期待の対戦FPS『VALORANT』韓国CBTプレイレポート。極めて現代的に洗練された新時代のタクティカルシューター
ライアットゲームズの新作FPS『VALORANT』。現在いくつかの地域でクローズドベータテスト(CBT)が開催されており、5月5日からは韓国でもテストが始まり、7日からはメディアやインフルエンサー対象に日本からの参加も解禁された。本稿ではこの『VALORANT』のコンセプトや特徴の紹介と、実際に韓国CBTに参加してのプレイフィールをお届けする。
『VALORANT』はいわゆる「爆破ゲー」に分類される対戦FPSとなっている。おおまかに、攻撃側は爆破目標に爆弾を設置し解除されなければ勝利、防衛側は100秒間爆弾が設置されない、もしくは設置された爆弾の解除に成功することで勝利となる。ラウンド中のリスポーンはないためどちらかのチームが全滅しても基本的には終了。1試合は25ラウンドの13ラウンド先取で構成されていて、12ラウンド時点で資金等はリセットされ攻守が入れ替わる。これらの一般的な爆破ゲーのルールに加えて、『Apex Legends』や『Overwatch』のようなキャラクター固有のアビリティシステムも存在し、いわゆるヒーローシューター系のゲームにもなっている。
本作の最大の特徴は、その徹底的な競技性の追求にある。ネットコード、アビリティ設計、マップデザインなどゲームの細部に至るまで公平性とプレイヤースキルの反映が意識されている。オンラインでの対戦が基本となる本作では遅延による影響を最小限に留める努力がされており、クライアントで表示されるキャラクターのヒットボックスと実際のサーバーで判定されるヒットボックスにズレがないような最適化と、チックレート128Hzのゲームサーバーが用意されている。また、“ラグい”プレイヤーもサーバー側で動きを補完することによって、他プレイヤーへの影響がなるべく出ないように配慮されている。ゲーム自体の要求スペックも低く抑えられており、ハイパワーなマシンでなくても安定したフレームレートを確保することが可能だ。
アビリティデザインについて、すべてのキャラクターは同一の体力とヒットボックスを有する。体力面のスペックに違いがないということだ。このため、プレイヤーは純粋に固有アビリティのみを考慮してキャラクターをピックすることになる。また、アビリティについてもあくまで射撃の補助という位置づけがされている。FPSの2大要素である「立ち回り」と「エイム」において、アビリティはあくまで立ち回りを補強してくれるもので、最終的にはエイムがものをいうというゲームデザインが目指されている。なお、アビリティはキャラクターごとに4種類用意されており、うち1つは毎ラウンド使用可能なもの、2つは銃や装備と同じようにラウンド開始時に資金を投じて購入するもの、そして最後のひとつがいわゆる「アルティメットスキル」で、キルやマップに設置されているオーブの取得などで得られたポイントに応じて使用可能になるものとなっている。
ここからは実際にプレイした経験から『VALORANT』のゲームデザインについての感触を述べていく。『Counter-Strike: Global Offensive』に代表される爆破系のタクティカルシューターと、『Overwatch』に代表されるヒーローシューターをあわせたようなゲームと表現されることが多い本作だが、感触としては8割『CS:GO』、2割『Overwatch』くらいの塩梅となっている。特に交戦時間の短さはまさにタクティカルシューターそのものとなっていて、装備にもよるが頭を抜かれればほぼ即死である。また、移動中は銃の精度が著しく落ち、撃たれている間は移動速度が低下するという2つの仕様が存在する。このためポジショニングが非常に重要で、敵の捕捉が遅れた状態から逆転して撃ち勝つようなシーンはかなりレアだ。しかし真正面からの撃ち合いではエイムに長けたプレイヤーが圧倒的に有利であることは間違いなく、鋭いエイム力を持つ相手には基本的に敵わないながらもポジションアドバンテージを取った時には確実に落とせる、というバランスが非常によく出来ていると感じた。アビリティの使い方次第でこのポジションアドバンテージを作り出しやすくなる点も、必ずしもエイム一辺倒のゲームとならない奥深い要素につながっている。
アビリティは「あくまで射撃の補助となるもの」となるようにデザインされているとは言ったものの、実際は地点指定で衛星からの攻撃を行うブリムストーンのアルティメットスキルやロケットランチャーを放つレイズのアルティメットスキルなど、ダメージを伴う強力無比なアビリティも存在する。こういったアビリティを巡った攻防などはかなりヒーローシューターを彷彿とさせる。
『VALORANT』はカジュアルマッチでもマッチングレートがしっかりと機能している。同じくらいゲームに不慣れなプレイヤー達と当たるレート帯では、独特のゲームバランスが形成されていたように思われる。まず、このレート帯では防衛側が相当有利に感じられた。攻撃側は連携を取ることが前提のゲームバランスとなっており、VCもしていなければ全員が雰囲気で動いている状態では防衛側がシンプルに2-1-2でガン待ちしているだけでもなかなか崩せない。このため、先に防衛を引いてラウンド勝敗がトントンの時は、後半ラウンドは全く歯が立たないといったことも多かった。常に綿密な連携が取られる競技シーンなどで、どういうバランスになるかについては、現時点では筆者には想像もつかない。
銃撃戦に関してはリコイルとストッピングに慣れていないプレイヤーが多いためか、スナイパーが猛威を振るう場面が多かった。スナイパーは胴でも150、脚でも127という高威力を誇るため、エイムを置いて待つことが出来る場面では非常に強く、またラウンド後半で雑な撃ち合いになってもARやSMGが中々当ててこないので落ち着いて一発だけ当てて勝ち、といった場面が多く見受けられた。なおストッピングに関しては『CS:GO』のように逆方向キーを押すシビアな操作が求められるわけではなく、単に移動キーを離せばほぼ成立する。また、スナイパーに関してはストッピングが出来ている時はクロスヘアに赤い点が出現するため、より分かりやすくなっている。
総じて、『VALORANT』は非常にゲームコンセプトが明確で、作り手の設計思想が伝わってくるゲームとなっている。思想とはすなわち、「これが現代のタクティカルシューターだ」というものである。古臭いという印象はありつつも、しかし今でもその完成度が保証され続けている爆破ルールのゲームを、『VALORANT』は現代的にブラッシュアップさせることに成功しているという感想を持った。競技FPSといえばやはりこうでなくては、という作り手たちの意思と信念が確かに感じられるタイトルだ。COVID-19の影響で日本での展開は若干遅れているようでベータテストの日程等は未定となっているのが残念だが、この新時代のタクティカルシューターでバトルロイヤルゲームなどから一度立ち返ってみるのもいいのではないかと思う。