短編ゲーム開発者、Steamでゲームを発売し「非常に好評」を得るも“返金リクエスト”が殺到し萎えてしまう。開発引退も示唆
デベロッパーのEMIKA_GAMESは8月27日、無期限でゲーム開発から身を引くことを明らかにした。その判断の背景には、Steamにてリリースしたゲームについて、多数の返金リクエストがおこなわれたことがあるそうだ。
EMIKA_GAMESは、ロシアに拠点を置くデベロッパーだ。ホラーゲームを専門に手がけており、この1年半ほどのあいだに3作品をSteamにてリリース。最新作として今年7月に配信された『Summer of ’58』は、ロシアに存在する閉鎖されたとある施設が舞台の、一人称視点サイコロジカルホラーゲームである。その施設では、50年前に殺人事件が発生。容疑者としてひとりの子供が浮上するも、その子は行方不明となっていた。ビデオブロガーである主人公は、そんな曰く付きの施設に潜入する。
同スタジオの作品は、いずれもユーザーレビューにて「非常に好評」を獲得しており、『Summer of ’58』も同じくである。しかし同スタジオによると、本作のリリース後にかなりの数(a huge number of)の返金リクエストが、ユーザーから寄せられたという。一部のユーザーに至っては、好評レビューを投稿しておきながら、返金を請求していたそうだ。
実は、本作はクリアまでの時間が2時間に満たない短編作品である。Steamの規定上、購入から2週間以内かつプレイ時間が2時間未満であれば、ゲームを返品し返金を求めることができる。断定はできないが、『Summer of ’58』のプレイを楽しんだにもかかわらず、そうした仕組みを利用して、お金を節約しようと返金したユーザーが相次いだのかもしれない。
返金リクエストが相次いでいる状況を受けてEMIKA_GAMESは、新作を開発するための収益を得ることができないと嘆く。そればかりか、何か新しいことをしようという気持ちを失ったとして、無期限でゲーム開発から離れる考えを明らかにした。ツイートでは主語が「I(私)」となっていることから、同スタジオは個人で運営している模様。今回の出来事には大きなショックを受けたようだ。
先述したSteamの返金規定は2015年に導入された。Valveとしては、使用PCが最低要件を満たしていなかったり、間違えて購入してしまったり、あるいは1時間ほどプレイしてみて初めて好みのゲームではないことに気がついたりといった、購入におけるリスクを取り除くことを目的に、そうした規定を設定している。
しかし規定導入直後から、ある意味寛容なこの返金システムを悪用するユーザーが問題視されてきた。当時開発者からは返金リクエスト数の明らかな増加が伝えられ(関連記事)、最近も好評を投じながら1時間半でクリアできたとして返品していたユーザーの存在を知り、悲しむ開発者が話題となった(関連記事)。
短編作品だからといって、必ずしも返金リクエスト数が増えるというわけではなく、またユーザー側にもさまざまな事情があるだろう。しかし気軽に利用できるシステムであるがゆえに、悪用もできてしまう。なお、返金システムの濫用が認められた場合には、Valveはリクエストを拒否することがあるとのこと。
なおEMIKA_GAMESは、『Summer of ’58』に続く新作として『From Day To Day』を発表していたが、同作の今後についてはあらためて説明するとしている。ただ、近い将来にリリースされることはないだろうとも述べており、ゲーム開発から一旦身を引く決断をしたことが、同作にも影響を及ぼすことになったようだ。