伝染病ゲーム『Plague Inc.』に「フェイクニュース」シナリオ導入。お手製の嘘情報で、人々を混乱させ世界を滅ぼす
ゲームスタジオNdemic Creationsは、PC(Steam)やモバイルにて配信中のゲーム『Plague Inc.』に、「フェイクニュース」シナリオを実装した。トップメニューのシナリオ一覧から選択可能で、ゲームを購入していれば無料で同シナリオを楽しめる。
『Plague Inc.』では、プレイヤーは危険な病原体を作り出し、世界を滅亡させることを目指す。伝染病のタイプや感染国を選び、惨事を引き起こす。こっそりと感染を進めたり、病原体を進化させたり特性を変化させたりと、うまくワクチン開発から逃れながら、頭をひねらせて全人類の感染を果たすのだ。
「フェイクニュース」シナリオは、手っ取り早く言えば、伝染病の要素がフェイクニュースになり、ワクチンが知識に置き換えられたもの。フェイクニュースの拡散経路や特性をうまく変化させながら、全世界を“デマ情報”に染めることを目指すわけだ。しかしながら、伝染病とフェイクニュースは、病気と情報と性質自体が異なっており、非なるものである。Ndemic Creationsはそういった背景を加味し、専用シナリオとしてシステムに工夫を加えている。
たとえば、「フェイクニュース」シナリオでは、プレイヤーはまずはフェイクニュース自体のマニフェストを決める。「どのようなフェイクニュース」であり、「誰」が「なんのために」「誰を対象とした」フェイクニュースを作るのか。それを決めるわけだ。選択肢は幅広く、たとえば筆者は「高齢者」が「暇つぶしのため」に「ホワイトカラー労働者」を対象とした「移民フェイクニュースを流す」というマニフェストを作成した。
ゲームの流れは、ほかの『Plague Inc.』シナリオと同じで、発生源となる国を選び、じっくりとフェイクニュースが拡散されていくのをながめる。しかし一方で、人々は着々と知識を獲得していき、ファクトチェック値が一定まで達すればフェイクニュースは撲滅されてしまう。そのため、フェイクニュースの拡散経路や特性を決め、知識を得させないために、デマ情報を進化させていく。拡散経路はネットメディアなのか、TVメディアなのか。ラジオを使うこともいいだろう。インフルエンサーを重用することで、拡散スピードを上げていくのも手だ。
並行して、フェイクニュースの特性を変化させていく。話に尾ひれをつけていくことでストーリーを変化させたり、フェイクニュースのファクトチェックをする人を批判することで知識人のモチベーションを減退させたり、論点をずらすことで批判派を打ち負かしたり。基本的に、情報の受け手のリテラシーを低めていくところが、性質変化の特徴である。拡散力・妥当性・コミュニティ。この3つのパラメータを上昇させていくことで、フェイクニュースの影響力は強まっていく。そうして最終的に全世界を、お手製のデマで染め上げるのだ。
なお同シナリオは、イギリスの独立系ファクトチェック機関Full Factの監修を受けているとのこと。同機関のこれまでの経験の中で、誤ったファクトや過激な情報が、どのように広まっていくか。そしてそれらが私達の生活にどのような悪影響を与えるのか。そうした注意喚起が、『Plague Inc.』の追加シナリオのギミックに盛り込まれているとのこと。
『Plague Inc.』といえば、今年2月に「ワクチン反対派」を登場させるシナリオを追加すると発表していたが、2019年12月6日時点で実装は確認できていない。人々が科学を信じなくなる「科学の否定」という似た性質のシナリオは存在するので、そちらを楽しんでみるのもいいだろう。今回の「フェイクニュース」シナリオもNdemic Creationsらしい、問題提起と風刺の含みをもたせた、なかなか過激な内容になっている。