Steam版『Cities: Skylines』人気Mod制作者が、”嫌がらせスクリプト”を仕込んだとして告発される。街の道路速度低下など
街づくりシム『Cities: Skylines』Steam版向けMod制作者が、同作コミュニティにより告発されている。同制作者が公開していた複数Modに、悪意ある挙動が含まれているというのだ。海外メディアNMEなどが報じている。
『Cities: Skylines』は、都市運営シミュレーションゲームだ。フィンランドのデベロッパーであるColossal Orderが開発し、Paradox Interactiveが販売を担っている。本作にてプレイヤーは、新たに誕生した都市の市長として都市を整備する。住民たちの様子をつぶさに眺めつつ、住宅地や工業地帯などの区画を整理し、水道や電気および道路などの生活・物流インフラを整え、教育・警察・消防・医療などの公共サービスを提供していくのだ。また、本作はMod制作者たちの活動も盛んで、同作のSteamワークショップページにはさまざまな規模のModが多数投稿されている。
Steamワークショップは、同プラットフォームにてユーザー制作Modなどを簡便に共有・理由できるシステムだ。Mod制作者は開発・販売元の設定やゲーム側の実装に応じて、多様なコンテンツを作って公開できる。利用者側は、該当作品のワークショップページから「サブスクライブ」をクリックするだけで、簡便にModやユーザー制作コンテンツの導入ができるのだ。このシステムは『Cities: Skylines』のみならず、数多くのSteam向けタイトルで利用されている。
そして現在、とある『Cities: Skylines』Mod制作者が、Steamワークショップ公開Modに「悪意ある挙動を仕込んでいた」として同作コミュニティから糾弾されているのだ。悪質Modを公開していたとされるのは、ChaosおよびHoly Waterとの名義で活動しているMod制作者。Chaos氏は「Harmony (redesigned)」などのModをSteamワークショップで公開しており、現在同Modの導入者数は1万5000人に迫る。しかし、NMEおよび同作コミュニティの証言によれば、Chaos氏のModの幾つかはSteam運営元Valveによりワークショップから削除され、同氏が直近に用いていたHoly Water名義のアカウントについては一時停止処分を受けたという。
Chaos氏のリリースしたModの何が問題だったのか。コミュニティの証言によれば、同氏のModには特定のユーザーを検知して嫌がらせのような挙動をしたり、ほかの人気Modの動作を妨げるようなコードが仕込まれていたという。まず、Chaos氏が公開していた「Harmony (redesigned)」は、Mod導入ライブラリ「Harmony」の派生(フォーク)版だ。「Harmony」は『Rim World』など多数のゲームのMod導入用に用いられており、多くのModの動作の前提となるソフトウェア。そちらの“本家”「Harmony」は、悪意のある挙動などの指摘はなされていない。一方で、Chaos氏の「Harmony (redesigned)」には、「悪意あるソフトウェアをダウンロードしうる“自動アップデーター”」が秘密裏に仕込まれていたという。
それだけではなく、Chaos氏はほかのModの派生版も公開していた。「Traffic Manager: President Edition」や「Network Extensions」などの、同作人気Modの“自分版”を公開していたのだ。そして、そうしたChaos氏版Modを導入したプレイヤーが正規の「Harmony」を利用すると意図的にエラーが発生するようにしていたとのこと。そして、同氏の制作した「Harmony (redesigned)」を利用するよう促される仕組みがなされていたそうだ。つまりChaos氏は、人気Modの派生版を利用してさらに自分のModの利用者を増やすようなサイクルを構築していたのだ。
さらに懸念を呼び起こすのは、Chaos氏が特定のSteamユーザーIDを判別し、そうしたユーザーに「嫌がらせ」をするコードを仕込んでいた点だ。同氏が公開していた「Network Extensions 3」のソースコードを確認すると、確かに嫌がらせ目的と見られる実装がなされている。コード内には「バカ」などと名前が割り当てられたリストに、複数のSteamユーザーIDが列挙されているのだ。列挙されたユーザーたちは『Cities: Skylines』のほかのMod制作者たちが中心で、コミュニティの検証によれば開発元Colossal Orderの従業員も含まれているという。こうしたユーザーが「Network Extensions 3」を利用した場合、ゲーム内の道路の制限速度が低くなる仕組みになっているようだ。
また、前述の本家「Harmony」利用時に発生する意図的なエラーについても、証拠となる変更履歴が残っている。こちらのコードには、「Harmony」のアップデート方針に対する批判が長々と綴られており、「Harmony」利用時に動作を停止させる“ロードブロック”機能が記述されている。そしてコメントの最後には「ロードブロックを破るためにこのソフトウェアを派生させるなら、弁護士を雇ってからにするんだな」と脅し文句が書かれている。自分が制作した「Harmony (redesigned)」の利用をユーザーに強制する意図もうかがえる内容だ。
ほかにも、同氏のものと見られるSteamアカウントには現在「Colossal Orderは『Cities: Skylines』にキーロガー(ユーザーの入力情報を集める悪意あるソフトウェア)を仕込んでいる」との声明が綴られている。こちらの声明では、Colossal Orderでコミュニティマネージャーを務めるSamantha Woods氏を名指しし、同氏がChaos氏への“嫌がらせ”を扇動していると主張している。Chaos氏に実際にMod利用者を攻撃する意図があったかは不透明だ。しかし、前述の証拠となるコードと同氏の言動からして、かなり激しい怒りをもってコミュニティおよび開発元と敵対しているのは間違いないだろう。
海外掲示板Redditの本作コミュニティ/r/CitiesSkylinesでは、Chaos氏の行動を糾弾し、同氏制作のMod利用の停止を呼びかけるスレッドが立てられた。また、同氏のMod「Network Extensions 3」を利用停止した際に発生する問題を解決する方法についても共有されている。国内ユーザーで懸念を覚えた方は、利用Modをチェックしてみるとよいだろう。
Steamワークショップ提供Modについては、今まで特に安全性を意識せず利用していた方も多いのではないだろうか。今回の一連の騒動では、制作者の開発自由度の高いModについては、悪意ある実装がなされる可能性があることが示された。ゲーム側の実装にもよるものの、たとえワークショップModでも導入前の一考や下調べをした方がよさそうだ。