『アウター・ワールド』ハンズオンレポート&制作者インタビュー。Obsidianの新作は、豊富な選択肢が特徴の重厚なSFRPG【TGS2019】
今月9月12日~15日にかけて開催された東京ゲームショウ2019にて、『Fallout: New Vegas』『Pillars of Eternity』といった多くの名作RPGで知られるObsidian Entertainmentによる新作SFRPG『アウター・ワールド』(原題:The Outer Worlds)のメディア向け体験会が行われた。同時にシニア・プロデューサーのMatthew Singh氏にインタビューする機会も頂けたので、今回のイベントで初公開となった日本語版のハンズオンレポートと、インタビューの内容を同時にお届けする。
『アウター・ワールド』ハンズオンレポート
『アウター・ワールド 』の何よりの特徴は、その濃密なストーリーテリングにある。RPGにとって多くのNPCは、基本的に一方的にこちらに情報を提供するだけの存在であることが多い。そしてプレイヤーの分身たる主人公は、よほど重要なカットシーンなどでなければ大抵の場合、一言二言返事を返すだけの存在だ。『アウター・ワールド』ではそうではない。とにかく会話中に現れる選択肢の量が多いのだ。ほとんど普通の会話と感覚が変わらない程度の頻度でプレイヤーに発言権が与えられる。このゲームにおいてNPCの会話パターンを網羅しようなどというのは不可能であるように感じられたし、「この選択肢は今後ゲームにどのような影響を与えるのか」などといったメタ的な思考を毎回巡らせているとすぐに疲れ果ててしまうだろう。あまり深く考えず、直感的に選択肢をポンポン選んでいくべきだと感じた。
そうはいっても、もちろん取るに足らないような選択肢と、物語やゲームプレイを左右する選択肢の区別は存在する。会話中にはキャラクターの能力値に応じて提示される選択肢もあり、こういった選択肢はそれぞれNPCやストーリーに大きな影響を与える可能性が高い。上の画像では「パースエイド」「ライ」「インティミデイト」という主人公が持つ3つのパラメータに応じて会話に追加選択肢が現れている。日本のプレイヤーには少し馴染みが薄いかもしれないが、それぞれ「勧誘する」「嘘を付く」「脅迫する」といった意味の単語だ。たとえばここではパースエイドの能力値が足りているので一番上の選択肢を取ることができるし、これを選ぶとこのマーサー警部補を一時的にパーティーに招き入れることができる。
『アウター・ワールド』における言動の選択肢やNPC会話パターンの多さは、徹底的なリアリティの追求というよりはむしろ柔軟な、かつ没入しやすいロールプレイを意識したものであるだろう。オープンワールドとはまた種類の違うタイプの自由がプレイヤーには与えられている。選ぶ返答、上げる能力値、訪れる場所、そういったプレイヤーの選択ひとつひとつが積み重なって無数に物語を枝分かれさせるのだ。
ストーリーテリングに力を入れているだけあって、テキストにも気合が入っている。個性豊かなNPC達の発言には味付け程度の皮肉が含まれており、まさに海外産ゲームの風味を出している。物語の序盤では人工知能の「エイダ」に協力を取り付けるシーンがあるのだが、そこではプレイヤーの空気を読む能力まで試されたりする。エイダはキャプテン・ホーソーンの命令のみを受け付けるのだが、当のホーソーンは既に死んでいる。状況的にはある意味詰んでいるのだが、そこでエイダが「私はホーソーンの命令しか受け付けない。あなたの命令を受け付けるとするならば、どういうことかわかるな?」というような事を言ってくるのである。ここで選択肢が提示されるのだが、かなりの念押し具合なので流石に何を求められているかは大体のプレイヤーは察しがつくと思われる。ただ、もちろんここで「俺はホーソーンではない」という頭の硬い選択肢を取ることもできる。プログラムの抜け道を自ら提示するAIと、ルール通りの頭の硬い返事しか出来ない人間という逆転構造は非常に皮肉が効いていて、今回のハンズオンの中でも特にお気に入りの会話シーンだ。
