『アサシン クリード ヴァルハラ』先行プレイレポート。伝統を引き継ぎつつも出すべき色は鮮明に、正当進化を遂げるシリーズ最新作

『アサシン クリード ヴァルハラ』先行プレイレポート。『アサシン クリード ヴァルハラ』は、伝統を引き継ぎつつも出すべき色は鮮明に、正当進化を遂げるシリーズ最新作。11月17日発売予定。

【UPDATE 2020/07/14 10:45】
仕様の認識誤りにともない、記事内にある「装備品には耐久値の概念があり、長いこと同じ武器を振り回していると破損し消滅してしまう」との記述内容を削除。武器のアップグレードは存在するが、耐久値や破損・消滅といったシステムは存在しない。

【原文 2020/07/13 5:10】
今年のホリデーシーズンに発売予定のオープンワールドアクションRPG『アサシン クリード ヴァルハラ』。今回はUbisoft日本支社にて、メディア向けのハンズオン・イベントに参加させていただくことになった。ストーリーラインの一部を体験する4時間ほどの試遊会。本記事ではアクションとナラティブ、その両面から、垣間見えた作品の魅力をお届けしたい。

『アサシン クリード ヴァルハラ』は、10年以上にわたり発売され続けている「アサシン クリード」シリーズ最新作。戦乱荒れ狂うヴァイキング時代を舞台に、プレイヤーはヴァイキングの長「エイヴォル」として、自らの、そして部族の栄光を掴み取るべくイングランドへと進出していく。11月17日発売予定で、対応するプラットフォームはPlayStation 5/PlayStation 4/Xbox Series X/Xbox One/PC/Stadiaである。

『オリジンズ』からの伝統を継承するアクションシステム


率直に言ってしまうと、『アサシン クリード ヴァルハラ(以下、ヴァルハラ)』のゲームシステム、主にアクション部分における基本骨子は、今回の試遊版で確認した限りにおいて、『アサシン クリード オデッセイ(以下オデッセイ)』の時代から大きな変化を見せていない。さらに言えば、本作の制作スタジオであるUbisoftのモントリオールスタジオが作り上げた『アサシン クリード オリジンズ(以下オリジンズ)』を、システムのベースにしていると言ったほうが正しいかもしれない。

ボタンひとつでほとんどのモニュメントに登頂可能なフリーランシステムや、相棒の鳥類(今作では北欧神話にちなんでワタリガラス)の視点を通じてワールドを俯瞰できるマーキングシステム。ステルスを織り交ぜながら、武器ごとに用意されたモーションで敵と戦っていける三人称視点の戦闘アクション。『オリジンズ』において誕生した新たな伝統が、『オデッセイ』を経て本作にもまるごと継承されている。しかしそれは単純移植という安易な仕様ではなく、シリーズ最新作の名に恥じぬ進歩を伴っていた。

スキルツリー画面。開発段階のビルドよりキャプチャー


まず特筆すべき点は、レベル制のシステムが完全に撤廃されていた点だろう。これに準ずる形で、スキルシステムやアビリティをはじめとする主人公の強化方法も変化している。『オリジンズ』から登場し、『オデッセイ』にも引き継がれたレベル制は、ステルスアクションゲームからオープンワールドRPGへの路線変更を象徴するものであり、同時にゲームを長期的にプレイしてもらうため、プレイヤーのゲームスピードをコントロールする役割を果たしていた。

その一方で「オープンワールドゲームにも関わらず自由な散策ができない」「装備の制限がある」など、プレイの幅を制限するという部分で、少なからず不満を呼んだシステムでもあった。「エンディングまでかかる時間が長すぎる」という批判から、Ubisoftが改善の方針を示したことは記憶に新しい。今回このレベル制がなくなったことにより、プレイヤーは数字の枷から解き放たれ、世界の自由な散策が可能となっている。今回は試遊版ということでアクセスできるエリアは制限されていたものの、用意された場所には自由に赴くことが可能となっていた。

スキルシステムは装備の「色」に準拠したスキルツリー・アンロック方式へと変化した。本作の武器や防具には「赤(ベアー)」「青(ウルフ)」「黄(レイヴン)」という3種類の色が振り分けられており、たとえば「青」カテゴリのスキルをアンロックすると、同色の武器・防具の効果が上昇する仕組みとなっている。また『ヴァルハラ』からの新要素として、二刀流が可能。同時に異なる色の武器を装備することもできるため、「赤」と「青」、両色の武器の効果を満遍なく高めるようにスキルツリーを解除していくのも育て方のひとつだ。もちろん右手と左手それぞれにアクションが振り分けられており、同じ武器種でも持ち手によって発動するアクションは異なる。ゆえに、スキルとアクション、両者のさまざまな組み合わせを試行錯誤する楽しみが生まれているというわけだ。

