『Bloodborne』リマスター版の偽ニュースがネットを駆ける。ファンの心もてあそぶ巧妙な罠
フロム・ソフトウェアのアクションRPG『Bloodborne』のリマスター版が出ると、インフルエンサーを装うTwitterアカウントが投稿。偽アカウントによる偽リマスター情報に騙されたファンたちは興奮からの落胆を味わい、著名なユーザーたちも「釣られる」こととなったようだ。海外メディアPlayStation LifeStyleなどが伝えている。
『Bloodborne』は、フロム・ソフトウェアが2015年にリリースしたアクションRPGだ。同スタジオによる『ダークソウル』シリーズなどのゲームプレイを受け継ぎつつ、戦闘はよりスピーディーかつ攻撃的に。世界観も一新しており、ヨーロッパ風の都ヤーナムを舞台に、宇宙的恐怖がうごめく悪夢の物語が展開される。本作に魅入られたファンは多い。発売から約7年経つ現在に至っても、続編やリマスター版を求める声は根強く、またそうした展開の噂も絶えない。
ファンが『Bloodborne』新展開を渇望するなか、偽ニュースがツイートされた。本日5月31日未明、とあるユーザーが「『Bloodborne』リマスター版が出る」とする投稿をしたのだ。内容としては、PS5/PC向けに60fpsや4K/レイトレーシングに対応したリマスター版が2022年および2023年に発売予定と伝える内容だ。内容としてはリアルなものの、本作によくある噂や偽リークの一環と見られ、信じる理由はないはずだった。しかし、少なくない数のユーザーがこれを真に受けてしまったのである。このツイートは8200RTを超え、うち引用ツイートについては5600件以上と大きな反響を呼んだ。
偽情報が説得力をもった理由はひとつ。投稿者が著名インフルエンサーであるNibel氏を装っていたためだ。Nibel氏は海外ゲーマーを中心によく知られた人物であり、ゲームの最新ニュースを素早くツイートすることで知られている。ニュースソースとして一定の信頼を得ている存在なのだ。フォロワー数としては37万人を突破しており、人気のほどがうかがえる。そうした信頼ある人物を装ったアカウントが投稿したことで、偽情報がまるで本物のニュースのように見えてしまったわけだ。
偽情報を投稿したTwitterアカウントの名も同じく「Nibel」。アイコンやヘッダー画像、プロフィール文などもほぼ同一の内容だ。アカウントのIDは本物が「@Nibellion」で、偽物が「@Nlbellion」となり、iをl(小文字のL)に変えて巧妙に似せている。ボサッとしていたらまず見間違える再現度だ。また、『Bloodborne』リマスター版にかけるファンの期待も強かったのだろう。偽情報ツイートには、「本当だと思ったのに……」などのコメントで、騙された悲しみと怒りをあらわす反応が多数寄せられている。
ただ、名前を騙られた本人であるNibel氏を含めて、今回の騒動を珍事として扱うような反応も多いようだ。というのも、「偽Nibel」は2019年からTwitter上で活動しており、偽物としてそこそこ知られた存在だった。偽情報ツイートの直後には、Nibel氏と親しいジャーナリストのDaniel Ahmad氏が「すごいニュースをありがとう」と偽物に皮肉のリプライ。本物のNibel氏をメンションして、この所業を密告している。
一方で、本物のNibel氏は、「本当じゃなかったら、わかってるな」といった旨のリプライを偽物に向けて送信。一方で偽物は「本当だよ」とバレバレの嘘を重ねている。また、本物のNibel氏は「いいえ、今日は『Bloodborne』関連のニュースはありません」と、周知のためのツイートも投稿している。こちらは「今日の『エルデンリング』のニュースはありません」と約1年間毎日伝え続けた狂気のYouTubeチャンネル「Elden Ring News」のオマージュかもしれない(関連記事)。いずれにせよ、本人の反応はフェイクニュースに本気で憤っているというよりも、イタズラに対してやれやれと対処しているような風情である。
偽情報に騙されたのは一般ユーザーだけではない。たとえば、The Washington Post記者のGene Park氏も一瞬騙されてしまったようで、期待に付け込まれたようだとツイート。続くツイートで「心にダメージを負ったのででっかいピザを頼む」として、悲しみを表現している。また、Windows Central編集者のJez Corden氏は「『Bloodborne』のフェイクニュースはマジで辛い」と投稿。一瞬のぬか喜びからの絶望に、あらゆる立場のファンたちが深く傷ついたようだ。かくいう筆者とて、胸が締め付けられる思いである。
今回話題となった『Bloodborne』リマスター版の報は、偽物であった。だからといって、リマスター版がいつか登場する可能性はゼロではない。ファンの心をもてあそぶフェイクニュースにはしっかりと警戒しつつ、希望は捨てずに待ち続けよう。