『ゴースト・オブ・ツシマ』開発元が「現在開発していない作品」について表明。異例告知の意図はいかに
Sucker Punch Productionsは日本時間7月2日、同スタジオの直近の開発状況について発表した。とはいっても、新作自体の情報ではなく“現在開発していない作品”について明らかにしたかたちだ。スタジオ発の告知としては、やや異例の内容となっている。
Sucker Punch Productions(以下、Sucker Punch)はPlayStation Studios傘下の、アメリカを拠点とするゲームデベロッパーだ。同スタジオは過去には『怪盗スライ・クーパー』および『inFAMOUS』シリーズをPlayStationコンソール向けに手がけ、人気を博した。さらに2020年には『ゴースト・オブ・ツシマ』をリリース。同作は評価も高い人気作となり、今年1月時点で800万本を売り上げた。Sucker Punchはさらなる脚光を浴び、広いユーザーから注目を集めるスタジオのひとつとなっている。
そんなSucker Punchが今回ユーザーに伝えたのは、「現在開発していない作品」の情報だ。発表において同スタジオは、現在特定プロジェクトに集中しているとコメント。しかし『怪盗スライ・クーパー』および『inFAMOUS』シリーズ、いずれの新作も現在開発中ではないと明言しているのだ。また、別スタジオでも両IPの新作は開発されていないという。開発中の新作情報の発表はよくある一方で、作っていない作品を明らかにするデベロッパーの発表はあまり見かけない。
気になるのは、Sucker Punchがなぜこうした発表を実施したかだ。推測できる理由のひとつとしては、ファンへの配慮があるだろう。『怪盗スライ・クーパー』および『inFAMOUS』シリーズはファンも多く、現在でも続編展開などを望む声は多い。同スタジオが、それらのシリーズの新作を開発中であるとの噂が広まることもしばしばだ。Sucker Punchの声明は、そうした噂にユーザーが翻弄されぬための配慮とも考えられるだろう。
ほかには、一部ユーザーによる心無い行動への対処の可能性もある。この推測の拠り所となるのは、最近英語圏コミュニティを中心に発生している『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズ新作にまつわる騒動だ。現在Santa Monica Studioは、シリーズ新作『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』を開発中。2022年にリリース予定としている。しかし、同作については人気作ゆえか噂が氾濫。先月頃から「2023年に延期される」「11月に出る」「近日中に新情報が公開される」などの報道や憶測が多数出回る事態となってしまった。
『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』にまつわる噂の錯綜により、ファンたちからは開発状況への懸念や疑問の声があがるに至った。そうした状況を受けて、Santa Monica StudioクリエイティブディレクターのCory Barlog氏が異例の声明を発表。「落ち着いて待ってほしい」とファンに呼びかけていた。しかし、一部の悪質なユーザーは開発元やスタッフを直接詰問したり、あるいは嫌がらせ行為にまで及んだ。“男性器の写真”が女性スタッフに送りつけられる被害まで出たようで、Barlog氏は激怒のツイートを投稿。「こんな事わざわざ言いたくもないが、開発チームや関係者に性器の写真を送るのは絶対やめろ」と訴え、敬意をもてと悪質ユーザーを叱りつけた。また、本日7月2日にはSanta Monica Studio公式Twitterアカウントが声明を投稿。開発者もユーザーもお互いに敬意をもって行動し、悪質な行為はやめるよう呼びかけている。
Sucker Punchがこうした騒動を受けて、ユーザーの騒擾を未然に防ぐために「開発していない作品」の発表に踏み切った可能性も考えられるわけだ。ちなみに、Sucker Punch公式Twitterアカウントも、上述のSanta Monica Studioによるツイートをシェアしている。
なお、Sucker Punchは今回の発表のなかで、『inFAMOUS 2』ユーザー生成コンテンツのサポートを可能な限り長く続けたい旨と、『inFAMOUS Second Son』のDLC「コールの遺産」の入手性改善に取り組む旨も伝えている。また、将来『怪盗スライ・クーパー』および『inFAMOUS』シリーズの新作開発に取り組む可能性も示唆されている。あくまでも、現時点においては開発していないということだ。いずれにせよ、各開発スタジオや新作の動向を知るには、スタジオの公式発表を待つのが最善だろう。