『League of Legends』世界大会、グループステージを勝ち抜いたチームが激突。準々決勝の結果を振り返る

今月から始まった『League of Legends』世界大会「World Championship 2015」も後半戦に突入した。ベルギーで開催される準決勝の前に、準々決勝を振り返る。

今月から始まった『League of Legends』世界大会「World Championship 2015」も後半戦に突入した。グループステージを勝ち抜いた全8チームが進む「ノックアウトステージ」は、敗者復活戦もルーザーズブラケットもないシングルエリミネーション方式。負けたらそこで終わりのトーナメントとなる。グループステージ最終日に決定した準々決勝の試合はBo5(ベストオブファイブ、3本先取)で行われ、1日ごとに結果が決まってゆく。

Flash WolvesのSteak選手(Top)。チームを勝利へと導くべく奮闘する。画像出典: LoL Esports
Flash WolvesのSteak選手(Top)。チームを勝利へと導くべく奮闘する。画像出典: LoL Esports

 

Flash Wolves vs. Origen: 東洋と西洋の戦い

第一試合と第二試合は、ダブルテレポートを警戒してピックアップ・エンゲージ構成をとったFlash Wolves(以下、FW)に対し、レーンのプッシュ力を重視したOrigen。ダブルテレポート戦略は、相手が隙を見せた場所にすぐ飛んでいけるため、レイトゲームで特に脅威度が高い。互いにミスを繰り返しつつも、勝機を逃さなかったOrigenが勝利した。

第三試合ではFWが今大会初となるCaitlynをPickし、Pokeとプッシュ力を重視した構成へと変更。ロングゲームとなったものの、Origenのミスを余さずとがめていくFWのプレイには光るものが多く見られた。第四試合では集中力を取り戻したOrigenが強い存在感を示し、ヨーロッパからの出場チームとして準決勝への進出を決めた。

OrigenのMidであるxPeke選手が今大会で多用するAniviaは、ここ2年ほどのメタでは主役になっていなかったチャンピオンだ。広範囲にわたって長時間ダメージとデバフを与えるUltimateと、何もないところに障害物を設置する能力により、Siege(建造物を攻め、壊すこと)では大きなコントロール力を発揮する。スタンからの大ダメージコンボも序盤から使っていけるため強力だ。ただ足が遅く、Ultimate習得前のLv5まではレーンプッシュ能力に問題を抱えやすい。対面に来るチャンピオンをよく理解していなければ、うまくプレイすることはできないだろう。xPeke選手は老練のMidレーナーらしく、対面のチャンピオンを熟知した巧みなプレイで相手をさばいていた。彼はまた、どんな試合でも相手チームからマークされ続ける選手でもあるが、Origenはそうした相手が多いことを承知しているようで、非常に柔軟性の高い動きで対応している。

結果: Flash Wolves 1 – 3 Origen

このシリーズのMVPとなったのはNiels選手(ADC)。第三試合で見事なバロンスティールを見せたほか、安定したプレイと素晴らしい立ち回りにより、チームを勝利に導いた。

 

SK Telecom T1 vs. ahq e-Sports Club: 神殺しなるか

ノックアウトステージに進出した2つめの台湾チームであるAHQ。その前に立ちはだかったのは、今大会の優勝候補筆頭であるSKTだ。SKTの強さは圧倒的であり、AHQは思うような試合運びができない。第三試合はAHQのWestdoor選手(Mid)操るFizzが「魔王」「神」との異名も取るFaker選手(Mid)のKassadin相手にソロキルを獲得。AHQは機を見たGankやCounter Gank(カウンターガンク、相手のGankを読んでこちらもGankすること)などを行い、TopレーンとBotレーンをカバーし、逆転の目を狙ったがあまりうまくいかなかった。試合終盤、突出したSKTのチャンピオンを捕捉して倒し、全体的な数の有利を作り出すという得意なパターンで互角の戦況まで持ち直したAHQだが、SKTの巧みなレーンコントロールもあり、Towerを守る戦いの主導権を握ることができなかった。このように、第三試合はSKTの誰が最も素晴らしい結果を出したということはない試合ではあったが、かつての王者が綿密なチームワークを携えて戻ってきたということを強く印象づけた。

ノックアウトステージに出場チームが2つとも進出した台湾であったが、準々決勝で両チームが脱落という結果になった。ちなみにここまでのSKTは、各レーンの2本目のTowerを一切落とされていないという驚異的な戦績を収めている。

結果: SK Telecom T1 3-0 ahq e-Sports Club


MVPはWolf選手(Support)。要所要所を押さえたプレイでマップを支配し、集団戦を制した。

 

