『カプコンアーケードスタジアム』の『ストII』ステージ背景に変化発生。旗に関連した政治事情に配慮か
カプコンは2月18日、『カプコンアーケードスタジアム』をNintendo Switch向けに配信開始した。本作は、同社のアーケードゲームの名作32本を収録する作品だ。『プロギアの嵐』などが国内初移植され、また充実した各種設定・機能の追加などもおこなわれている。基本的には、オリジナル版当時のままのゲームプレイを楽しめる内容となっている本作だが、一部タイトルでは新たに修正が施されていることが判明。ファンの間で議論を呼んでいるようだ。
オリジナル版での表現が修正されていたのは『ストリートファイターII』シリーズだ。本作には『ストリートファイターII – The World Warrior -』『ストリートファイターII’ TURBO – HYPER FIGHTING -』『スーパーストリートファイターIIX – Grand Master Challenge -』の3作品が収録されており、まずエドモンド本田のステージに変化があった。
エドモンド本田のステージというと銭湯であり、そのデザインはタイルの色味などを除き、この3作品は共通である。背景には、富士山と浮世絵風の男が描かれた壁画。勝負が決すると壁画の空が明滅し、男が「勝負あり」の札を出すアニメーションでお馴染みだ。ただ本作では、この壁画の左半分を占める空の部分が異なる。Twitterユーザーのぽめ氏による上の比較画像のように、オリジナル版では太陽と旭光が描かれていたが、本作では無地に変更されているのだ。勝利時の演出も、何もない空が黄色と赤色に光るのみである。
弊誌でも確認したところ、収録3作品すべてでこの修正がおこなわれていた。修正の理由について現時点でカプコンはコメントしていないが、壁画から太陽を排除したことから、そのデザインの使用を避ける意図があるのは明白だろう。想像するに、太陽のデザインが旭日旗を連想させるという判断があったのかもしれない。もともと普遍的なデザインとして描かれてきたものであるが、近年になって特に韓国や中国では、過去の日本の軍国主義を象徴するものとして批判を強める動きがある。カプコンは、そうしたトラブルに巻き込まれないよう自主規制した可能性がありそうだ。
ちなみに、Nintendo Switch向けに2018年に発売された『ストリートファイター30th アニバーサリーコレクション インターナショナル』では、エドモンド本田のステージはオリジナル版のままだった。一方、2017年発売の『ウルトラストリートファイターII ザ・ファイナルチャレンジャーズ』においては、旭光の無い新たな太陽デザインに変更。『ストリートファイターV』でも、それを元にしたデザインが採用されている。
前出のぽめ氏は、『スーパーストリートファイターIIX – Grand Master Challenge -』のフェイロンの変化についても指摘している。本作では、キャラクター選択時に出身国とその国旗が表示され、香港出身のフェイロンの場合は、その地域の旗がこれまで使用されてきた。オリジナル版当時は香港はイギリスの統治下にあったため、ユニオンジャックと組み合わせた旗が使用され、返還後の作品ではバウヒニアの花を描いた現在の区旗が使用される例もある。ただ、本作では中国国旗が使用されているという。
香港は中国の特別行政区であるため、中国国旗を使用することが間違いというわけではない。ただ香港では、2019年から2020年にかけて民主化を求める大規模デモが発生したことは記憶に新しい。この出来事を経て、本作にて区旗ではなくあえて中国国旗を使用したことから、Redditなどでは何らかの配慮がなされたのではと受け止めるファンが多いようだ。
『スーパーストリートファイターIIX』では、ザンギエフがソビエト連邦出身のまま当時の国旗を使用していることから、フェイロンの中国国旗が際立って映った側面もあるかもしれない。なおフェイロンは、過去に『ハイパーストリートファイターII』でも中国国旗を使用していた。これは香港返還から間もない時期にリリースされた作品という事情があった可能性がありそうだ。
実は、先述した『ウルトラストリートファイターII』においても、フェイロンは中国国旗を使用している。また、ザンギエフはのちのシリーズ作ではロシア出身に変更されているが、『スーパーストリートファイターIIX』をベースにする同作でもロシア出身。カプコンは時代や情勢に合わせて、過去作の移植であってもコンテンツの表現を調整していることがうかがえる。
『カプコンアーケードスタジアム』は、Nintendo Switch向けに配信中だ。