『アウター・ワールド』のストーリーについてもう一つ述べておくならば、かなり早い段階から大きな決断を迫られることが挙げられる。ネタバレになってしまうので少しぼやかして説明すると、ゲーム最序盤に訪れるとある街を巡って、対立する2人の指導者のどちらの味方になるか、プレイヤーに選ばせるという形だ。ハンズオンでは実際に決断を下すところまでは進まなかったのだが、ゲームの中盤に大きく分岐するタイプのシナリオではなく、序盤から細かく分岐していくことを伺わせる作りになっていた。
ゲーム部分は、非常にオーソドックスなシューターの作りとなっている。用意されているアクションや操作感もほとんど普通のFPSなのだが、独自のシステムが2つ存在する。ひとつはタクティカル・タイム・ダイレーション(TDD)と呼ばれるシステムだ。コールドスリープから目覚めた主人公の副作用として最初から用意されている能力であり、ゲージを消費して時間の流れを遅くすることができる。これの発動中はゆっくり状況を確認しエイムを合わせたりすることができる。もうひとつがコンパニオンの存在で、パーティーに加入しているNPCが戦闘を補助してくれ、プレイヤー側からもさまざまな指示を与えることができる。
ほかにも特徴を上げるならば比較的優秀なスニーキングが最初から用意されていることだろう。道行く敵対NPCを全てなぎ倒していく必要は全くなく、スニーキングで不要な戦闘と消耗を避けることが可能だ。これらは全て、純粋なシューターとしての難易度を抑えるための工夫であるとも言える。プレイヤーは戦闘部分に関してもさまざまなアプローチを取ることができるし、アクションが苦手な人でも十全に『アウター・ワールド』の世界とストーリーを楽しめることができるというわけだ。
1時間程度のハンズオンのほとんどは文章や会話を読むことに費やされており、総じてとにかく圧倒的なテキスト量を感じさせるハンズオンであった。この体験会の内容も踏まえて、Obsidian Entertainmentからはるばる日本に訪れているシニア・プロデューサーのMatthew Singh氏に直接質問をぶつける機会を頂いた。以下にそのインタビューの内容もお届けする。
『アウター・ワールド』開発者インタビュー
───今作は『Fallout: New Vegas』の精神的後継作と言われることが多く、実際UIなどにも似通った点が多く見受けられますが、実際はどれくらい『Fallout: New Vegas』を意識して開発されていますか?
Singh氏:
『アウター・ワールド』と『Fallout: New Vegas』は、開発メンバーからして共通点が多いです。プロデューサーの二人であるTim CainとLeonard Boyarskyはどちらもオリジナルの『Fallout』の開発に携わっています。彼らの作るゲーム、そしてObsidianが作るゲームには、同じ血が流れているのです。『アウター・ワールド 』も例外ではなく、その特徴である「プレイヤーに選ばせる」作りなどは、『Fallout』シリーズと共通するDNAの為せる技なのです。共通点は多いでしょうが、『Fallout: New Vegas』のファンに届くようにあえて似せて作ったというわけではなく、こういったゲームこそが我々が好んで作るゲームなのだということです。
───テストプレイの範囲で構わないのですが、初見ではじめてエンディングに到達するまでの時間で最も短かった人と長かった人ではどれくらいかかりましたか?
Singh氏:
具体的な数字は分かりませんし、プレイスタイルや選択によってかなり差が出るので非常に答えるのが難しい質問です。ただ、クリアまでに100時間かかるような圧倒的なボリュームのゲームというわけでは決してなく、どちらかというと何度もプレイしたくなるような作りにしているつもりです。
───マルチエンディングで何周もプレイする人が多いだろうとのことですが、周回まわりのシステムはどのようになっていますか?