戦闘中にアドレナリンゲージを消費して発動するアビリティに関しては、ワールド内に隠されたアイテムを入手することで開放されていく。強化に関しても同様だ。また本作は前作までにあった体力の自動回復機能が存在しない(消費アイテムによって回復)。勇猛果敢に戦場を駆けるだけでなく、ときに隠密に徹するなど冷静な判断も必要である。戦闘中の描写に関しては、水風船のように頭を叩き潰したり、両手に持った斧の刃で敵をはさみ持ち上げたりなど、スプラッタ的な演出が増加し、グロテスクな爽快感が旧作品よりも一段と増している。バイキングの豪快さ、時代特有の野蛮さが全面に出た優れた表現と言えるだろう。

個ではなく群として挑む拠点制圧ミッション


次に注目したいのは、個ではなく群であることを強く要求するようになった拠点制圧ミッション「襲撃」の存在である。初代『アサシン クリード』から存在する拠点制圧ミッションは、プレイヤーがフィールドに点在する砦や城といった建造物に潜入し、ターゲットの殺害や特定アイテムの奪取などを行うというものだった。だが作品を重ねるたびにアクションの幅こそ広がりはしたものの、ミッション達成までの過程は「ひとり忍び込む」ことから変化を見せず、そのためシリーズにおいては使い古された手法であるという印象が拭えなかった。そうして本作から追加された「襲撃」は主人公がバイキングの長という設定と、戦争中という時代背景を活かし、これまでの単独潜入から隊を率いて拠点を侵略するという形式に様変わりしている。なお『アサシン クリード ブラザーフッド』などで見られたような、部下による戦闘サポートとはまた異なる内容であるということに留意してほしい。

「襲撃」には通常の「レイド」タイプと、大規模な作戦を実行する「強襲」タイプが存在する。今回の試遊においてはどちらも体験することが出来たが、本稿では「強襲」をメインに扱っていく。なお試遊版の中で「強襲」はメインストーリー攻略中のイベントとして発生している。「強襲」がサブクエストなど、特別な条件下でしか発生しないゲームプレイなのかは現時点で不明である。

「強襲」は角笛を吹き舟を呼び寄せ、仲間と共に敵の砦に接近するシーンからスタートする。砦からは随時こちらにむけて火の矢が降り注ぐため、盾を使ってタイミングよく防御をする必要がある。これは『オリジンズ』や『オデッセイ』における海戦と似た仕様となっている。無事浜までたどり着けば侵攻はスタート。破城槌を用い幾重にも張られた城門を突破することになるが、陸から空から敵が猛烈な妨害を仕掛けてくる。自らの腕だけでなく、火薬樽や落石など、ステージギミックをフル活用して隊が消耗する前に片をつけよう。

ここで肝となるのは、「一番効率よく城門を破壊する」「破城槌に向けた遠距離攻撃を防ぐ」にはプレイヤーが破城槌の作業に加わる必要があるのだが、その間直接攻撃からは完全に無防備となってしまうのはもちろんのこと、戦っている味方NPCを守ることができなくなるということだ。本作のレベルには「味方に手伝ってもらい巨大な宝箱をあける」、「隊員を扉前に配置し、一斉に突入する」などといった、味方がある程度生存していることではじめて起動可能なギミックが多数盛り込まれており、味方をいかに守り生き残らせるかが重要となっている。

逆に前線を彼らに預け、自分は裏から奇襲するという戦法も採用できる。味方は本作からの新システム「同盟」により加わり、強化が可能となっているが(試遊版では未実装)、戦場で倒された場合、ロストしてしまうのかはわかっていない。ある程度侵攻に成功すると、いわゆる中ボスクラスの敵が出現。これを討伐していくと、ボスや宝箱が出現し、これを抹殺/奪取することでクリアとなる。なお通常の襲撃では舟での移動や攻城兵器を用いたシークエンスは存在しない。ひたすら敵を掃討しつつ、仲間とギミックをクリアし、目標を達成していくという内容となっている。

『ヴァルハラ』のゲームシステムに関しては現状確認できる限り、前作のシステムを大枠として流用している部分も含め、シリーズタイトルとして非常に手堅くまとまっている。評価された部分は引き続き活かし、良くも悪くも奇をてらうことをせず堅実にブラッシュアップに努めている。だが今回プレイしたのはあくまで試遊版。隊員の育成や主人公のビジュアル変更などが可能になるという「定住地」システムを含め、まだまだ体験していない要素は山程存在する。製品版が発売されたあかつきには、そういった未知の部分を含め改めて評価してみたいところだ。

