『Rising Thunder』は格闘ゲームに新風を巻き起こすか?キーボードでワンボタン必殺技、クールダウン制導入の異色作
『Rising Thunder』は、サンフランシスコのベイエリアに位置するスタジオRadiant Entertainmentが開発中の格闘ゲームだ。一見すると、それなりにグラフィックが綺麗なだけのロボットもの格闘ゲームに見えるかもしれない。しかし海外メディアPC GamerやVentureBeatの報道により、本作が現在の格ゲーのスタンダードから大きく逸脱した存在であることが明らかになった。
キーボードで操作可能、ワンボタンで必殺技
格闘ゲーム『Rising Thunder』は、PC向けのFree-to-Playタイトルとして展開が予定されている。PCでの展開もF2Pというビジネスモデルも、現在の格闘ゲームシーンではさして珍しいことではない。『Rising Thunder』のコアであり最大の特徴となるのは、「ワンボタンで必殺技を出すことが可能である」という点だ。
開発元のRadiantが海外メディアに語ったところによると、プレイヤーは複雑なコマンドを入力する必要はなく、コントローラーやアーケードスティックのボタンを1度押すだけで、相手に向かって必殺技を放つことができるという。本作において難しい操作とされているのはジャンプと、コンボのために技をキャンセルする方向入力のダブルタップのみ。それゆえに、プレイヤーはキーボードでも『Rising Thunder』を操作することが可能だという。
「ワンボタンで必殺技を出せる」という手法は、『ストリートファイターIV 3DS』でも採用されている。同作ではタッチスクリーンをタッチするだけで、昇竜拳などの必殺技やセービングのような特殊システムを発動することが可能だった。一方で、ガイルが歩きながら溜め技系のソニックブームを放てるなど、一部の必殺技が異常に有利になったのはまだ記憶に新しい。コマンド入力や溜めなどの操作が排除される以上、技自体のダメージ値を下げたり、大きな隙を加えたりといった調整は必須になる。
この点において、『Rising Thunder』では必殺技に「クールダウン制」を導入しているという。『ストリートファイター』に置きかえるなら、たとえば昇竜拳を一度放つと、次に昇竜拳を放つまでには2秒ほど待たなければならないといった具合に、待ち時間が各技に設定されているわけである。前進しながらソニックブームを連発して相手を圧倒する、といったことは『Rising Thunder』ではできづらくなっているようだ。
“簡単な格闘ゲーム”ではない
ワンボタンで必殺技が出せると聞くと、とても簡単な初心者向け格闘ゲームに思えるかもしれないが、『Rising Thunder』のゲームデザインのテーマは、「コマンド入力の複雑さを除いて格闘ゲームのコア要素へすぐに手を伸ばせる」だ。海外メディアの取材に応じたSeth Killian氏は、本作がブロッキングやジャンプ、タイミングといった俊敏さと決断力を求められるタイトルだと強調する。実際に先行公開されたプレイ映像を見てみると、ゲーム進行はなかなかに早く、技を繋げてのコンボやめくり攻撃など、従来の格闘ゲームにもある複雑な戦略部分が垣間見える。
「格闘ゲームは難しい、それは悪いことじゃない。いいことだ。ただ格闘ゲームは、ある種の馬鹿げた面で難しくなっているんだ」とKillian氏はコメントする。Seth Killian氏は、格闘ゲーム大会「EVO」の設立に尽力したメンバーの1人であり、かつてはソニーのほか格闘ゲームの大手カプコンにて働いていたこともある。Killian氏は、格闘ゲームがデザインされる際には、「必殺技を放てない人々」の存在が考慮されていないことを指摘している。結果として、プレイヤーたちはコマンド入力に何度も何度も失敗することになる。コマンド入力が存在すると、その格闘ゲームのコアの要素に到達するまでに大なり小なり壁ができてしまい、人々に何か月もの時間を要してしまうというのがKillian氏の考えだ。
なお『Rising Thunder』は、開発当初からオンライン用のゲームとして開発されている点が特徴でもある。本作の開発には、オンライン上で快適に格闘ゲームをプレイするためラグを排除する「GGPOネットコード」の開発者Tony Cannon氏が参加する。健全なマッチメイキングと、よきF2PモデルもKillian氏は約束している。『Rising Thunder』が商業的に成功することは明確なゴールだが、Killian氏自身は、より格闘ゲームが世に広まることを望んでいるという。
『Rising Thunder』は7月28日よりテクニカルアルファテストが実施される予定であり、現在は公式サイトにて登録受付が実施されている。アルファテスト中はストアは登場しない予定であるという。