『The Last of Us Part II』では“べつに犬を殺さなくてもいい”。だが、それを選択できるかどうかはあなた次第だ
来月6月19日に発売を控えるPlayStation 4用タイトル『The Last of Us Part II』。前作ではエリーとジョエルの「愛(Love)」を描いていたのに対し、続編は「憎悪(Hate)」そして「暴力のサイクル」がテーマになることが以前より語られてきた。ところが今、ゲーム内のある「暴力」要素が取り沙汰されている。それは「『The Last of Us Part II』でプレイヤーは犬を殺さなくてはいけないのか?」という問題だ。そしてすでに答えは明確に出されている。ノーだ。
ことの発端はTwitterにおける投稿だった。あるツイートが、「『The Last of Us Part II』の販促メールに書いてあった」として何らかの文書の一部分をスクリーンショットで掲載。そこには、本作の特徴について説明するショッキングな内容が記されている。「犬は本作における重要な新要素である」「エリーの匂いを嗅ぎつけて攻撃してくることがあるため、生き延びるために彼らを殺すことは避けては通れない」「それぞれの犬には飼い主がおり、オーナーはペットの亡骸を見ると泣きながらその名を呼びかける」。
https://twitter.com/deathcab4booty/status/1258272469246283777
この文書を掲載したツイートは大きく注目を集め、5月8日時点で5000件近くのいいねを獲得している。リプライ欄には犬に対するむごたらしい仕様に対して不快感を示す声もあれば、「暴力」の重さを提示する本作のテーマに合致したものだと異を唱えるユーザーも出現。良くも悪くも大きな反響を呼ぶこととなった。
すでにジョエル役を演じる俳優Troy Baker氏は、『The Last of Us Part II』は評価が綺麗に分かれる作品になることは間違いないと述べている。その端緒がはしなくも「犬殺し」議論に表れた……といいたいところだが、この件にはひとつ問題があった。掲載されている文書は「『The Last of Us Part II』の販促メール」とされているものの、いったいそれがNaughty Dogから送られてきたものなのか、はたまたソニー・インタラクティブエンタテインメントからリリースされたものなのか、詳細がようとして知れなかったのだ。
そして、本件についてNaughty Dog側がオフィシャルに言及することになった。同社のコミュニケーションディレクターであるArne Meyer氏が、問題のツイートを引用して明確に公式の関与を否定したのだ。同氏のツイートによればNaughty Dogは該当の販促文を直接書いたわけでもなければ、関わってすらいないという。
Meyer氏は「ソースについて言及のない、文脈から切り抜かれたスクリーンショット」に対しての注意を喚起。信用する前に、まずGoogleで検索してその信憑性を確かめることを呼びかけている。
So @naughty_dog didn't write or assist writing this.
Don't appreciate out of context screenshot crops without mentioning the source. Folks, please google these things!
This text came from an independent editorial post from a retailer. It's on their website. https://t.co/nh3nw1StOa
— Arne Meyer (@arnemeyer) May 7, 2020
思わぬ誤解を招いた販促文だが、いったいその出典はどこだったのか。Meyer氏によればコピーの出どころは、アメリカ最大のビデオゲーム販売チェーンGameStopにおける『The Last of Us Part II』のページだったという。本作の購入予約画面にて上記の販促文が掲載されていたとのことだ。問題となったページについては、こちらから4月30日時点のアーカイブを閲覧することが可能だ。本作の注目すべき新要素として「犬」「パズル」「洗練された回避ボタン」の3点を挙げる、やや独特の販促を確認することができる。
かくして『The Last of Us Part II』における「犬確殺」説はかたがついた。しかし、だからといって愛犬家が安心して本作を遊べるかというと、そんなことはなさそうだ。
海外メディアのPolygon記者のRuss Frushtick氏は同作における犬の危険性と、追跡から逃れることの困難さについて詳細に記した。また、Naughty Dogの共同ゲームディレクターであるAnthony Newman氏は作中における犬の描写について語っている。曰く、『The Last of Us』を遊ぶうえで体験の核となるのは“regrettable violence(痛ましい、後悔すべき暴力)”である。犬が襲いかかることでプレイヤーを痛ましい状況に追い込むことは、まさしくそうした感情を加速させるものだ。
『The Last of Us Part II』においては、すべての人間に名前が与えられている。それは道を阻む一介のモブとて例外ではない。敵を撃ち殺せば、仲間が悲痛な声でその名を叫びながら遺骸に駆け寄る。本作における戦闘は常に他者の命を奪うことの痛みをともなっているのだ。そして敵対者がただ1匹の犬になったときも、その重さは変わらない。
ディレクターのNeil Druckmann氏は別の海外メディアThe LA Timesに対し、「犬を1匹たりとも殺さずにクリアすることも可能だ」と語った。しかしながら、その道は非常に困難で避けがたい葛藤に満ちている。犬が命を落とした際の痛々しい描写についてはチーム内で深く議論が交わされたという。「断末魔を取り除いてマイルドな表現にするか」といった検討もなされたようだが、最終的には「暴力のサイクル」を描く本作においては欠かしえない表現として残されたようだ。
小売店のちょっとしたミスから明るみに出た、犬と殺戮の問題。小さな切り口ではあるが、その断面からは本作がたたえる切実なテーマがあらわになった。PlayStation 4用タイトル『The Last of Us Part II』は6月19日に発売予定だ。