Fnatic vs. Edward Gaming: 友との戦い

ゼロからのチーム再建を果たしたヨーロッパの雄と、中国で唯一のノックアウトステージ進出となったトップチームの組み合わせとなった第三戦。EDGはグループステージでTopを務めたAmagzingJ選手に代わり、Koro1選手を投入。FNCのRekkles選手(ADC)とEDGのDeft選手(ADC)は、世界屈指のADCであるとともに、昨年のWorldsで初めて対戦した後、地域を越えて友情を温めてきた友人同士ということもあり、注目のカードとなった。

第一試合ではなんと「ダブルテレポート」ならぬ「トリプルテレポート」戦略が登場。途中まで苦しい戦いを強いられたFNCだが、中盤の集団戦で流れをひっくり返し、波に乗ったまま勝利を収めた。第二試合ではEDGがMordekaiserをPickするものの、試合中にGragasのスキル・Q(樽を投げつけ爆発させる)にバグが発生。ポーズがかかり審議が行われた結果、Pick & Banからの完全再試合となった。再試合となった第二試合以降は、FNCによるKalistaのbanでチャンピオン選択の幅が狭まってしまったEDGのBotレーンが完全に制圧され、Koro1選手のFioraやDariusもゲーム終盤で活躍することができず、ストレート勝利を決めたFNCが準決勝への切符を手にした。

結果: Fnatic 3-0 Edward Gaming


MVPはFebiven選手(Mid)。国際舞台においても素晴らしいプレイを見せる彼は、間違いなく世界屈指のMidレーナーだ。

 

KT Rolster vs. KOO Tigers

KOOはBlue時(第二、第四試合)にCaitlynをPick。ゾーニングの強力なVeigarやViktorを組み合わせて、強力なSiegeを実施してのけた。KTは各試合で戦闘力の高いチーム構成のもと戦ったが、その代償としてSiege能力に劣ることとなり、Towerや視界の戦闘で不利になる展開が多かった。Caitlynは塔下へ追い込まれても長射程の通常攻撃でCSを取りやすく、Jinxに追い込まれることが少ない低リスクの序盤を展開できるようでもある。

主に韓国チームの戦術として、Jungleの選択に対する自由を得るため、青チーム側がMordekaiserを3手目にBanするケースが見られている。赤チーム側がDarius・Gangplank・Mordekaiserの定番を青チームに取らせないためにBanすることが多いのだが、初手にMordekaiserを取るとEliseを取れなくなってしまう。そういうわけで、青チームがMordekaiserをBanすることがあるようだ(Jungle系がオープンでかつ赤チームがBanしない場合)。また、Dariusは必ずしも脅威とはならなくなりつつある。これは強力なスタンを持つViktorやVeiger、あるいはEliseなどがPickできれば足止め可能になるためだと思われる。

そしてスプリットプッシュ(チームと離れて一人で特定のレーンをプッシュし、マクロ面で相手にプレッシャーをかける行為)をするなら1対1の戦闘にめっぽう強いFioraを使うという選択があがってきている(Smeb選手のようにCarryできるなら特に有効だ)。一方で、Huni選手はRivenの序盤からバーストダメージに優れる特性をLv2から押し付けて、Fioraを失速させることに成功している。

結果: KT Rolster 1-3 KOO Tigers


MVPはSmeb選手(Top)。彼のFioraはどの試合でも常に存在感を放ち、試合を牽引した。

以上の結果により、準決勝の組み合わせはこのように決定した。残っているのは韓国勢とヨーロッパ勢のみ。果たして決勝までこの構図は維持されるのだろうか。画像出典: LoL Esports
以上の結果により、準決勝の組み合わせはこのように決定した。残っているのは韓国勢とヨーロッパ勢のみ。果たして決勝までこの構図は維持されるのだろうか。画像出典: LoL Esports

 

準決勝への展望

失墜のADC

今大会のメタでは、Topレーンがゲームに及ぼす影響が大きいが、その影響を直接受けてしまっているのがADCのポジションだ。このPatch 5.18のメタにおいて、ADCは「失敗しないこと」が非常に重要になってしまっている。レーンで負けない、失敗しないためには、ダメージを与える能力よりも、危険を回避する能力が大事になる。グループステージ以来FNCがPickしているKennenは、AD(物理ダメージ)を増す能力をほとんど持っていないが、自分の移動を加速する能力と、時間はかかるものの広範囲の敵をスタンさせる能力も持っており、Rekkles選手は強力な手札として用い続けている。

