『CoD:MW』にてレビュー爆撃が発生中。キャンペーンモードでのロシア軍の表現に、ロシアゲーマーから批判集まる

『CoD:MW』にてレビュー爆撃が発生中。Metacriticの『CoD:MW』ユーザーレビュー欄に、キャンペーンモードでのロシア軍の表現に関して、ロシアゲーマーから批判集まる。

10月25日にローンチを迎えたばかりの、Activision/Infinity Wardが手がけた『Call of Duty: Modern Warfare(コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア)』に対して、いわゆるレビュー爆撃が発生しているようだ。レビュー爆撃とは、特定のタイトルのレビュースコアを下げることを目的に、多数のユーザーが短期間に大量のレビューを投稿すること。これまでにもSteamを中心にレビュー爆撃が発生してきたが、Steamでは販売されていない本作では、レビュー集積サイトMetacriticがその舞台となっている。

Metacriticは世界中のメディアレビューを集積し、タイトルごとにメタスコアと呼ばれる点数を算出している。また、ユーザーレビューの投稿も受け付けており、そのユーザースコアはメタスコアとは別枠で掲載される。本稿執筆時点で、本作のメタスコアはPC/PS4/Xbox One版の順に84/83/84であるのに対し、ユーザースコアは2.7/3.4/3.6と極端に低い状態だ(ユーザースコアは10点満点)。Metacriticにおいてメディアとユーザーの評価に乖離が起きることは珍しくないが、本作の場合0点をつけるユーザーがかなり多く、レビュー内容にも共通点が見られる。端的に言うと、本作でのロシアの描かれ方についての不満である。

 

*以下には『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア』キャンペーンモードのネタバレを含んでいるので、注意して読み進めてほしい。

『CoD:MW』のキャンペーンモードでは、ロシア軍から盗まれた化学兵器をひとつの柱に各勢力の物語を描いている。登場勢力は、アメリカ・イギリス・ロシア・架空の中東国家ウルジクスタンに大まかに分けられ、それぞれ立場の異なる勢力を抱えている構造だ。

たとえばウルジクスタンには、民兵組織ULFとテロ集団のアル・カターラが存在。いずれも自由のために戦っているが、祖国を守るために立ち上がったULFと、世界中でテロを起こすアル・カターラは相容れない。しかし、ウルジクスタンを占拠するロシア軍のバルコフ大将は、どちらも同じテロリストとして扱っている。一方でそのバルコフ大将も、必ずしも本国政府から支持を得ているとは言えない立場にある。

本作においては、アル・カターラはもとより、ロシア軍による残虐なシーンも複数にわたって登場し、子供を含む一般市民への弾圧や虐殺がミッションを通して描かれることも。これはバルコフ大将の強権ぶり、あるいは暴走を表現していると思われる。プレイヤーがバルコフ大将自身から拷問を受ける場面もあり、本作における最大の敵はロシアであると印象付けられても不思議ではないだろう。

Metacriticでの低評価ユーザーレビューを見てみると、ロシア軍を世界の敵やテロリストのように描いていることへの不満が多数を占め、ロシア語で書かれたレビューも多い。Russophobic(ロシア恐怖症)という言葉を用いて批判する意見も。ゲームに限らず、ロシアは敵対勢力として描かれることが多いため、またかといううんざりした思いもあるようだ。

本作のナラティブ面について開発元Infinity WardのナラティブデザイナーTaylor Kurosaki氏は、複雑さを増す現代の状況に合わせて、善悪が明確に分かれることなく、誰もがグレーな存在として表現したと語っていた。確かに、登場各勢力はそれぞれの正義を信じて行動しているため、立場によって見方は変わってくるかもしれない。アメリカCIAやイギリスSASの一員としてプレイする際にも、非情な決断を迫られることがあり、またロシアにしても西側に協力する人物や勢力が存在する。

ただ、主人公としてプレイする西側諸国およびULFの善悪の葛藤に比べると、バルコフ大将率いるロシア軍の描かれ方は、低評価をつけたレビュアーにはとてもグレーには思えなかったようだ。

また、本作にはウルジクスタンを舞台とする「死のハイウェイ」というミッションがあり、ロシア軍が避難民を爆撃した現場という設定となっている。死のハイウェイと呼ばれる道路はイラクとクウェートの間にも実在しており、湾岸戦争中にアメリカ軍が撤退中のイラク軍を空爆し、戦争犯罪ではないかという論争が起こった現場だ。本作ではこの場所をモデルにしたのかどうかは不明だが、多数の破壊された車両が道路脇に転がっている様子はよく似ている。そしてこのミッションの設定は、アメリカが引き起こした現実をロシアにすり替えるような表現にも見え、プロパガンダ作品であると本作を皮肉るレビューも見られる。

『CoD:MW』を巡っては、SIEがロシア向けにはPS4版のPlayStation Storeでの取り扱いを見送ったことが話題になった(関連記事)。また、ロシアの大手通販サイトを検索しても、シリーズの過去作は販売されているが本作は見当たらない。いずれも販売を見送った理由については明かされていないが、本作でのロシア軍に関する表現は消費者に受け入れられないと判断したのかもしれない。ちなみに、冒頭に掲載したストーリートレイラー内では、あえて伏せたのかロシア軍の存在はほぼ皆無である。

こうしたロシアユーザーからの厳しい批判について、現時点では開発元から特に反応は見られない。一部とはいえ、販売を取りやめるというのも異常事態である。ロシアを非情な敵対勢力として描く一種の風潮に一石を投じる結果となったのか、今後の作品には注目が集まりそうだ。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

Articles: 6794