『スマブラSP』プロ大会の上位に「キャラ被りがない」と話題。いろんなキャラにチャンスあるゲームバランス
先日、新ファイターのソラが配信された『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(以下、スマブラSP)。同作においては大会なども盛んであるが、オフライン大会の上位勢に「キャラ被りがない」として一部で話題となっているようだ。
特に注目が集まっているのは、非公式大規模オフライン大会「篝火#5」の結果である。同大会では、500人以上が参加。ダブルエリミネーショントーナメント形式で、10月30日と31日の2日にわたって戦いが繰り広げられ、ザクレイ氏が優勝を飾った。ザクレイ氏が、おなじみのロボットとジョーカーではなく、配信されたばかりのソラを選び、キャラ愛を信じ優勝したというのは非常にドラマのある展開であった。しかし面白いのは、大会上位陣のキャラクターが分散されていることである。
具体的には、ザクレイ氏はソラを使用しているほか、準優勝のしゅーとん氏はピクミン&オリマーとホムラ/ヒカリの両刀。3位のコメ氏はシュルク、4位のあとりえ氏はポケモントレーナー、5位のプロトバナム氏はミェンミェンとルキナ、同率5位のヨシドラ氏はヨッシーを使用。ざっと下を見て行っても、ほとんどファイター被りがないのである。れあ氏はザクレイ氏とソラ被り、トウラ氏はヤウラ氏とサムス被り、Sigma氏とManzoku氏のトゥーンリンク被り。多少の被りは見られるものの、上位32人のほとんどがそれぞれ違うファイターを選んでいるという点はかなり興味深い。
【UPDATE 2021/11/1 20:55】
トゥーンリンクの被りについて追記
また10月31日から11月1日にかけて実施されたPort Priority 6でも、上位陣のキャラ使用は分散気味。優勝のMkLeo氏はベレトを使い、準優勝のSparg0氏はホムラ/ヒカリを使用。3位のTweek氏はディディーを使っている。5位のLui$氏と7位のChag氏がパルテナで被っているが、7位までの被りはその1キャラのみである。25位まで見ても、ガオガエンやセフィロスは複数者が使用しているものの、全体的にファイター選びは分散されている。
本作には、すでに90体近くキャラがいる。とはいえ、ここまでキャラ被りが少ないというのは特筆すべきものがある。少なくとも『スマブラSP』については、オフライン大会では突出したキャラがいないことは、現在の環境では明らか。オンライン環境についても、個々によって意見はあるかと思うが、非公式オンライン大会タミスマSPの直近の結果を見る限り、キャラ使用率はバラけている印象である。
つまり、現環境では『スマブラSP』はキャラバランスが良く、どのキャラを使っても勝ち抜けるチャンスがあるのだ。『スマブラ』シリーズのプロとして長らく活動するRaito氏も、今年4月時点で本作のバランスが良いことを指摘。バランス面の特徴として、各キャラに強みと弱点が設定されていると評した。たしかに、DLCファイターについても、各キャラの配信直後こそ“壊れ”と呼ばれるものの、そうした評価はやがて消えていく。そうした流れもまた、『スマブラSP』のバランスのよさを証明しているだろう。
『スマブラSP』においては、リリース初期こそ各キャラの調整が盛んにおこなわれており、強キャラと呼ばれるファイターが固定化されていた。しかし、アップデートが配信されるたびに、強さの格差が是正されてきた。最近のアップデートでは、大会上位勢のキャラにはほとんど手が入れられておらず、あまり活躍の場がなかったファイターたちを中心に、細かな調整が加えられている。
ディレクターの桜井政博氏と開発元のバンダイナムコスタジオは、前作からタッグを組んでおり、『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS / Wii U』でもさまざまな調整を実施。しかしすべてがすべてうまくいったわけではなかった。ディディーの強化や弱体化など、各キャラのバランスを考えて苦心しながら調整をしていたが、最後のDLCファイターのベヨネッタが、最終的に頂点に立った。EVO 2018では上位4名のうち3名がベヨネッタを使うという状況が生まれ、同作のバランス調整は疑問視されながらシーンは幕を閉じ、『スマブラSP』へと移っていった。
そこから10回以上の調整アップデートを経て『スマブラSP』は、さまざまなファイターが勝つチャンスの存在するゲームになったわけだ。ザクレイ氏の優勝についても、ソラの性能ではなくザクレイ氏の実力に依るものであると考える声が多い。そうした声が寄せられる根拠には、ザクレイ氏への評価だけでなく、現在の『スマブラSP』のバランス面への信頼もあげられそうだ。さまざまな調整や失敗を経ており、その経験がいままさに活きている。
『スマブラSP』のDLC制作は、ソラをもって終了。また10月30日には、DLC制作スタッフのオンライン打ち上げが実施されたようで、「これが最後になる人も多い」と桜井氏は語っていた。『スマブラSP』や桜井氏が今もなお愛されているのは、競技ゲームとしてしっかり調整されハンドリングされているからでもある。桜井氏のみならず、開発チームの調整班の努力に拍手を贈りたい。コンテンツ追加が終了し、区切りがつけられた『スマブラSP』であるが、同作へと注がれるファンの愛情と情熱は、途絶えることはないだろう。
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