「鍵屋」とはなんなのか、「キーの売買」に違法性はないのか。業界大手の業者「G2A.COM」にインタビューで様々な問題と事件を聞く

利用するユーザーも多い一方で、様々な問題点や違法性が指摘されている通称「鍵屋」。AUTOMATONでは今回、過去に起きた事件や指摘されてきた問題点について、鍵の売買を仲介する「G2A.COM」へとインタビューを敢行した。

Steamの躍進により日本のユーザーやデベロッパーも多く参入するようになったPCゲーム市場。その拡大と共に出現した「鍵屋」と呼ばれる業者をご存知だろうか。海外では「Key Reseller」と表される彼らは、ゲームをアクティベートするための「プロダクトキー」をなんらかの手段で入手して再販売したり、あるいはそれを仲介したりして利益を得ている業者だ。通常、これらのキーは正規のパブリッシャーや販売プラットフォームが提示する価格よりも安価なため、日本でもユーザーが利用しているシーンをよく見ることがある。結局のところゲームにお金を払って買っているわけであり、SteamやOrigin、GOGといったプラットフォームとそれほど大きな違いはないように見える。

一方で、「鍵屋」は業界全体からは常にグレーな存在として見られ、多くのパブリッシャーからは拒絶され続けている。盗難クレジットカードで購入するなどキーが違法な手段で入手されている可能性があるほか、パブリッシャーと正規の契約を結ばずにローンチ前から異常に低い価格でキーを販売するなど、いくつかの問題がつねづね指摘されてきた。AUTOMATONでも過去に鍵屋の問題点について記事にて追求している。

参考記事: 海外ショップの『The Witcher 3』早期安売りに勧告、開発元「ファンは買わないでほしい」
参考記事: Bethesda、盗難クレカで転売されたキーの『TES Online』アカウントを今日から失効処分へ
参考記事: 盗難クレカで購入されたキーが「鍵屋」に流入、Uplayアカウントから対象タイトル削除
参考記事: Riot Games、『League of Legends』のプロシーンから鍵屋の「G2A」を排除へ。アカウント売買が原因でスポンサリング禁止処分

こういったグレーな存在、あるいは業界が排除こそしないものの煙たがっている鍵屋がゲームメディアと交じわることは少ないが、今回AUTOMATONでは鍵の売買を仲介している「G2A.COM」にコンタクトを取り、同社のCEOであるBartosz Skwarczek氏へとインタビューを実施した。鍵屋に違法性や問題はないのか、そしてどういう考えで鍵の売買を仲介しているのか。現在までに指摘されてきた様々な問題をぶつける。

※下部に掲載されているイメージおよびキャプションは、すべてG2A.COMのSkwarczek氏から提供された素材です。


 

Bartosz&-Dawid
Google本社をバックに撮影するG2AのCEO「Bartosz Skwarczek氏(左)」とCMO「Dawid Rozek氏(右)」

――まずはG2Aの成り立ちについて教えていただけますか。G2Aはどのように設立され、現在までどのように成長してきましたか?

Bartosz Skwarczek氏:
G2Aの歴史について語ってみよう。我々はビジネスパートナーのDavidと共に、2010年から会社をスタートさせたんだ。Davidのゲームへの情熱と、私の企業家としての動力が組み合わさって出来た会社だ。我々のチームがまだまだ駆け出しだったころ、起業してから3年間の会社の平均年齢は23歳だった。我々はみんなゲーマーで、一部の社員はハードコアゲーマーでもあり、そしてみんなで会社を始めた。正直に言えば、現時点では我々は“業界の異端者”だろう。低価格で提供し、かなり低いマージンしか貰っていない。ことは単純で、我々は最高のサービスで顧客に配慮し、彼らを惹きつけたいんだ。

2013年に我々は市場へとG2Aを定義し直した。顧客であるみんなには感謝しているよ、我々に示してくれたようだね。我々のことがどうやら好きで、手助けしてくれているようだ。現在では5万人以上の販売者と500万人以上の顧客が存在し、25万以上のクライアントが毎月登場するような市場の形成を手助けしてくれた。だから私はすべてのお客様に感謝の言葉を述べたい、なぜなら君たちがG2Aを作ったのだから。

――G2Aのオフィスはどこに存在しているのでしょうか?従業員の数は?

