リアル自由ライフシム『inZOI』は「家族愛」重視、人生ドラマも楽しめる。“公式チート”な救済要素など、気になるシステムいろいろ飛び出した開発者Q&Aまとめ

『inZOI』の開発者に向けて、オンラインQ&Aセッションが実施され、ゲーム内容がさまざま明かされた。本稿ではその模様を抜粋してお届けする。

KRAFTONは3月19日、3月28日に早期アクセス配信を控える『inZOI』について、メディア向けのオンラインQ&Aセッションを開催した。本稿ではその模様を抜粋してお届けする。

『inZOI』は、Unreal Engine 5(以下、UE5)による精細なグラフィックが特徴のライフシミュレーションゲームだ。「ZOI」と呼ばれるキャラクターを作成し、神の視点となってそのキャラクターたちの人生に関与していく。本作では、街のすべてのキャラクターが自分の自由意志で行動するという。キャラクターはNPCも含め仕事やレジャーなどを通して、街中で生活している。SNSも存在し、人々の間ではさまざまな話題やゴシップが流行。結婚や出産、病気や交通事故などのイベントが発生し、多彩な人生が送れるようになっているという。


今回のQ&Aセッションは同じく3月19日に配信された本作のゲーム内容を紹介する「inZOI Online Showcase」の直後におこなわれた。そちらの内容を基にした質問もあるので、気になる人はまずショーケースの内容をまとめた記事を参照されたい(関連記事)。今回のセッションは、本作のプロデューサー兼ディレクターのキム・ヒョンジュン氏とアシスタントのジョエル氏が、事前にメディアから募集した質問や、ショーケースの視聴者の質問に答えるかたちで実施された。以下、内容を抜粋して紹介する。

まず質問されたのは、「Smart Zoi」についてだ。NVIDIAと共同開発して作成したというこの機能では、AI技術によりキャラクターが特性や状況に合わせて行動を変化させ、その経験を基に成長するという(関連記事)。まだ謎も多いこの要素について、今後早期アクセスでどのような方向性で開発していくのかという質問が寄せられた。キム氏はSmart Zoiについて、「行動」と「性格」という2つの方向性で開発していると返答した。前者に関しては、通常ならキャラクターは開発者が設定した情報をもとに行動するが、Smart Zoiを使うことでAIが周囲の情報から状況を推測し、キャラクターが自立して行動できるような仕組みを目指しているという。後者に関しては、AIに「小食」や「学校に行きたくない」などのプロンプトを記述することで、全体の性格に追加で設定を与え、それに合わせた行動ができるようにしていきたいとした。なお、Smart Zoiは早期アクセスのリリース時点では実装されていないとのこと。


つづいて、「キャラクターの年齢を変更できるアイテムの導入予定はあるか」という質問に関して、キム氏はキャラクターが若返るアイテムは無いと回答。その代わりに、本作ではキャラクターの外見を現在の状態で固定するオプションがあるという。つまりキャラクターの実年齢は変更できないが、見た目を老化しないように固定することはできるということだろう。

関連して、「他のキャラクターに変更を加えることができるのか」という質問も寄せられた。キム氏いわく、現時点では大きく変更できるシステムは無いが、「都市編集」という機能のひとつとして、街の群衆の服装や外見を変更できるシステムの導入を検討中だという。また早期アクセス開始時にある機能として、群衆の“機嫌”を設定で変更できる機能も紹介された。設定によっては、街中で群衆がいきなり殴りかかってくるようにもできるという。前述したショーケースでは、街の汚れ具合など景観を調整することもできると明かされていた。今後の開発とプレイヤーのこだわり次第では、たとえば薄汚い景観の中で、マフィアのような見た目のキャラクターが突然殴りかかってくるような、荒廃した世界観にすることもできるかもしれない。

次に「本作は初心者でも楽しめるのか」という質問に対し、キム氏はまず本作がこれまで20年以上のキャリアで携わったどのゲームよりも複雑であると回答。たとえば妊娠中の女性が車を運転中に出産しそうになるなど、いろいろなケースに対応しなければならないのが本作の難しい点であると答えた。その一方で、この複雑さこそが本作の面白い点であると同氏は考えており、慣れるほどに楽しくなっていくため、根気強くプレイしてほしいと語った。

また、「UE5で開発する中で難しかったことは何か」という質問も寄せられた。キム氏はUE5でゲーム開発をした経験が少なかったため、UE5の使い方についてR&D(研究開発)をするのが大変だったという。またUE5の特徴のひとつで、リアルタイムで間接光を計算した美麗なライティングがおこなえる「Lumen」などの高次機能は低スペックの環境で動作させるのが難しく、最適化も苦労した部分だという。しかしそうした技術の恩恵もあってか、UE5は「現世代の頂点」とも言える良いゲームエンジンだとキム氏は評価した。

つづいて寄せられたのは、「ゲーム内のスマートフォンをアップデートする予定はあるか」という質問。本作ではスマートフォンを使うとフードデリバリーや家事代行サービスを依頼することができるが、他の機能を追加する予定はあるのかという趣旨の質問だろう。キム氏はこれに対し、まずキャラクター同士の相性を調べるアプリや、ゲーム内のSNS「バブリー」で他キャラクターにコメントする機能、恋人などの位置をGPSで特定するアプリなどを実装予定だとした。SNSのコメント機能では、他のユーザーと喧嘩するといったこともできるようにするそうだ。

