ゲーム感覚作曲ソフト『ToneStone』発表。『Guitar Hero』や『Left 4 Dead』のベテラン開発者が創る“誰でも作曲”ソフト
デベロッパーのToneStoneは8月13日、楽曲制作ソフト『ToneStone』を発表した。対応プラットフォームはPC(Steam)で、現在クローズドベータテストを実施している。ゲームと楽曲制作(DTM)ソフトの融合ともいえる作品だ。
『ToneStone』は制作陣からして楽曲制作ソフトとしてはやや異色である。同作を手がけるスタジオToneStoneの中心スタッフとなるのは、過去にゲーム制作に携わってきたベテラン開発者たちなのだ。まず、同スタジオの共同創設者であるGreg LoPiccolo氏は、ゲームデベロッパーHarmonix Music Systemsに約18年間在籍していた人物だ。同氏は『Guitar Hero』や『Rock Band』などの音楽ゲーム制作の要職を務めたほか、その以前には『Thief: The Dark Project』や『System Shock』などに携わっている。
もうひとりの共同設立者であるTom Leonard氏は、Valveにて『Half-Life 2』『Portal 2』など複数の有名作品に携わり、『Left 4 Dead 2』においてはプロジェクトリードとして開発を牽引した人物だ。ゲーム開発経験豊かな両名が中心となって制作にあたる『ToneStone』は、ゲームプレイのノウハウと楽曲制作ソフトを融合することで「誰でも作曲できる」ソフトを目指す、という理念のもとに開発されている。
楽曲制作ソフトの画面といえば、細かく立ち並ぶ操作パネルやmidiノート、音声波形などを思い浮かべる方が多いだろう。一方で『ToneStone』の画面は、一見音楽ゲームのインターフェイスのようで比較的とっつきやすい印象だ。同スタジオのYouTubeチャンネルで公開されているチュートリアル動画を見ると、各種UIや操作についてもわかりやすさを重視して設計されており、今まで楽曲制作ソフトに触れたことがないユーザーに向けた工夫が見える。
機能面についても、自由度とわかりやすさのバランスが取られているようだ。チュートリアルなどを確認する限りでは、本作における作曲工程は、基本的には既存の演奏トラックを思い思いに組み合わせていくかたちになっている。しかし、トラックの一部を変調するキーブロック機能や、それぞれのトラックのバランスを整えるミキシング機能など少々踏み込んだ仕組みも用意されている。ほかにもソフト備え付けのエフェクトなどが実装されており、楽曲に変化をもたらしたり、好みのサウンドに近づけるための要素もある程度カバーしているようだ。また、マイクなどの機材からの入力音声を録音するレコーディング機能もあるので、自分で楽器トラックを録音したり、歌入りの楽曲を制作することも可能となっている。
制作した楽曲については、『ToneStone』のDiscordコミュニティに手軽に投稿できるほか、.mp3形式ファイルとして保存できる。強いて気になる点を挙げるとすれば、VSTやAAXなど音楽制作ツールでお馴染みのプラグイン対応については記載がなく、対応予定があるかは筆者が調査した範囲では確認できなかった。この点は既存の作曲ソフト利用者からすると物足りないかもしれない。しかし、本作は「未経験者でもゲーム感覚で音楽制作を楽しめる」というコンセプトのソフトであり、そうした観点から見れば機能面はかなり充実している印象だ。
本作は作曲機能のほかにも、音楽づくりを学べるチュートリアルモード「Skill Sessions」を搭載している。こちらはゲームのストーリーモードのような形式で作曲を一から学べる設計になっており、ゲーム感覚で作曲という本作の趣旨と相性が良さそうだ。今後の展開としては音楽ゲームプレイ要素も取り入れていくとのことで、遊びと作曲と学習をすべて兼ね備えたソフトになることが期待される。
また、『ToneStone』は幅広い展開を視野にいれているようだ。公式サイトにおけるロードマップでは、マルチプレイによるコラボレーションやライブパフォーマンスなどのオンライン要素のほか、マーケットプレイスにおけるユーザー制作楽曲の配信、楽曲権利のマネジメント機能などの目標が掲げられている。単なる作曲ソフトではなく、多くの人々が音楽を通じてコミュニケーションしたり、作品を世に出せるプラットフォームを目指しているのだろう。
『ToneStone』はPC(Steam)向けに配信予定。リリース時期は未定となっている。現在実施中のクローズドベータテストについては、公式サイトから「順番待ち」登録が可能となっている。