“たった4時間”でアクションゲームを作る男たちの戦い。『アクツクMV』によるアクションゲーム制作RTAレポート【デジゲー博2019】

秋葉原UDXにて、11月17日に開催された「デジゲー博2019」。会場内では、『アクションゲームツクールMV』を使ったゲーム制作チャレンジが実施されていた。本稿ではその内容をお伝えする。

秋葉原UDXにて、11月17日に開催された「デジゲー博2019」。会場内では、開発中のゲームの展示や完成したゲームの頒布、VRや大掛かりな機材を使った試遊も行われていたが、4Fの一角では『アクションゲームツクールMV』を使ったゲーム制作チャレンジが実施されていた。制限時間つきで、その場でゲームを作り上げるというジャム企画。本稿では、『アクションゲームツクールMV』を開発したKADOKAWAと『OPTPiX SpriteStudio(以下、SpriteStudio)』のウェブテクノロジのコラボにより挑戦されたゲーム制作チャレンジ、「アクションゲーム作成RTA」の模様をお伝えする。

レギュレーションの確認

『アクションゲームツクールMV』は、KADOKAWAが開発したプログラミング不要でアクションゲームが作成できるツール。Javascriptによる機能拡張や、トップビューとサイドビュー、4人までのローカルマルチプレイに対応。体験版が配信されているほか、チュートリアルや公式サイト上には講座も掲載中。2019年9月に早期アクセスを終え、Steamでは1万780円で販売が行われている。

『SpriteStudio』はソフトウェア開発会社ウェブテクノロジが開発した2Dアニメーション作成ツール。アプリやゲーム用キャラクター、UI、エフェクトなどのアニメーションが作成できるソフトだ。『アクションゲームツクールMV』以外に、UnityやUnreal Engine 4などのゲームエンジンにも対応しており、各エンジン用のプレイヤーやSDKの公開も行われている。サブスクリプション形式で販売が行われており、個人や小規模なチーム向けのパーソナルプランは、1ヶ月880円から利用できる。データの出力や保存はできないものの、デモ版も公開中だ。

今回の「アクションゲーム作成RTA」は、ツールの使用法を把握していれば、短時間でもアクションゲームが作成可能であると示す目的で行われた。制限時間は、デジゲー博2019の開始時間となる11時から、終了1時間前の15時までの「約4時間」でアクションゲームを作り出すことを目標に、チャレンジが行われたわけだ。ただし、ドット絵やイラストなどの素材を用意するには時間がかかる。そのため、アクションゲームに使用されるドット絵の素材と、敵キャラクター2体分のアニメーションは事前に用意し、『アクションゲームツクールMV』上での作業と、主人公と敵キャラクター1体のアニメーションなどを作成するレギュレーションで、今回のRTAは実施されている。

また、写真を撮って様子を眺めているだけの男が5時間もブースに居てもただただ邪魔なため、筆者は11時以降その都度制作状況を確認しにいくスタイルで今回の取材は敢行した。結果的に、1時間に1度進捗を伺うこととなり、ちょっとした地獄の様相を呈したが、やむを得ない犠牲だろう。

開始直後の慌ただしさ

アクションゲーム作成RTA開始直後となる11時過ぎ。筆者が両ブースの前へ到着した頃には、すでにRTAは開始されていた。展示用の机に作業用のノートPCを並べ、作業工程が来場者にも見えるようモニターにも映した状態で作業が進行。『SpriteStudio』ブースでは本アクションゲームの主人公のアニメーション作成が行われていた。『アクションゲームツクールMV』ブースでは同ツール上でタイトル画面が最初に作成され、UIの調整が実施中だった。1つの画面で完結するアクションゲームを目指し、そのあとエフェクトや攻撃モーションなどが作成されたようだ。事前にドット絵などの素材が用意されているとはいえ、RTAが始まったばかりの段階では、数時間でアクションゲームが出来上がるとはとても思えないが、どうなっていくのだろうか。

開始から1時間が経過した12時頃。『SpriteStudio』ブースでは、1時間前にアニメーション作成が行われていた主人公作成の作業が完了しており、敵として登場するコウモリのアニメーション作成へ移っていた。一方『アクションゲームツクールMV』ブースでは、ステージの背景や敵出現エフェクトの作成が終わり、『SpriteStudio』側で作成された主人公のデータに、攻撃判定やモーションの設定中。馴染みのあるヒットボックスが表示されていると、アクションゲーム感が徐々に出てきた気がする。  

 