FNC対EDGの第一試合でEDGのDeft選手が用いた「ADC Jayce」のPickもふるわなかったが、この流れに沿うものである。こうした「変則Pick」を正しく用いるには、通常とは違うプレイや戦略が必要となってしまうが、準決勝以降も思わぬPickが出てくるかもしれない。

 

究極のフレックスピック: Kennen

広範囲のスタン能力を持つことからこのところSupportでPickされることが多いKennen。FNCが変則的にADC で使用したり、もともとよく見かけるポジションだったTopとしても使われる。このように複数のポジションに適合するPickは「フレックスピック(柔軟なPick)」と呼ばれており、Pick & Banフェーズ序盤に取った場合、どのポジションに行くかが読めないため、相手チームのPickを混乱させることができる。こうしたPickとしては他にもLulu(Top/Mid)などがあるが、今大会ではなんといってもKennenの動向から目が離せないだろう。

 

Siegeの鍵となるMidレーンの選択

今大会、Siegeの鍵となっているのは明らかにMidレーンのチャンピオン選択である。大会前半はAzirやLuluといった、自衛能力があり相手のコントロールに長けたチャンピオンが多用されていたが、Azirは側面を突かれてバーストで大ダメージをもらってしまうと生き延びることができないことから、カウンターとして出入りの得意なアサシンであるLeBlancを当てられる傾向にある。ところが、LeBlancはある程度育つまでレーンをプッシュする能力に欠けるチャンピオンだ。

そこで準々決勝から活躍が見られているのが、Veigarである。Veigarはトレードマークである広範囲のスタン能力により、Tower周辺でのゾーンコントロール力が非常に高い。また「ミニオンを殺せば殺すほど魔法攻撃力が高まる」という堅実なプレイで自分を強化していく能力も持っている。そして極めつけに、Ultimateは相手のAP(魔法攻撃力)をダメージに変換して相手自身に食らわせるという、アンチAPチャンプなのだ。レーンをプッシュしづらいAPアサシンであるLeBlancは、序盤を生き延びたVeigarに対し、かなりつらい戦いを強いられるようである。

 

Gragas使用不能の影響

Fnatic vs. Edward Gaminの第二試合では、Gragasに「Qで設置した樽を任意爆破できない」というバグが発生し、完全再試合となってしまった。準々決勝の全試合が終了した後、「このバグは再発するおそれがあるため、準決勝以降の試合ではGragasを使用不可とする」という告知が行われた。Gragasは今大会のメタでJungleとして優先度の高いPickであり、使用不可となれば、今後の試合には大きな影響が及ぼされるだろう。

今大会のJungleは万能であるEliseがまず優先的なPickとみなされており、ついでGragasやRek’Saiが選択されるという状況であった。Gragasが消える準決勝以降は、これまでほとんどの試合でBanされてきたGangplankや、赤チームにとってはBan必須であるMordekaiserのプレイが増えるのではないだろうか。Ban必須のチャンピオンが強力でないわけがない。また、EkkoやJarvan IV、Rengarといった、別の選択をするチームも出てくるかもしれない。また、Gragasが使用不可の状況では、EliseとRek’SaiをBanしてしまえば、Jungleはそれ以外の手札を強いられることになり、事前に得られた情報や準備が重要になるだろう。Jungleの選択はチーム構成にも大きな影響を与えるため、注目度の高いポイントだ。

グループステージのパリ、準々決勝のロンドンを経て、準決勝はベルギーのブリュッセルに場所を移して行われる。日本時間10月24日23時30分より、まずはOrigen vs. SK Telecom T1の対戦カード。翌日10月25日22時30分からは、Fnatic vs. KOO Tigersの試合が行われる。

 

欧州の雄Origenは神殺しを成し遂げられるだろうか。それとも、ヨーロッパ勢はがここで姿を消してしまうのだろうか。

なお、準決勝からはLJL主催の日本語実況解説も配信される。英語配信では試合の状況がよくわからなかった向きは、こちらで日本語の解説を聞きながらの観戦を強くおすすめする。

 

[執筆協力: ユラガワ@Wired-Lynx]

Sawako Yamaguchi
Sawako Yamaguchi

雑食性のライトゲーマー。幼少の頃からテレビゲームに親しむが、プレイの腕前は下の下。一時期国内外のTRPGに親しんでいたこともあり、あらゆるゲームは人を楽しませるだけでなく、そのものが出発点となって人と人を結びつけ、新しい物語を作る力を持っていると信じている。2012年から始めた『League of Legends』について、個人ブログやTwitterにて日本語で情報発信を続けている。

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