Mod共有サイトNexus ModsがModファイルの削除を不可能にする方針を発表。新機能実装の準備も、コミュニティからは賛否
PCゲーム用Mod共有プラットフォームNexus Modsは7月1日、同サイトにアップロードされたModについて、削除を制限する方針を発表した。変更後は、一度アップロードしたModを削除しても、ファイル自体は残る「アーカイブ」状態になるとのこと。8月からの施行を予定しているこの変更は、「Collections」と呼ばれる同サイトの新機能に関連するもののようだ。
Nexus Modsは、大手PCゲーム用Mod共有サイトだ。同サイトは『The Elder Scrolls』シリーズや『Fallout』シリーズなど、人気ゲーム用Modを多数取り揃えている。同サイトは、Mod共有サイトとしては最大手といえる規模を誇っており、Modを利用するプレイヤーとMod制作者には、実質上の定番サイトとなっている。Modファイル配信のほかにも、『The Elder Scrolls V: Skyrim』などのタイトルへのMod導入、管理を助ける「Nexus Mod Manager」という独自アプリケーションの開発など、技術開発もおこなっている。
今回、Nexus Modsが発表したのはMod削除に関するポリシーの方針変更だ。8月から施行予定のこの変更は、ModをアップロードしたユーザーがModを「完全削除」することを制限するものだ。8月移行からは、Modを削除した場合にはサイト上からの直接のダウンロードは不可能になるものの、ファイル自体は保存され続け、API経由でのアクセスは可能なアーカイブ状態になるという。この理由についてNexus Modsは新機能、Collectionsの実装に向けての措置だと説明している。
Collectionsは、Nexus Modsが開発中のMod動作環境の共有機能だ。PCゲーム用Modは各制作者が別々に開発したものを導入するため、導入時の動作性は基本的に完全には保証されない。Modを導入する際にはゲーム本体のバージョンや各種Modのバージョン、読み込みの順番、それぞれの相性などを考慮する必要がある。特に『The Elder Scrolls V: Skyrim』など、多彩でシステムに深く踏み込んだModが多く存在するゲームでは多数Modを導入してゲームを起動するだけで一苦労、ということも起こりえる。
Collectionsが目指すのは、そうしたMod込みのPCゲームの動作環境を共有するシステムのようだ。Collectionsを利用することで、Modユーザーは、動作可能かつ厳選されたModのリストをキュレーションすることができる。ほかのユーザーはそのリストに掲載されたModすべてを丸ごとインストールし、読み込みの順番やそれぞれの相性も込みで導入できるという仕組みだ。「これで動く」というMod導入環境をそのまま共有できれば、ユーザーのMod導入にまつわる苦労が軽減される。ユーザーにとっては利便性の高い機能だ。このCollectionsを導入し、スムーズに機能させるためには、ファイルの存在自体が担保されることが重要だ。些細なものでも、肝心のMod自体が消えてしまえば、安定動作環境は崩壊しかねない。
削除制限の実装後はユーザーが通常踏む手続きではファイルは手に入らなくなる、しかし、アプリケーションから、APIと呼ばれる窓口へのリクエストがあればファイルは入手可能となる。つまり、Collections機能はユーザーによって“削除”されたファイルも利用できるということだ。ファイル削除制限は、Collections機能が問題なく動作するための前提条件ということだろう。
ユーザーにとっては嬉しい機能となりそうなCollectionsではあるものの、削除制限の方針を含め、そのあり方にはMod制作者から賛否双方の意見があるようだ。海外掲示板Redditの『The Elder Scrolls V: Skyrim』Mod関連コミュニティ/r/skyrimmodsには今回の発表に関するスレッドが設立され、活発に意見が交わされている。
同作向けMod制作者でもあるSimonMagus616氏は「コミュニティにとって良い変化だ、厳選された質の高いModリストは『Skyrim』のModシーンに起きた最良の出来事だし、Mod制作者としても嬉しい」として好意的な意見を投稿。投稿は多くのUpvote(高評価)を集めており、Collections機能を歓迎するユーザーも多いことを示している。
一方で、ファイル削除が不可能になるということは、Mod制作者の権利を制限することも示している。Nexus Modsの方針に批判的な一部Mod制作者が、同サイトから自身の作品を取り下げるなどの動きも出ているようだ。あるMod制作者は自身の作品を同サイトから引き上げ、別の大手Mod共有サイトMod DBに再アップロード。Nexus Modsプロフィールの紹介文を抗議文に変更し、「(Nexus Modsは)盗人の巣窟になった」と痛烈に批判して反対の意思を示している。
また、海外メディアPC Gamerの本件にまつわる記事によれば、「Collections機能自体が、個別のModページへのアクセスを減少させ、ひいては寄付などのMod制作者へのサポートへの妨げになるのではないか」と懸念する声もコミュニティからあがっているようだ。
「利便性の高いサービスを提供したい」というNexus Modsの方針も理解できる一方、ファイル削除という重要な権利を奪われることに、Mod制作者が強い懸念を示すのも無理からぬことだ。コミュニティの分裂により、かえって利便性が損なわれる可能性も考えられる。削除制限施行は8月を予定している。その前後で、Mod制作コミュニティおよびNexus Modsは、どういった動きを見せるのだろうか。