Skwarczek氏:
本部のオフィスは香港にあって、ポーランドのジェシュフとクラクフに2つある。上海とインドにもあるよ。今後もっとオフィスを作る予定だ。現在は350人以上の従業員がいて、若い企業ではあるけどかなり勢いよく成長している。実際にSimilarWeb社のデータによると、ゲームジャンルにおけるオーガニックキーワード検索で「G2A」は2番目に人気なんだ、現在では6700万回以上のデスクトップ(PC)からの訪問がある。会社をさらに成長させたいとかではなく、クライアントへの感謝や彼らのフィードバックが我々をより早く成長させていて、そのお陰で素晴らしい体験を顧客へ提供できていると信じているよ。

Japan
左からMSIマーケティングセールス部のJunya Taniguchi氏、G2AコスプレイヤーのGiada Robin氏、G2A.COMのCEOのBartosz Skwarczek氏、プロゲーミングチームDeToNatorとGalacticのCEOであるMasaru Ejiri氏

――G2Aの主要なサービスをあらためて教えていただけますか?

Skwarczek氏:
まず一番重要な部分だが、G2AはAmazonや楽天のような“マーケットプレイス”なんだ。誰もがG2A.COMのマーケットプレイスに商品を置くこと ができる。現在はデジタル製品だけを取り扱っていて、世界中のありとあらゆるゲーム関連デジタル製品が存在する。その数は2万点以上……「ゲーム」 「プリペイドカード」「インゲームアイテム」とかね。G2Aはゲーマーたちにとって“最安値の地”である。MSIの力を借りて開発している内製VRゲーム 「G2A Land」みたいに、革新的なマーケティングも提供している。国内外の多数のチームやトーナメントを支援して、世界中のe-Sportsを促進している。

G2A は可能な限り日本の顧客にも仕えるつもりだよ。FacebookやTwitterの日本語アカウントを取得するだけじゃなく、日本の言語サポートを提供することもより重要だ。できる限り我々はゲーマーの親身になろうとしている、東京ゲームショウ2015にて「MSI」「EIZO」「SteelSeries」と共にブースを開いたのも、京都のBitSummit 2015に参加したのも、それが主な理由だ。

――G2Aでは「プロダクトキー」が主要な取引商品ですよね。このキーはどこで確保しているんですか?

Skwarczek氏:
先ほど述べたようにG2Aはマーケットプレイスなんだ、販売者と購入者が出会う場所だ。だから、G2A.COMはマーケットプラットフォームを提供しているにすぎない。ここでは企業、配給者、開発者、そして個人でさえもデジタル製品を売買できる。みんなは我々のマーケットプレイス上でゲームだけでなく、ソフトウェアやプリペイドのアクティベーションコードも売っているんだ。

――デジタル製品が自由に売買できるG2Aのマーケットプレイスに、問題や違法性はありませんか?

Skwarczek氏:
Amazonや楽天、あるいはほかの会社のように、我々は同様のビジネスをやっているに過ぎない。マーケットプレイスを開いているんだ。したがって、法律やいかなる事例もまったく同様に扱われているし、G2A.COMが提供する解決策の合法性や信頼性については保証することができる。

Partners
左からEIZOのグローバルマーケティング&パートナシップのリーダーMasashi Yamazaki氏、G2A.COMのアジア地域マネージャーKarol Jacewicz氏

――G2A.COMではSteamやOriginなどよりも安価にプロダクトキーを購入できますよね。ゲーマーは喜ぶかもしれませんし、実際に利用しているユーザーは国内でもよく見かけます。ただ、プライスダウンの重圧を避けたいデベロッパーやパブリッシャーにとっては、不都合にならないでしょうか?日本のデベロッパーも同様の考えを持つかと思います。

Skwarczek氏:
おそらく日本の顧客たちはハイクオリティだけど高価な製品を見極めているんだろう、我々の販売者にとってはいいニュースだ。G2Aのマーケットプレイスでなぜゲームが“いい価格”で売られているのかには、いくつか理由がある。ひとつは、販売者たちは自分で価格を設定するんだけど、販売者はマーケットプレイス上に5万以上も存在していて、お互いによりよい価格で提供しようと競っている。そしてG2Aは最大級のゲームマーケットプレイスであり、販売者たちは大量に商品を保持して販売することができる。購入者は低価格で購入できるし、販売者は素早く売ることができる。双方に利益があるだろう。顧客は低価格で幸せだし、G2Aもより早く成長することができて幸せだ。さらに、我々はデベロッパーが直接我々のクライアントに商品を提供できる「G2A Brands Direct」を始めたばかりで、パートナーたちとすでに契約を結んでいる。

