Intelの新CPUで、一部ゲームに不具合発生の可能性。原因は設計と海賊版防止ソフトの不調和か
Intelの新型CPU搭載パソコンにて、一部ゲームに不具合が発生すると報告されている。影響を受ける作品は『Life is Strange 2』や『エースコンバット7』など約50本。Intelの発表によれば、原因は海賊版防止ソフトウェア(DRM)とCPUの仕組みの兼ね合いだという。同社はDRM事業者などと協力して問題の解決に動いていく見込みだ。Ars Technicaなど各海外メディアが報じている。
不具合が発生する可能性があるのは、Intelの第12世代デスクトップ向けCPU(以下、Alder Lake-S)だ。Alder Lake-S は「世界最高のゲーム向けCPU」を謳い、11月4日に発売を迎えた最新型。特徴としては、CPUの電力消費効率を向上させるbig.LITTLE技術を採用している。Intelは、この技術が一部DRMに誤作動を発生させうるとの見解を示している。
big.LITTLE技術は、シンプルにいえば「特色の違うCPUコアを組み合わせて、電力などのリソース消費を最適化する」設計だ。コアとは、CPU上で実際の処理をおこなう演算回路のこと。big.LITTLEでは、高性能で高消費なコア(big)と消費電力の低いコア(LITTLE)が組み合わされる。必要となる計算量や優先度に応じて、仕事を適したコアに割り振る仕組みだ。Intelは開発者ガイドのなかで、big.LITTLE技術のようなCPUのハイブリッド設計が一部DRMでサポートされていないケースに言及。そうしたDRMを実装したゲームでは、不具合が発生する可能性を示唆した。
Intelは不具合が発生する可能性のある作品リストを公開している。対象となるのは、いずれもWindows向けの作品だ。同リストによれば、過半数のタイトルはWindows 10から11にアップグレードすることで、問題なく動作するとのこと。例としては、前述の『Life is Strange 2』『エースコンバット7』などだ。一方、『ブレイブリーデフォルトII』『聖剣伝説 Legend of Mana』などはWindows 11でも不具合の可能性がある。これらのうち一部タイトルは、11月中旬のWindowsアップデートで対応予定。ほかの作品についても、DenuvoなどDRM事業者やデベロッパーらと協力し、順次対応予定だ。該当作品の詳細については、同リストページを参照されたい。
Intelによる言及を受けて、Denuvoも声明を出した。同声明によれば、DenuvoはIntelと密接に連携して互換性テストをおこなっているとのこと。そして、DenuvoのDRMを搭載したほぼすべてのゲーム作品が、Alder Lake-S搭載PCで動作すると主張している。一方で、“古い作品”については互換性の問題が発生しうると言及。懸念のある作品については、パブリッシャーとの連携の上で修正パッチを提供していくとのこと。
また、海外メディアPCMagは、今回の問題についての分析を掲載している。同誌ハードウェアアナリストChris Stobing氏は、「Alder Lake-S のハイブリッド設計ゆえに、ゲーム起動中にDRMソフトウェアが単一のPCを2台のPCだと誤認してしまう」可能性を指摘した。つまり、同一ライセンスのゲームが複数PCで同時に起動していると誤検知されることになる。同氏はこのDRMの“勘違い”が、ゲームの強制終了などに繋がるとの見解を示している。
影響は限定的ではあるものの、Alder Lake-Sはゲーマー層にも訴求していただけに懸念になりうる。多額を最新CPUに投資したユーザーが悲しむことのないよう、素早い対応を望みたい。