戦争ゲーム『War Thunder』、「政治的議論を防ぐため」にチャットを制限していた。政治情勢悪化を受け決断

Gaijin Entertainmentが開発・運営するミリタリー対戦ゲーム『War Thunder』にて現在、ゲーム内チャット機能の大部分が停止されている。同スタジオは3月30日、議論を呼んだこの変更について「ユーザー感情を損なうような政治的議論を防止するためだった」と明かした。

Gaijin Entertainmentが開発・運営するミリタリー対戦ゲーム『War Thunder』にて現在、ゲーム内チャット機能の大部分が停止されている。同スタジオは3月30日、議論を呼んだこの変更について「ユーザー感情を損なうような政治的議論を防止するためだった」と明かした。海外メディアMotherboardが伝えている。


『War Thunder』は、世界各国の兵器で陸・海・空の戦闘を繰り広げる、マルチプレイ対戦ゲームだ。本作では2月28日のアップデートより、ゲーム内チャット機能を制限。マッチ全体/チーム内でのテキストチャットや、ボイスチャットが無効化されている。一方で、定型文を伝えるラジオメッセージは利用でき、知り合いなどとパーティーを組む「分隊」のなかではボイスチャットも引き続き利用可能だ。マルチ対戦を支えるコミュニケーション機能の大幅な制限には、海外ユーザーによる否定的な意見も寄せられていた。

チャット機能制限について、実装に至った背景までは明かされていなかった。しかしながら、状況からある程度の推測は可能だ。実装はロシアによるウクライナ侵攻の直後。そして、Gaijin Entertainmentはロシアをルーツとする企業であり、同国およびハンガリーなど欧州各国に拠点をもつ。また、同スタジオはチャット制限実施と同時期に「政治とは距離を置く」とのスタンスを示す声明を出していた。そのため、ゲーム内チャットの制限は、「ゲームとは無関係な政治的議論を防止するため」との推測を呼んだのだ。

Gaijin EntertainmentがMotherboardに語ったところによると、その推測は事実だったようだ。同スタジオは、「プレイヤー感情を損なうような政治的議論を防ぐために、ゲーム内チャットを一時停止した」と同誌に向けて回答。続くコメントにて、政治とは距離を置くスタンスを貫くと改めて明らかにしている。また、「重要なのは、世界中の人々が安全な環境で楽しめることである」として、政治的論争などと切り離されたゲーム環境を作りたい意向を示している。


しかしながら『War Thunder』のなかでは、すでにロシアとウクライナを巡るユーザー間のいさかいが発生している状況のようだ。海外掲示板Redditの本作コミュニティでは、車両の国旗ペイントなどを利用した政治的主張も報告されている。たとえば、ロシア側のシンボルと化している「Z」の文字をあしらった車両と、ウクライナ国旗を掲げた車両が、同チームにもかかわらず衝突しあうなど事態が報告されている。もしもチャットが制限されていなければ、ユーザー間での論争が激化していた可能性もあっただろう。

『War Thunder』の現状は、政治情勢がユーザー感情にまで影響を与えた一例だ。Gaijin Entertainmentのチャット制限が適切だったか否かは、賛否が分かれる。しかし、ユーザー間の軋轢を見越した苦渋の決断でもあっただろう。そして、この戦争が終結しチャットシステムが復帰したとて、「いつものコミュニケーション」に戻るかどうかはわからない。人気オンライン戦争ゲームの未来は、不透明だ。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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