要約すると、日本のデベロッパーはG2Aにて自社製品の別のマネタイズ方法を見つけることができるんだ。おまけにマネタイゼーションは早くてとても簡単、より多くのユーザーを引き込むことができる。デベロッパーの収入が減ることは無いんだよ。これが日本のパートナーへと提案しているひとつのキービジネスだ。

――SteamやOriginに対しても、いい影響を与えていると思いますか?

Skwarczek氏:
我々はSteamやOrigin、あるいはUplayのようなプラットフォームをよく見ている。彼らはゲームをダウンロードするためのDRMシステムを提供しているだろう。それに対し我々は顧客に製品を運んでいるんだ。顧客をフルにサポートすることで、これらのプラットフォームをサポートしていることも忘れてはならない。G2A.COMで購入したコードになんらかの問題があれば、顧客はSteamやOriginに行かずとも、24時間休み無しのカスタマーサポートが君たちを助けてくれる。実際、我々は日本語含む7言語のカスタマーサポートをG2A Resolution Centerにて提供しているんだ。

――別のキーリセラーである「G2Play」はオフィシャルFAQにて、パブリッシャーから提示される正式価格を守る必要がないのが安さの秘訣だと伝えています。G2Aではパブリッシャーから価格を修正するように伝えられたとがありますか?

Skwarczek氏:
説明してきたように、G2Aはマーケットプレイスなんだ。我々は価格設定に関しては一切触れていないし、価格ポリシーを変えるよう販売者たちに迫ったこともない。eBayと同様に販売者たちは価格を設定することができる。オープンなトレードなんだよ。みんな自発的に購入者になっているし、自発的に販売者になっている。我々はフェアな方法でうまく動作するマーケットを作っているんだ。

―― 一部ではG2Aはキーがどこで取得されたのか、合法的な方法で得られたものなのか確認していないとの批判もあります。この問題についてはどう思われますか?

Skwarczek氏:
G2AではG2Aマーケットプレイスに出品された新製品をそれぞれチェックしている。ただ大量のオークションが行われているから、特に処理が数分や数秒で終わる場合は、それぞれのキーをチェックすることができない。G2Aに“違法な出どころ”からのキーかもしれないという報告があった時には、我々は常に事態を確かめる。そのとおりであったのなら、販売者をBANし、マーケットプレイスからキーを削除することになる。顧客のことも忘れてはいない、彼らには代金を返金するか代わりのコードを提供する。G2Aは年中無休のサポートセンターとResolution Centerがあり、顧客満足度は97パーセント以上となっている。

―― 購入したプロダクトキーがすでにアクティベートされているという事例もよく聞きます。

Skwarczek氏:
残念ながら、一部のユーザーはマーケットプレイス上でひそかに無効なキーを販売しようとする。我々G2A.COMは、“警察”としてすべてのユーザーをコンスタントにチェックしており、顧客を騙そうとするような輩はマーケットプレイスから追い出している。G2Aは彼らをBANするんだ。我々は「G2A Shield」を追加サービスとして提供しており、それを利用すればG2A.COMでの購入は100パーセント成功させることができる。もし購入したキーになにかが起きても、このサービスに入っていればG2Aは確実に返金するし、あるいはキーを素早く渡すことになる。さらに、「G2A Resolution Center」も紹介したいね、販売者と購入者が出会い、問題を解決できる場だ。もちろん、G2Aは事がすべてスムーズに進むよう常にチェックしているし、もしそうでなければG2Aは問題解決における調停者として振る舞う。

cosplay
左からイタリアの有名G2AコスプレイヤーGiada Robin氏、EIZOのグローバルマーケティング&パートナーシップにおけるリーダーMasashi Yamazaki氏

 

後編では、人気MOBAゲーム『League of Legends』のスポンサリングをRiot Gamesから禁止された事件や、パブリッシャーDevolver Digitalから拒絶された事件などを中心に追う。

 

[聞き手 Shuji Ishimoto]

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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