カイロソフトがゲーム開発SLG『ゲーム発展国++』などをSteamで配信開始。ただしやや苦戦の幕開け
カイロソフトは3月28日、ゲーム開発SLG『ゲーム発展国++』をSteam向けにリリースした。約26年の歴史をもつ老舗デベロッパーの、Steam参入作第1弾かつ、久々のPC向け作品である。しかし、ユーザーたちの本作への評価は現在賛否ある状況のようだ。
『ゲーム発展国++』は、ゲーム開発会社を経営するシミュレーションゲームだ。プレイヤーは社長となり、さまざまな能力をもつスタッフたちを指揮。企画ジャンルの組み合わせを選んで、面白そうなゲームプロジェクトを推進するのだ。スタッフにはそれぞれ、プログラム・シナリオ・グラフィック・サウンドの4種類の開発能力値が存在する。適材適所で作業を割り振ることも、ヒットゲーム開発に重要となる。ほかにも、受注開発をしたり、宣伝を活用したりと売上向上にはさまざまな手段がある。人気ゲーム企業を軌道に乗せる、地道な楽しさが味わえる作品となっている。
しかし、本作は3月28日のSteamリリース以降、同プラットフォームユーザーレビューにてやや振るわない評価を受けている。レビュー全体数としては記事執筆現在で39件と少ないものの、うち36%が不評の「賛否両論」ステータスだ。否定的意見を投じたレビュワーたちの問題視する点も、おおむね一致している。本作はPC向けの最適化が不足している傾向があるのだ。
そうした問題点について紐解くには、『ゲーム発展国++』の歴史を踏まえておきたい。まず、本作が前身としているのは、2001年リリースのPC向けフリーゲーム『ゲーム発展途上国IIDX』である。その続編兼、モバイル移植版といった立ち位置の作品が本作『ゲーム発展国++』なのだ。同作は2008年にはiモードアプリ(ドコモの携帯電話向けソフト)としてリリースされた。続いて、2010年にはiOS/Android搭載のスマートフォン向けにも移植。2018年にはNintendo Switch向けに展開している。『ゲーム発展国++』Steam版は、もともとモバイル向けだったゲームをPCに展開した作品なのである。
そうした背景があるためか、本作の動作はPC向け作品としてはぎこちない面も目立つ。筆者が実際にプレイしてみたところ、ユーザーたちの指摘とおおむね一致した見解をもった。まず、UIはモバイル向けそのままの印象だ。ボタンやフォントは大きく、タップ操作を前提としている様子。フレームレートも低めなのか、文字の表示時やメニューの切替時にはアニメーションがややカクつき、ワンテンポ遅れるような感覚もある。また、PCの大画面であれば1画面に無理なく表示できるはずの各要素も、たどり着くために数クリックが必要となる。前述の『ゲーム発展途上国IIDX』では、UIが複雑な反面、ユーザーが自分で必要な情報を整理して1画面に表示することも可能だった。
『ゲーム発展国++』はモバイル向け作品として、『ゲーム発展途上国IIDX』に比して遊びやすさもたしかに向上していた。しかし、PCで遊ぶ上では不便さの方が目立つ状況となってしまっている。また、本作は開発元いわく「20年ぶりくらいのパソコン版」だ。かつてのカイロソフト製PC向けゲームの感触を期待していたユーザーが、モバイル向けUIほぼそのままのPC版に違和感を覚えかねない。なお、本作のゲーム性自体は高い評価を受けている傾向だ。今回の賛否両論は、あくまでもゲームそのものの質ではなく、モバイル向け作品をPCに移植する難しさに端を発するのだろう。
『ゲーム発展国++』はリリース直後にはキーボード入力が不可能となる不具合も報告されていた。しかし、同不具合は記事執筆現在スピード修正されている。また、カイロソフトは本作と同日に、『冒険ダンジョン村』『ゆけむり温泉郷』『お住まい夢物語DX』『箱庭シティ鉄道』と4本の移植作をSteamにて一挙リリースしている。Steam展開に積極的といえる姿勢を見せるカイロソフトが、賛否の声をどう受け止めていくかにも注目したい。
『ゲーム発展国++』PC版は、Steamにて現在配信中。4月4日までは22%オフの税込998円で提供されている。なお、本作はゲームパッドでの操作を推奨しているため、キーボード/マウス操作に違和感のあるユーザーはそちらを試してもよいだろう。