また、「キャラクターと自然言語でメールのやり取りをする機能」の実装時期についても質問が寄せられた。これはChatGPTのように自然な文章でキャラクターとメールをすることができるという機能で、以前から実装が予定されていた要素のようだ。しかしキム氏は限界を感じ実装を諦めたと回答。本作に存在するキャラクターには感情、気質、価値観といった精神状態が600個以上も存在し、それをすべて考慮して自然な言葉でやり取りするのは難しいと判断したそうだ。なお、今後のアップデートで定型文を利用したメールのやり取りができるようになる予定だ。

次に、本作の開発にあたって現実的な要素と非現実的な要素をどういったバランスにしたのか、という質問が寄せられた。キム氏によれば当初、本作でキャラクターを使って大声で叫んだり、路上でパフォーマンスをしたりといった、普段なかなかできない行動ができるというだけでも、現実以上の体験が届けられていると思っていたそうだ。ただユーザーとやり取りを重ねるうちに、それだけでは非現実的さが物足りない可能性も考慮されているという。それを受けて、今後はキャラクターをヴァンパイア風の見た目に変更するオプションや、「地下鉄の壁をすりぬける」といった、ファンタジー要素の実装も検討しているとのことだ。

そして、同性愛の有無を問う質問に関しては、存在するとキム氏は回答。キャラクターメイキングの際に、性的アイデンティティを設定する項目があるそうだ。こちらは早期アクセスでフィードバックを受けながら改善を予定しているとのこと。

また、建築要素に関する質問も寄せられた。建築できる建物の雰囲気が現代的なデザインになるのか、未来的なデザインに焦点を当てたものになるのか、という質問に関しては、基本的には現代的になるようにしているとキム氏は答えた。ただ未来的なものや田舎風のレトロな建物も建築できるそうで、ひとつの方向に偏った雰囲気にはなっていないとした。ショーケースでの説明によれば、本作では画像から3Dモデルを作成し家具として配置し、生成AIを用いて柄を自由に変更することもできる。もし用意されているデザインが気に入らなくても、やる気次第で好きなものを作ることができるだろう。なお、本作の公式Youtubeでは、多様な建築例を確認できるトレイラーが公開されている。

またコメントの中には、ショーケースで披露された家族を描いた描写に感動したという声も見られた。今回キム氏は質問に答えるかたちで、ゲーム制作の哲学として「家族」を重要視しており、本作が家族について考えるきっかけになることを願っていると語った。またUIの一部として、本作には「家族愛」のステータスもあるという。ショーケースではキム氏が息子とともに『The Sims』をプレイしたことが『inZOI』の開発のきっかけとなったことが語られていたが、そんな同氏の家族愛がゲーム内容にも影響を与えているのかもしれない。

最後の質問は「人間関係や予想外の出来事など、コントロールが難しいことに対処する方法はあるか」というものだ。キム氏によると、本作では特定の条件を満たすと入手できるポイントで特殊な「ドーナツ」を買うことができるという。このドーナツは、特定の欲求を抑えたり、睡眠が必要なくなったりといった、言わばチート的な効果をもたらすそうだ。また同氏は質問を受けて、このドーナツに老化や死亡に関する効果を入れることを検討すると述べた。くわえて本作では病気や事故の確率、前述の「群衆の機嫌」を変更する機能などもあり、Modなどがなくてもある程度ゲーム内容がコントロールできるようになっていると同氏は付け加えた。

以上でQ&Aセッションは終了し、キム氏は最後に早期アクセスを間近に控えた本作について、これから険しい道が待っているかもしれないが、勇気をもって開発を進めていくので応援してほしいと伝えた。

早期アクセスのリリースが迫り、本作のショーケースやゲーム内容説明会では大量の情報が公開された(関連記事1、関連記事2)。Q&Aセッションではさまざまな疑問への回答が得られたほか、「見た目の固定オプション」「家族愛のステータス」「チート効果を持つドーナツ」など、詳細がさらに気になる要素もいくつか飛び出した。本作には多種多様な要素があるだけに、その全貌は早期アクセス配信後に実際にプレイして確認してみるといいかもしれない。

また、本作のキャラクターメイキングと建築要素を一足早く試せる期間限定の体験版『inZOI: Creative Studio』も、3月23日より配信予定だ。本日3月20日正午からは各配信プラットフォームで体験版のアクセスキーを入手できるDropsイベントもおこなわれる(関連記事)。気になる人はこちらで本作を一足先に体験してみるのもいいだろう。

『inZOI』はPC(Steam)向けに3月28日、早期アクセス配信開始予定だ。価格は39.99ドルとなり、本稿執筆時点では日本版の価格は不明だ。なお、早期アクセス配信開始時点で日本語表示にも対応予定。

Yusuke Sonta
Yusuke Sonta

『Fallout 3』で海外ゲームに出会いました。自由度高めで世界観にどっぷり浸れるゲームを探して日々ウェイストランドをさまよっています。

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