『ポケモンカードゲーム』新パックの販売方式が抽選販売に変更。全世界で“ポケカ投資家”なる人々が市場荒らす
ポケモンセンターは5月13日、5月28日発売予定の『ポケモンカードゲーム』関連商品の店頭販売をおこなわず、すべてオンラインによる抽選販売とすることを決定した。対象商品は『ポケモンカードゲーム ソード&シールド 強化拡張パック イーブイヒーローズ BOX』をはじめとした4種類だ。これらの商品は店頭に並ばず、入手するにはポケモンセンターオンラインでの抽選販売に応募する必要がある。
5月28日(金)発売 ポケモンカードゲーム商品の販売方法に関するお知らせ
今月28日に発売される『ポケモンカードゲーム』関連の商品は、5月7日の10時から予約販売が開始されていた。しかし、品薄が続くほどの人気商品ということもあってサイトへのアクセスが集中。その結果、販売ページの閲覧および商品の購入が困難な状態となっていた。店頭販売では混雑も予想されるため、新型コロナウイルス感染予防の観点から販売方法が変更になったとも考えられる。また、今回変更された販売方法は抽選ということもあり、転売行為に対する抑止力ともなりうる。近年、ポケモンカードは品薄の状況が続き、人気カードの価格は高騰している。この現状には「ポケカ投資家」なる存在も関係しているようだ。
『ポケモンカードゲーム』をはじめとしたトレーディングカードゲームのカードは、かねてより中古品を取り扱うホビーショップなどで取引されてきた。「ポケカ投資家」はその市場価値に目をつけて『ポケモンカードゲーム』に“投資”をおこなう人々で、SNSを中心に活動している。カードの需要を見定め、パックを大量に予約し、メルカリなどのオークションサイトにて高値で売りさばいているのだ。「投資家」と言えば聞こえはいいが、要はポケモンカードの転売行為で利益を得ようとしている人々である。
「ポケカ投資家」が大量に“仕入れ”をするために本来の購買層までカードが行き渡らず、オークションサイトなどでやりとりされる価格はどんどん吊り上がっていく。近年、Nintendo SwitchやPS5でもよく見受けられた構図である。国内メディア・KAI-YOUのインタビューによると2020年11月20日に発売された「シャイニースターV」以降、転売市場は異様に加熱しているという。
『ポケモンカードゲーム』における「投資家」の問題行動は日本だけにとどまらない。米マクドナルドは2月9日、ハッピーミール(子供向けのおもちゃつきセット)のおまけにカードがついてくるキャンペーンをスタートした。海外メディアPolygonによると、キャンペーンがはじまるや否や、カード目当てにハッピーミールを大量購入する大人たちが出現したようだ。eBayをはじめとするオークションサイトには、関係者でなければ入手困難であろう箱入りのカードも出品されていた。ポケモン公式は2月11日、Twitterでカードの再販について告知している。
アメリカでは『ポケモンカードゲーム』のほか、パニーニ社が販売するスポーツカードの価格も高騰している。こちらは需要が急増したことで、暴力事件まで起こっているありさまだ。海外メディアEurogamerによると、5月7日、アメリカ・ウィスコンシン州の小売店・ターゲットでスポーツカードを購入した35歳の男性が、4人組の男性から暴行を受ける事件が発生。ターゲットでは1人1BOXの購入制限をかけて毎週金曜日のみの販売をおこなっていたが、5月14日以降は安全性を鑑み、店頭でのカード販売を終了するようだ。この事件を受けての対応かは不明だが、アメリカのスーパーマーケットチェーン・ウォルマートでも、一部店舗でカードの店頭販売を停止しているという報告がある。
ブラインド商品というカードパックの特性上、トレーディングカードゲームと中古市場の関係は深いものがある。ホビーショップでは昔からシングルカードの中古取引がおこなわれてきた。『マジック・ザ・ギャザリング』の超高額カード「ブラックロータス」などは、カードゲームに詳しくなくとも名前は知っている方も少なくないだろう。しかし、筆者の個人的な意見とはなってしまうが、かつての中古市場にはもっと“慎み”があったように思う。商品を品薄に追い込み、いたずらに市場価格だけを吊り上げるような「投資」は度を越しているとは言えまいか。
「ポケカ投資家」を名乗る人々によって異様な高騰を見せる『ポケモンカードゲーム』は、感染対策か、投資家対策か、販売方式を抽選販売へと切り替えた。抽選の応募期間は5月14日10時から18日23時59分までである。「投資家」ではなく、より多くの「愛好家」へカードが届くことを願っている。