任天堂、「違法アップロードされたゲームを放置していた」サイト運営元を訴え勝訴。約1億2000万円賠償命令を勝ち取る
任天堂が、海賊版ファイルの取り下げを怠ったファイルホスティングサービス運営元を被告として提訴していた件について、先月5月下旬に任天堂側が勝訴していたことが、海外メディアの報道により明らかになった。被告には93万5500ユーロ(約1億2000万円)の賠償命令が下ったとのこと。相手はフランスのファイルホスティングサービス1fichierの運営元、DSTORAGE SASだ。Torrent Freakが報じている。
今回の訴訟は、任天堂がパリ市高等裁判所にて、DSTORAGE SASを被告として提訴していたもの。報道によると、1fichier上では海賊版ROMのみならず、音楽など多岐にわたる海賊版コンテンツがホスティングされていたようだ。そのアクセス数は、毎月約3500万人が訪れるという盛況を見せていたとのこと。そのため、1fichierは多くのコンテンツ権利者からファイル削除要請を受けていた。しかしながら、アメリカのゲーム産業団体「エンターテインメントソフトウェア協会(ESA)」の報告によれば、同サイトにて実際に削除されたファイルは、2018年には削除要請に対してわずか0.59%。2020年には状況がさらに悪化し、0.12%まで落ち込んだとのことだ。
同サイトは、削除要請への非協力的な姿勢を理由に、アメリカの各種権利者団体によって、2度にわたりアメリカの通商機関である「米通商代表部(USTR )」に報告されていた。2014年には、アメリカレコード協会などの権利者団体からUSTRへ報告が上がった。そして、2018年には任天堂も加入している団体ESAから、USTRに対して報告が上がっていたとのこと。つまり、幾度にもわたる削除要請と抗議もむなしく、1fichierおよび運営元のDSTRAGE SASは海賊版ファイルをホスティングし続けていたということだ。
変化の見られない状況に業を煮やした任天堂は DSTORAGE SASに対し、フランスの法廷で損害の賠償を迫った。現地時間5月25日に判決が下り、結果は任天堂の勝訴。被告DSTORAGE SASには93万5500ユーロ(日本円で約1億2000万円)の賠償命令が下されることとなった。
なおパリ市高等裁判所は、今回の訴訟について「権利を侵害するコンテンツの削除を求める際に、法廷にすぐ持ち込む必要はありません。侵害への対処は状況に応じておこなわれるべきです」と念を押している。というのも、ファイルホスティングサービスの仕組み上、あらゆる海賊版のアップロードを防ぐのは困難なことだ。実際に、MEGAなどの同種サービス大手は、「権利者の削除要請に積極的に対応する」、「対応した件数を示す透明性レポートを、定期的に発表する」など、一定の海賊版対策をおこなって権利者と共存している。今回のケースは、被告DSTORAGE SASの削除申請に対する怠慢が明らかだったため、賠償命令が下ったということだろう。
報道によれば、任天堂は今回の勝訴について、「我々はパリ市高等裁判所の判断を歓迎します」と述べている。また、「この判決が伝えるメッセージは明らかです。DSTORAGE SASのように、事前の通知にもかかわらず海賊版ゲームへの対処を怠るファイルホスティングサービスは、フランスの法に基づき、海賊版コンテンツを削除するか、アクセス不可能にする義務があります」とコメント。「法を遵守しないサービスは、侵害を受けた権利者から賠償請求を受ける可能性があります」と、海賊版の氾濫を許す事業者への警句を伝えている。
先頃にも、海賊版ROM配布サイトを相手取った訴訟に勝利し、被告に約2億円の賠償命令が下されたことが報じられている任天堂(関連記事)。同社はかねてより、著作権侵害および商標権侵害行為に対して、毅然たる姿勢で望んでいる。海賊版対策の先鋒ともいえる任天堂の活躍に、今後も注目したい。
なお、被告側は記事執筆現在、あくまで任天堂に徹底抗戦する構えのようだ。DSTORAGE SASのものと見られるTwitterアカウントは、今回の判決に不服の意を唱え、あくまでも拒むという旨の声明文を発表。1fichier公式Twitterアカウントも、これをリツイートしている。