていたとのこと。追加マップの実装やバグ修正なども終えてゲームのブラッシュアップもできた。にもかかわらず伸び悩むプレイヤー人口に、Bromander氏含むスタッフたちも「次にいこう」と腹をくくりかけていたのだろう。
しかし、「もう少しだけ頑張ろう」と決めた開発チームに大きな転機がくる。前述の人口爆発である。半ばあきらめムードだった開発陣は、ここに至ってふたつの選択肢に直面したという。それは「次回作に着手する」もしくは「『Among Us』の開発・アップデートを続ける」という道だった。
最終的に開発チームは、『Among Us』の開発を続け、同作を改善していくことに注力する道を選んだそうだ。また、そうしたタイミングでは新要素のアイデアなども出たものの、『Among Us』には合いそうもないとして、次回作まで見送られたとのこと。また、2020年に発表され同年にキャンセルされた『Among Us 2』の構想には、開発元の揺れ動く思いも反映されていたのかもしれない。結果として、『Among Us』は根強いファンベースを築いている。ひとつ作品を大切にする決断は、功を奏したと考えられるだろう。もっとも、本作は開発が続けられたがゆえにヒットしたといえるかは怪しい。開発の継続の有無が、本作のヒットを大きく左右したわけではなさそうである。
また、Bromander氏は本作について「まったくマーケティングをしなかった」と改めて振り返っている。本作が爆発的人気となったのは、作品自体の魅力もさることながら、ユーザーの口コミなどが大きな推進力となったのだろう。なんにせよ、商売っけのないBromander氏の様子を見ていると「『Among Us』が売れてよかった」と思ってしまうだろう。そうした同氏とInnerslothの姿勢も、ファンの心を掴んでいる要素かもしれない。
『Among Us』はPC(Steam/itch.io/Microsoft Store)/PlayStation 4/PlayStation 5/Xbox One/Nintendo Switch/iOS/Android向けに配信中だ。