チャート変更の兆し

RTAの折返し地点となる13時。『SpriteStudio』ブースでは順調に作業が進められており、コウモリのアニメーションは完成し、必殺技カットイン制作が進行中。このあと、背景を動かす作業に入るとのこと。『アクションゲームツクールMV』ブースでは、主人公が動かせる状態になっていて、コウモリも画面上へ出現。背景とBGM、敵キャラクターとプレイヤーキャラクターが揃い、一気にアクションゲームらしい画面になっていた。しかし進捗具合を伺ってみると、『アクションゲームツクールMV』側は少し押しているらしく、事前に用意されていた敵キャラクターのデータが入れられるかの瀬戸際に。当初の予定では、敵はスライムとコウモリに加えて、女ボスが予定されていたそうだが、どこまで実装されるのだろうか。

いよいよ大詰めとなる14時。『SpriteStudio』ブースでは、1時間を残してなんと全ての作業が完了していた。データは『アクションゲームツクールMV』ブースに渡されており、あとは完成を見守るだけだ。そのため、モニターには予め準備されていたボス用の女キャラクターが展示されていた。話を伺いつつ、もう一体の準備されていた敵キャラクタースライムを見せてもらおうとすると、データが入っておらず動かない。「こんなこともあろうかと」の台詞と共にUSBメモリが登場し、格納されていたデータで無事動くスライムが確認できた。また、今回のアクションゲームではドット絵を素材に使用していたが、『SpriteStudio』を使ってアニメーションを作成した場合、厳密に言うとドット絵ではなくなる。そのため、ドット絵警察に逮捕されないようドット絵と言い張らないよう注意する必要があるのだとか。

一方、『アクションゲームツクールMV』ブースの方では、必殺技のエフェクトと体力ゲージが実装。やられモーションが実装され、ステージから落下すると死ぬようにもなっており、ゲームオーバーになるとタイトル画面が偏移するようになっていた。1時間前は少し押していたが、あとはカットインと背景を組み込むだけだという。

 

そして完成へ

上記のような過程を経て、短時間でアクションゲームを制作するチャレンジが行われた。結果の前に、ウェブテクノロジの大野 正樹氏に完走した感想を伺ってみると、「慣れによる側面もあるとはいえ、今回のイベントで作成したように1時間とか30分もあればアニメーションや演出が作成できます。例えば『アクションゲームツクールMV』で、同じことをやろうと思えば出来るんですが、遥かに時間がかかってしまうので、機会があって演出のようなものを作りたいなと思ったときは思い出していただければなと思います」と語っていた。今回のRTAを振り返っても、アニメーションが短期間で量産されており、『SpriteStudio』の実力が発揮されていたと言えよう。

左が畠山氏、右が門田氏

『アクションゲームツクールMV』ブースでは、15時2分ごろにアクションゲームが完成した。完成度はというと、最終的には主人公を操作し、ランダムに出現するコウモリを剣で倒し、ボスが出現。ボスによる苛烈な攻撃を回避し、必殺技を何発かあてると、ゲームクリアになるところまで組み込まれていた。

今回RTAに挑戦した『アクションゲームツクールMV』ディレクターの畠山卓也氏、グラフィッカーの門田洋平氏に感想を伺うと、一時はプレイヤーの設定が思うようにいかない部分もあり、デバッグなどで時間がかかり足踏みしていたが、概ね予定通り進んだそうだ。予め仕込んであった素材も最後に組み込むことができ、最終的に間に合ったとのこと。ボスの攻撃により一撃でゲームオーバーになるなど、バランスは大味になっていたが、アクションゲームと呼べる代物には仕上がっていた。作り方を心得ており、素材が用意されていれば、『アクションゲームツクールMV』を使って短時間でアクションゲームを作れると証明出来たのではないだろうか。なお、今回のRTAで作られたゲームは、『アクションゲームツクールMV』公式サイト内にて公開されている。4時間でどの程度のものが作成できるのか、気になる方はダウンロードしてみると良いだろう。

また、『アクションゲームツクールMV』で作成された作品を対象とした「ゲームデベロップチャレンジ」がitch.io内で開催されている。ジャンルやテーマは自由。応募期間は、2020年3月31日まで。2020年9月頃に結果発表が行われ、大賞には賞金100万円、入賞には5万円などが贈られる。契約関連の事項も記載されているため、規約にはしっかり目を通しておくと良いだろう。興味がある方は、『アクションゲームツクールMV』や『SpriteStudio』を採用して参加を考慮してみてはいかがだろうか。

Keiichi Yokoyama
Keiichi Yokoyama

なんでもやる雑食ゲーマー。作家性のある作品が好き。AUTOMATONでは国内インディーなどを担当します。

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