止まらないSteamへの「クリッカー」ゲーム侵略。『Sakura Spirit』のクリッカー版も登場、複数の作品がトップチャート上位に
2015年5月に登場した『Clicker Heroes』を皮切りに、Steamへの「クリッカー」ゲーム侵略が止まらない。6月には2作品、さらに7月にはもう2作品がリリースされ、Steam Greenlightにもクリッカーゲーム1作が登場している。興味深いのは、今年リリースされたクリッカー系ゲームのうち4作品が、Steamの同時プレイヤー数のランキングチャートTOP100にランクインしている点だ。ただクリッカーゲームが増加しているのではなく、プレイヤーたちもこれらのカジュアルなゲームを受け入れつつある。
クリッカーゲームは、2013年に国内外で流行した『クッキークリッカー』などを代表作とするゲームジャンルだ。「ただクリックしてゲームを進めてゆく」というゲームデザインが特徴であり、ヘッドショットを決めるようなスキルも、小難しい戦略を考えだすような知恵もプレイヤーには必要ない。『クッキークリッカー』であれば、基本的にプレイヤーはただクリックしてクッキーを生産するだけ。自動的にクッキーを生産してくれるおばあちゃんを雇ったり、工場を建設したりして、特に目的も無くより大量のクッキーを生産してゆく。
Steamにて最初に登場したと見られるクリッカーゲームは、2015年3月にリリースされた『AdVenture Capitalist』である。資本家であるプレイヤーがさまざまな事業を展開し、とにかくお金を稼ぎ続けるというゲームだ。現在Steamでは同時プレイヤー数のトップチャートTOP20位付近に常時ランクインしているほか、Steamユーザーからは1万6000件以上のレビューが寄せられている。これはAUTOMATONが5月に確認した約9000件のレビュー件数から、3か月足らずで7000件以上の伸びを見せている。
クリッカーゲームでも特に爆発的な人気を見せているのが『Clicker Heroes』だ。今年5月にリリースされて以降、『Grand Theft Auto V』や『The Elder Scrolls V: Skyrim』などと並び、チャートTOP10付近を推移している。寄せられているレビュー数は1万5000件以上。これらの2作品に続き、6月には有料タイトルの『Tap Heroes』と、無料の『Tap Tap Infinity』が登場している。
7月に登場したのは、海外産の美少女アドベンチャーゲームとして国内でも注目を浴びた『Sakura Spirits』のスピンオフ『Sakura Clicker』だ。原作に登場したお馴染みのキャラクターたちが登場し、敵をクリックすると日本語音声で艶めかしい声をあげて身体を揺らす。まだ発売から数日しか経っていないが、現在は同時プレイヤー数のTOPチャート50位付近に位置している。国内でも美少女ゲームがソーシャルカードゲーム化し、多くのユーザーにプレイされている光景はあるが、それがSteam内でも見られるのはなんとなく複雑な心境だ。
7月には『Sakura Spirits』だけではなく、ガンシューティング要素を盛り込んだ『Time Clickers』も登場しており、こちらもTOP50位付近に位置している。またSteam Greenlightでは、ホラーテーマの『Insanity Clicker』も登場しており、150件のコメントを集めるなどなかなかの注目を浴びているようだ
Steamはけっしてカジュアルゲームがトップチャートにランクインしやすい市場ではなく、今回のクリッカーゲームの躍進は興味深い。いくつか流行の理由は考えられるが、1つはクリッカーゲーム自体の中毒性が高いという点だ。基本的に無料、あるいはF2Pにて展開されているクリッカーゲームは気軽にダウンロードすることができ、起動すると、ただクリックしアップグレードするだけのループプレイにズルズルと引き込まれてゆく。クリッカーゲームにエンディングは設定されていないが、なにかしらの「次の目標」が巧妙に用意されており、やめ時を失ってしまう。なんとかプレイを終了しても、そのあいだゲームは自動進行しているので、しばらく経つとどの程度ゲームが進行したのかが気になり、また起動してしまうことになる。
また、Steamから起動してプレイできるようになったのも、今回の流行の一因といえるだろう。Steamではほとんどのゲームを多重起動することが可能で、たとえばほかのタイトルをプレイしつつ、マッチメイキングなどの合間に様子をうかがうといった遊び方もできる。もちろん通常のインターネットブラウザでも同様のことはできるが、ゲームライブラリでふと目に入ったので1クリックでとりあえず起動しておくのと、別のブラウザを立ち上げてサイトまで繋ぐという労力は、小さいようで非常に大きい。
近年大量のタイトルがリリースされるようになったSteamだが、今後は従来のコアなタイトルばかりでなく、こういったカジュアルなゲームが流行を見せる時代がやってくるのかもしれない。