DLsiteがTRPG業界初の電子出版物指定販売サイトに。ライセンス締結で、メーカーとクリエイターが手を取り業界を盛り上げるか
株式会社エイシスが運営する二次元コンテンツのダウンロードサービスDLsiteは12月1日、TRPGライツ事務局により制定された「テーブルトークRPGに関する二次創作活動のガイドライン」及び「スモールパブリッシャーリミテッドライセンス」(以下、「SPLL」)をふまえた作品の取り扱いを開始した。テーブルトークRPG業界では初の電子出版物指定販売サイトとなる。
「テーブルトークRPGに関する二次創作活動のガイドライン」は、テーブルトークRPGのユーザー層の広がりを受け、著作権法上のトラブルを未然に防止するために10月に策定されたものだ。12月1日以降に製造開始された二次創作物が対象となり、シナリオやグッズなど、紙媒体や電子出版物を頒布するにあたって事務局へのライセンス申請が必要となる。そのなかでも電子出版物は販売サイトが事務局から指定されており、12月9日現在ではDLsiteが唯一の販売サイトに指定されている。
テーブルトークRPGは、ルールブックに記載されたデータや設定をもとにプレイヤーがキャラクターを創作し、主にプレイヤー同士の会話によってシナリオを進める対話型のロールプレイングゲームである。多くのルールで紙や鉛筆、ダイスなどのアナログな道具が用いられるが、ダイスボットやテキストチャットを搭載したオンラインセッションツールが使われることも多い。
物語はゲームマスターの裁定やプレイヤーの提案、そしてダイスの出目によってさまざまに展開し、同じシナリオデータを用いてもセッションごとに異なる結末が待ち受ける。すべての結末がプログラミングされているビデオゲームとは違った予測不能な臨場感があり、長く人気を博しているジャンルである。また、基本的な世界観設定やルール以外はプレイヤーに委ねられる部分が多いため、ルールブックに記載されたデータをもとに二次創作シナリオを作成したり、グッズを製作したりといった二次創作活動がガイドライン制定前から盛んにおこなわれている。二次創作物はコミックマーケットをはじめとした即売会で頒布されるほか、BOOTHをはじめとした販売サイトで電子出版物として販売されていた。
TRPGライツ事務局は、株式会社アークライト、株式会社 KADOKAWA、株式会社グループ SNE、株式会社新紀元社、有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチ、冒険支援株式会社 の6社からなる。『クトゥルフ神話TRPG』シリーズや『ソード・ワールド』シリーズ、『シノビガミ』『ダブルクロス』などのテーブルトークRPGルールブックのほか、関連雑誌の出版やイベント開催をおこなう企業が集まった事務局である。
10月にTRPG事務局が制定したガイドラインは、二次創作活動についての著作権法上のトラブルを未然の防止するためのものだ。あわせてSPLLも制定され、二次創作シナリオなどの電子出版物については一定条件を満たした場合にライセンス締結が必要となった。SPLLを締結した電子出版物は事務局指定の販売サイトで頒布しなければならない。
見る人によっては、事務局がガイドラインによって二次創作活動を制限しているようにも感じられるかもしれない。しかし、このガイドラインは原著作者に正当な利益を還元するためのもので、ユーザーの自由な二次創作活動を制限するものではない。12月1日の施行以前に販売開始された二次創作物については適用されないため、ガイドライン施行以前に販売していた二次創作物に関しても心配はない。ユーザーの疑問に関してもFAQページで詳細な回答がされている。テーブルトークRPG業界を発展させ、ユーザー・クリエイター・メーカーの三者が手を取り合うために制定されたガイドラインと言えるだろう。
事務局指定の販売サイトに一番はじめに指定されたのはDLsiteだったが、今後、ダウンロードサービスを運営する企業の協力次第で指定頒布先は増えていきそうだ。ガイドライン制定前に二次創作シナリオの頒布サイトとして賑わっていたのは、ピクシブ株式会社が運営する通販サイトBOOTHであった。こちらはガイドライン制定後にピクシブ株式会社側から提携の申し出があったようで、12月20日からSPLL申請作品登録が開始される。そのほかにもテーブルトークRPGシナリオのオンライン保管所TALTOや、アナログゲーム中心オンラインショッピングサイトのコノスからも提携協力の話が出ているようで、提携販売サイトは今後増えていくことが見込まれる。
プレイヤーの想像次第で物語が無限に広がり、シナリオなどの二次創作が盛んなテーブルトークRPG業界。二次創作ガイドラインの制定によって、DLsiteが電子出版物の販売サイトに指定された。BOOTHなど人気のある販売サイトも今後追加されていく見込みである。ガイドラインがユーザーとクリエイター、メーカーをつなぎ、テーブルトークRPGのさらなる発展の道標となることを願っている。