Nintendo Switchのニンテンドーeショップで配信されるゲームのセール価格について、任天堂が下限価格を設定したようだ。現時点では北米向けにのみ適用されており、その下限価格は1.99ドル(約205円)だという。インディーゲームのマーケット事情に詳しいSimon Carless氏が報告している。なお同氏はIndependent Games Festivalの名誉会長であり、Dotemuなどのパブリッシャーのアドバイザーも務めている。
ニンテンドーeショップでは、入れ替わり立ち替わり多数のゲームのセールがおこなわれている。そのセール価格や割引率はタイトルによりまちまちだが、近年は1ドルを切る大幅値下げが時折見られるようになった。中には99%オフによりわずか10セント(約10円)で販売する例も。しかし少なくとも北米では、1.99ドル以下の価格でセールをおこなうことはできなくなったそうだ。
このポリシー変更の実施については、協力パズルゲーム『Death Squared(ロロロロ)』の開発者も認めている。なお、同作のNintendo Switch版は現在0.99ドルでセール中だが、これはポリシー変更前から予定していたセールのためだそうで、ニンテンドーeショップでは今後こうした価格を見ることはなくなるだろうとしている(Reddit)。
任天堂がセールの下限価格を設定した理由については明らかになっていない。ただ前出のSimon Carless氏は、セールにより1セント(約1円)で販売されている間は、ニンテンドーeショップのランキングの集計から除外されるという別のポリシー変更も、北米向けに実施されたと報告している。このことから、過度な安売りに歯止めをかけようという任天堂側の狙いが透けて見える。
ニンテンドーeショップのランキングは、過去2週間のダウンロード本数によって順位づけされており、いくつかのパブリッシャーはこの仕組みを巧みに利用してきた。つまり、売り上げベースのランキングではないため、先述したような大幅値下げによってダウンロード数を稼ぎ、ランキングページ入りを目指すということだ。パブリッシャーのQubicGamesに至っては、格安セール中の同社タイトルを1本購入すると、複数の同社タイトルを無料で配る施策もおこなっていた。これもダウンロード数にカウントされる。
Nintndo Switch上においてランキングのページは、メーカーにとって数少ない露出機会のひとつ。格安セールによって利益を削ってでも、ここに掲載されると多くのユーザーの目に触れ、またセール終了後もしばらくはランキング圏内にとどまるため、結果的に大きな収益を得られる可能性がある。たとえば、パブリッシャーのNo More Robotsは『Not Tonight: Take Back Control Edition』を90%オフで販売してランキングを駆け上がり、6桁(10万ドル単位・1000万円単位)の収益を得たという(関連記事)。またHitcentsの『A Robot Named Fight』も、大幅値引きによって前月比1500%の売り上げになったとのこと。
ただ、赤字になってしまう例も報告されており、プロモーション効果は期待できたとしても、確実に成功を得られる手法とはいえない(関連記事)。また、こうした手法を繰り返していることがユーザーに認知されると、定価で買ってもらえなくなるリスクもあるだろう。
*大幅値下げと無料配布の常連QubicGames。現在実施中のセールでの最安価格は、同社にとって“控えめ”な1.99ドル。無料配布もおこなっていない。
Nintndo Switchでは毎週多数のタイトルがリリースされており、今月には1日で36本ものタイトルが国内配信された日もあった。こうした激しい競争下にあるメーカーにとって、先述したように数少ない露出機会であるランキングに入ることを目指すセールは、ある種の生き残り戦術といえるだろう。
ただ、ランキングはゲーム内容をもとにした人気を反映したものでなければ、ユーザーにとっては有益とはいえない。任天堂は、今回のセール価格の下限設定や、極端な割引タイトルをランキングから除外するという新たなポリシーによって、こうした状況を少しでも改善しようとしているのかもしれない。
なお繰り返しになるが、この新ポリシーは現時点では北米のニンテンドーeショップのみに適用されている模様。本稿で触れたランキングの仕組みに地域差はないため、今後日本や欧州などにも適用範囲を広げていく可能性がありそうだ。