インディーゲームの作曲家、自身の楽曲関連の著作権侵害通知を動画配信者に送らぬようYouTubeやTwitchにお願い
ダークファンタジーRPG『Darkest Dungeon』のサウンドトラックを手がけたミュージシャンStuart Chatwood氏は12月3日、YouTubeのTwitterアカウントあてにツイートを送信。『Darkest Dungeon』の動画を配信するストリーマーに対し、Chatwood氏の楽曲使用を理由とした著作権侵害通知を送らないよう要請した。同日、Twitchに対しても、楽曲使用を許可する旨の連絡をおこなったと伝えている。
Chatwood氏は、『Darkest Dungeon』のゲームプレイ映像投稿および動画によるマネタイズ化を許可しており、動画配信プラットフォーム側から動画配信者に向けて著作権侵害通知が送られるのは、権利者として望んだ対応ではないことを告げている。動画説明欄にクレジット表記があれば嬉しいが、表記がなくても同氏の楽曲についてマネタイズ化OKというスタンスに変わりはないという。
Chatwood氏はカナダのロックバンド「The Tea Party」のメンバーであり、主にベース/キーボードを担当している。バンドとしての活動とは別途、ゲームサウンドトラックのコンポーザーとしても仕事を受けており、『Darkest Dungeon』のサウンドトラックのほか、Ubisoftの『Prince of Persia』シリーズ8作品にて作曲を担当してきた。
同氏はTwitter上で、楽曲使用に関する自身の考えも発信しており、動画配信者はすでにゲームを購入してお金を支払っているのだとコメント。仮に楽曲権利者がロイヤリティ料を受け取りたいのであれば話は別だが、Chatwood氏が手がけた『Darkest Dungeon』の楽曲利用に関しては、権利者であるChatwood氏が不問としている。しかしながらChatwood氏のもとには、ここ最近になって急に『Darkest Dungeon』関連動画のマネタイズ化が止められたと、コンテンツクリエイターから報告が寄せられ始めていた。
Chatwood氏はYouTubeだけでなく、DistroKidのTwitterアカウントに対しても、著作権侵害フラグを立てないでほしいとツイートしている。DistroKidは、ミュージシャン向けの音楽配信仲介サービス。SpotifyやiTunes、Amazonなど複数の音楽配信・販売プラットフォームへの楽曲アップロード業務を定額料金でおこなってくれる。察するにChatwood氏も同サービスを活用しているものの、著作権侵害フラグは立てなくていいという意向が伝わっていなかったのだろう。そのほか、デジタル販売プラットフォームで発生したロイヤリティ料の徴収代行をおこなっているAudiam社にも問い合わせたという。こうした仲介・代行業者との連携がうまくいっていなかったとも考えられる。
*現在開発中の『Darkest Dungeon 2』ティザー映像
ゲーム内楽曲の著作権は、動画配信にあたり何かと問題になりがち。使用許諾を得ていない楽曲を含む動画のマネタイズ停止や、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づく楽曲の削除要請などにつながりうる。Twitchでは今年5月ごろから、大手レコードレーベルより毎週数千件のDMCA通知を受け取り始め、法に則り指摘されたコンテンツの削除を余儀なくされた。こうした動きを受けてTwitchは、ゲーム配信中に音楽を再生しないことを推奨している。また楽曲関連のトラブルを回避するため、最近ではストリーマーモードなどの名称にて、著作権保護された楽曲をオフにする機能を設けるゲームも増えてきている。12月に発売される『サイバーパンク2077』もそのうちのひとつだ(関連記事)。
Chatwood氏のようにゲーム内楽曲が流れることを許容している場合でも、仲介・代行業者など無数の関係者が絡み、権利者の意図に反して著作権侵害判定がくだされることもある。今回は権利者が早い段階で気づきアクションを起こせたが、そうではないケースも発生しうるだろう。なお、Chatwood氏が楽曲利用を認めているのは、『Darkest Dungeon』を遊んでいる際に楽曲が流れる場合の話。「ほかのゲームを配信しながら、BGMとして『Darkest Dungeon』の楽曲を使うのはOKですか」という質問に対しては、あくまでも『Darkest Dungeon』をプレイする際にゲーム内音楽として流れる場合が許可対象であると回答している。
ゲームの開発元であるRed Hook Studiosは続編となる『Darkest Dungeon 2』を開発中。2021年にPC版(Epic Gamesストア)の早期アクセス配信を開始する予定である(関連記事)。Chatwood氏もコンポーザーとして続投。来年、『Darkest Dungeon 2』をユーザーのもとへ届けられる日が待ち遠しいとTwitter上で伝えている。また『Darkest Dungeon 2』発売時には、ロイヤリティフリーの楽曲も出す予定とのことだ。