観光ゲーとしての期待も充分な世界観描写


『アサシン クリード』シリーズの醍醐味はなにもアクションだけではない。歴史ドラマという題材を活かした、作品ごとに特色有る優れた世界観描写は欠かすことの出来ない魅力といって差し支えないないだろう。第三回十字軍期にはじまり、ルネサンス、アメリカ独立戦争、海賊黄金時代、フランス革命、ヴィクトリア朝時代、そしてプトレマイオス朝期のエジプトに古代ギリシアと、Ubisoftはその卓越した技術と熱量でもって、モニターの前に鎮座するプレイヤーをさまざまな時代そして世界への旅路にいざなってきた。『ヴァルハラ』もまた然り。試遊版でありながら、舞台となるヴァイキング時代の風景と文化を美しく、そして楽しめる形で充分に再現していた。

ヴァイキング時代とは8世紀から9世紀、武装船団、通称「ヴァイキング」たちが西ヨーロッパ沿岸部を侵略していた時代。本作では9世紀のイングランドが主な舞台となる。当時のイングランドは七王国間の戦争による爪痕と、度重なるヴァイキングの侵入によって荒寥たる世界と化しており、ゲーム中でも村は荒れ果て、城は朽ち、それでもなお民は力強く生きようとしている様子が細かな描写を通じて伝わってくる。そんな現状を前にしても、「国破れて山河あり」とはよく言ったもので、自然はあいも変わらず美しい。試遊版で訪れることになった湿地と森林が混在する風景は華やかさこそ無いが、激情を振るうヴァイキングが作り出す映像美とは対象的に、小鳥や動物の鳴き声が木々の間をこだまする、穏やかな美を内包していた。

開発段階のビルドよりキャプチャー


一方、文化の表現としては、主人公含めたヴァイキング特有の衣装やフェイスペイントを見ることができることは当然として、「ロングハウス」と呼ばれる船をひっくり返したような曲線の屋根を特徴とする住居が確認できる他、露店には解体したての肉塊が吊るされ、果物と合わせ巨大な魚がまるごと山積みで売られていたりと、当時の食文化を想像させる。生活用品、特に食に関わる描写は歴史を描く上で欠かせない要素であると筆者は認識しているため、『オリジンズ』では作中パンが販売され、『オデッセイ』ではワインが作られていたように、『ヴァルハラ』でもこういった部分に力を入れてくれていることは評価したい。

メインストーリーでは、ある地域にヴァイキングに味方する王を擁立するという流れのもと、彼らなりの結婚式に関する描写も見ることができた。血と酒と性を浴びて生活しているという偏見を抱かれがちなヴァイキングではあるが、人生の節目に訪れる幸福の瞬間には時代や国を越えた普遍性が感じられた。もちろん前作に引き続き、プレイヤーの選択によって物語の展開は変化する。誰を殺し、誰を生かし、エイヴォルが誰と共にあるのかは、プレイヤーの判断にかかっている。

開発段階のビルドよりキャプチャー

また受動的に鑑賞するだけではなく、ミニゲームを通じて能動的に楽しむことも可能となっている。今回の試遊では酒飲み勝負や、酔った状態での射的といった豪快かつフランクな遊びだけでなく、現代のラップバトルに近い、口論詩という文化に即したゲームを体験することができたほか、卓上で遊ぶようなゲームも用意されていた(試遊版では遊べなかった)。

その中でも私が個人的に面白いと感じたのが口論詩で、制限時間内に次々と表示される三択の中から正しい選択肢を選び続けていく。正解は語感であったり韻の踏み方から類推する必要があり、試遊版は英語表記だったため中々に難しく、それでいて楽しめた。ちなみに回答を間違えて戦いに負けてしまった場合、「うるさい!黙れ!」などと非常に情けない文句を吐きつつ、賭け金も失うという、バイキングの長としてのメンツが丸つぶれする事態に陥るため注意が必要である。

このほか今作からの追加要素として、オープンワールドゲームには馴染みの遊びになりつつある、「釣り」が追加された。紐の先に餌を取り付け水場に放り込むという原始的なもので、イングランドらしくナマズなどを釣り上げることができる。

手堅い楽しさを提供するゲームシステムとは裏腹に、ナラティブは『ヴァルハラ』らしさフルスロットルでプレイヤーを楽しませる。限られた時間内、限られた要素のみであったが、ヴァイキング時代特有の文化、当時のイングランドの景色を堪能することができた。製品版にてヴァイキング時代の何を見、何を感じることができるのか期待がかかる。

総じて続編タイトルとして正当進化を遂げているという印象を受ける本作。新たな伝統そのままに手触りを大きく変えず、それでいて出すべき色は鮮明に。シリーズ最新作にふさわしい楽しみを提供してくれることを期待し、発売日を迎えるのが待ち遠しい限りだ。

*開発者による30分間のウォークスルー映像

Takayuki Sawahata
Takayuki Sawahata

娯楽としてだけではなく文化としてのゲームを知り、広めていきたい。ジャンル問わず死にゲー、マゾゲー大好き。

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