Singh氏:
いわゆる強くてニューゲームや引き継ぎのようなシステムはありません。ただし、豊富な難易度設定を用意してあります。特に一番上の「スーパーノヴァ」という難易度では他の難易度にない空腹や喉の乾きといった要素が追加され、セーブやファストトラベルなどは制限されます。また、プレイヤーの「欠点」というシステムも存在し、ゲームから提示される欠点を受け入れることでキャラクターの他の部分でボーナスを得るといったビルド幅も存在します。こういったビルドの変化とストーリーの分岐、難易度の変更などで周回ごとに全く異なる体験ができるはずです。
───TTDやコンパニオンのシステムなど、戦闘を補助してくれるシステムが豊富ですが、シューターとしての難易度はどういう程度に調整されているのでしょうか?
Singh氏:
シューターとしてぬるすぎないように、歯ごたえがあるゲームにしたいとは意識していますが、同時にシューターではなくRPGのファンにも魅力的なゲームであるようにしたいとも思っています。ゲームとしての難易度は、TTDやコンパニオンの使い方などといったミクロなプレイスタイルや、出会った者全てと敵対していくか、会話と重視してなるべく非暴力的に問題を解決していくかといったマクロなプレイスタイルによって大きく左右されます。
───ハンズオンではコンパニオンの活躍までは見られなかったのですが、コンパニオンにはどのような要素があるのですか。また、コンパニオンスキルとはどのようなものなのでしょうか?
Singh氏:
コンパニオンも、プレイヤーと同様に成長していきます。プレイヤーには「リーダーシップ」と呼ばれるステータスがあり、この能力を伸ばしていくとコンパニオンがより強力に、効果的に使えるようになります。コンパニオンスキルも、リーダーシップによって解禁されます。コンパニオンのAIを調整することも可能で、たとえば近接攻撃を重視させたりなどといったことも可能ですし、装備を与えることも可能です。コンパニオンスキルは1人につき1種類用意されているアクティブスキルで、こちらも使用することで大きな戦術的アドバンテージを得ることができるものばかりです。
───発売後にDLCなどの予定はありますか?シリーズとしてフランチャイズ化する予定などは?
Singh氏:
力を入れている作品ですので、このゲームがこれっきりになってしまったら非常に残念ではあります。ですが、今はとりあえず本編を完成させることに何よりも集中しています。いざ発売され反応を見てから、シリーズ化やDLCなどについては考えていくことになるでしょう。
───プレイしてみて少し気になったことのひとつとして、メニューを開かずに消耗品を使用するクイックスロットのようなものはないのでしょうか?
Singh氏:
クイックスロットのようなシステムはなくて、代わりにMedical Inhaler(医療用吸入器)というアイテムがあり、これのスロット数が拡張されていきます。消耗品をこれらのスロットにセットすると、Medical Inhalerを使用した時にスロットされているアイテムを全て同時に使用したのと同等の効果を得ることができます。
───プレイヤーが実際に操作できるマップはどのような構造になっていますか?
Singh氏:
ハルシオンコロニー内のTerra 2とMonarchという2つの惑星がメインのワールドとなります。Terra 2は比較的テラフォーミングが成功した惑星で、エリート都市や企業の本部などが存在します。対照的にMonarchはテラフォーミングが失敗した惑星で、危険な動植物が溢れています。Terra 2ではなくMonarchにとどまった企業もあり、Monarchの所有権を主張していたりします。基本的にはこの2つの惑星上にサブマップが大量に存在し、宇宙船からこういったサブマップ上に用意された着陸地点やファストトラベルポイントを経由して探索を進めていくという形になります。
───ちなみに、ゲームはもう完成されていますか?
Singh氏:
開発はほぼ最終段階で、6週後の発売に向けて最後のバグ潰しとパッチングを行っている状態です。
───最後に、日本のファンに向けて、何か伝えることはありますか。
Singh氏:
我々が用意したこの新しい世界とそれの探索、そしてその世界に住むユニークなキャラクター達を日本のファンにも楽しめて頂けたらいいなと願っています。
───ありがとうございました。