『Apex Legends』アンチ・スキャン索敵能力をもつレジェンド実装に開発者は消極的。その理由とは

『Apex Legends』におけるスキャン系索敵アビリティは、敵の位置を検知する、戦術的に有用な能力だ。この能力への対抗アビリティ実装を求めるユーザーの投稿に対し、開発者はとある理由から否定的な意見を示したようだ。

Apex Legends』におけるスキャン系索敵アビリティは、敵の位置を検知する、戦術的に有用な能力だ。この能力への対抗アビリティ実装を求めるユーザーの投稿に対し、開発者はとある理由から否定的な意見を示したようだ。

『Apex Legends』には、ブラッドハウンド、シア、クリプトといった敵の位置をスキャンする能力を備えたレジェンドが存在する。ブラッドハウンドは、パルスを放出して、壁や障害物越しにリアルタイムで相手を検知しつづけるという戦術アビリティを備えている。シアは、前方にマイクロドローンを放出して、当たった相手を検知しつづけるという戦術アビリティ。さらに、マイクロドローンを放出する球状のエリアを展開して、エリア内の敵の動きを検知しつづけるというアルティメットアビリティ(ULT)を有している。クリプトについては、ドローンに映し出された敵を検知するという能力だ。いずれも検知された敵の位置はチーム内で共有される。

こうしたスキャン系アビリティを打ち消すことのできる、あるいは検知されない能力を有するレジェンドは現状では本作に存在しない。ミラージュの分身も、ある程度索敵を攪乱できるとはいえ、決定的な対抗手段とはならない。一方で対抗アビリティをもつレジェンドを求めるユーザーの声は、以前より少なからずあった。先日も、SNS上にてあるユーザーが「索敵無効化(※)をもつキャラクターはApexにいつ登場するの?」と疑問を投げかけている。投稿したのはTwitchやYouTubeにて活動する人気クリエイターのCau7ioN氏だ。

※原文は「Cold Blood」。『Call of Duty』シリーズにおける「Cold-Blooded」(索敵系効果に検知されないPerk)にちなんでいると思われる

この投稿に対して反応を示したのが、本作ゲームデザイナーのJohn Larson氏だ。同氏は上述のCau7ioN氏のツイートに対してリプライ。アンチスキャン能力の実装に対して乗り気でない様子を示した。主な理由として、スキャンに対抗するためのレジェンドを実装すると、プレイヤーがレジェンドを選ぶ選択肢が狭まってしまうと同氏は考えているようだ。

【UPDATE 2022/7/12 22:55】
John Larson氏の担当役職名について修正

『Apex Legends』のみならず、FPSゲームにおける索敵能力は強力だ。特に、リアルタイムで相手の位置を検知しつづけるアビリティは、検知仕返されない限り、相手に対して一方的に有利な状況を得られる能力といえる。相手が飛び出してくるタイミングが手に取るようにわかり、先に相手にエイムを合わせた状況で撃ち合えるためだ。

競技シーンにおいては、ブラッドハウンドが長らく高いピック(採用)率を誇っていた。また最近ではブラッドハウンドのピック率が減少した一方で、クリプトやシアのピック率が上昇傾向にある。スキャン系索敵能力をもつレジェンドは競技シーンにおいても、多くのチームで採用されつづけているわけだ。


強力な能力への対抗手段を安易に実装すると、今度は対抗手段をもつレジェンドが部隊に採用必須な存在になってしまいかねない。Larson氏が索敵アビリティへのカウンター実装に慎重な考えを示しているのは、そのためかもしれない。続くリプライで同氏は、レジェンドに依存しない、カウンターの選択肢を実装することに関心を寄せているとも語っている

先日開催されたALGS Championshipにおいては、ヴァルキリーのピック(採用)率が約98%であることが話題となった(関連記事)。これも、ヴァルキリーのULTによる場所の先取りへの有力な対抗手段が、ヴァルキリーのULTのみという現状を表しているとも考えられる。ジブラルタルの戦術アビリティおよびULTにおいても、この傾向は同様といえる。Larson氏は、いたずらに“必須級”のレジェンドを生み出してしまう可能性などについても懸念しているのだろう。

ちなみにLarson氏は、別のユーザーのリプライに返答するかたちで、ヴァルキリーの弱体化についても示唆している。Larson氏は、現状の本作競技シーンにおけるチーム編成がヴァルキリー・ジブラルタルおよびスキャン索敵系レジェンドで固定化されていることを認識。多様性をもたらすようなかたちで、競技シーンの環境を再生していくとの考えを示した。一方で、ヴァルキリーの調査ビーコンのスキャン能力については、温存したい方針をコメントしている。なにか別のかたちで調整が実施されるのかもしれない。

プレイヤーの選択肢を狭めず、ゲームプレイに多様性をもたらすような調整をおこなっていくというLarson氏。スキャン系索敵能力にせよ、ヴァルキリーにせよ、安易な調整で鼬ごっこを招くのは避けたいようだ。今後、具体的にどういった調整が実施されるのか。これからの動向に注目していきたい。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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