アクションゲームを手がける「開発者」たちにきく、アクションゲームの作り方。第三回『SnowFighters』開発学生チーム
アクションゲームを作りたいというユーザーに向けて、アクションゲームを手がけたクリエイターにその極意を聞くという本企画。最終的には弊社アクティブゲーミングメディアが販売に携わる『アクションゲームツクールMV(Steamリンク)』の購入を検討してもらいたい……という主目的はあるものの、職人たちのこだわりについては多くの方が興味を持っているだろう。アクションゲームをつくった、もしくはアクションゲームを作っているというクリエイター達に、その真髄の一端をお聞きしていく。第三回のゲストは、TeamTMT。
◆ゲーム『SnowFighters』のごしょうかい
ユッキーだよ!
SnowFightersは ユキダマをつくってなげる
2~4人であそぶ 雪合戦eスポーツゲームだよ!えらべるキャラクターは ボクたち6人!
チョーすごいEXわざも 使えちゃうよ!#SnowFighters pic.twitter.com/NAHrzmD3i7— SnowFighters公式 (@SnowFightersTMT) November 4, 2019
TeamTMTは、北海道情報大学に在学する2名、タキモト氏とトウシマ氏による学生チーム。彼らは現在『SnowFighters』を現在開発中だ。『SnowFighters』は、ユキダマをつくってなげる雪合戦ゲーム。“雪合戦eスポーツゲーム”と謳われている。雪玉を投げるというシンプルなシステムであるが、キャラクターたちは縦横無尽に移動するほか、戦局を変えうるEXわざもそれぞれのキャラに用意されている。そんな『SnowFighters』は、今年9月に正式リリースをはたした『アクションゲームツクールMV』にて開発されている。開発の苦労やこだわりについて、チームに話を訊いた。
タキモト:
タキモトといいます。我々TeamTMTは、大学で毎年行われているゲーム制作コンテストの参加に向けて結成した学生チームです。我々2人は前年度のコンテストにも同じチームで参加したのですが、不完全燃焼な結果に終わってしまいました。今年はそのリベンジとして参加しました。自分のゲーム開発歴は今年で約6年になりますが、こうしてゲームを共同で制作するのは2回目になります。
トウシマ:
トウシマです。自分は大学からゲーム制作を始めたので、3年と少しといったところです。大学内で行われた2018年のゲーム制作コンテストに参加するためTeamTMTを結成しました。昨年に引き続き「今年もコンテストへ!」という想いでこのチームで参加し、その結果、東京ゲームショウ2019へブースを出展することになりました。
『SnowFighters』のはじまり
タキモト:
ゲームのコンセプトには、ゲームをあまりやり込まない人でも触れやすいようなシンプルな対戦ゲームを作りたい、というのが軸にありました。そこから知名度もあるであろう、既存の遊び”雪合戦”をテーマに選びました。
当初はターン制のパズルゲームのようなシステムにする予定だったのですが、アクションの方が見栄えも良いし、雪合戦のスピード感も出るだろうということで初期の時点でアクションに路線変更しました。”雪を作って投げる”という基本のシステム自体は当初より変わっていないので、コンセプトをきっちり考えてつくったと言えるのではないかなと思います。
トウシマ:
自分はタキモトさんが提案してくれたものに、ちょっとしたものを加えて提案してみる、というようなことをしていたと思います。大本の案は、ほぼタキモトさんのものですね。
タキモト:
『アクションゲームツクールMV』を使おうと言い出したのは自分の方で、というのも、このソフトウェアの早期アクセス版が出た頃に、興味本位で自分が個人的に購入していたんです。その後、相方(トウシマ)から今年も一緒にゲームを作ってくれと頼まれチームを結成しました。『SnowFighters』の企画を自分が考えたのち、ゲームエンジンを何にするか決める段階で、このソフトウェアならば自分たちの作りたいものが確実に作れると考えました。そして、時間短縮にもなるので『アクションゲームツクールMV』にした方がいいと強く勧めて、相方にも購入してもらいました。
トウシマ:
『SnowFighters』のゲーム性が固まって来た頃に、タキモトさんから紹介してもらい、他のツールと比べてどちらが作りやすいか、どちらが望む挙動に近づけるかを考えた結果、『アクションゲームツクールMV』を選びました。自分はどのツールを選ぶかかなり迷っていたんですがタキモトさんから強く勧められてこちらで作ることにしました。
アクションゲームは何からつくり始めればよいか
タキモト:
企画を思いついてから最初に制作したのは6体のキャラクターデザインです。講義用のノートに6体を同時にデザインして、それから何の推敲もなくドットグラフィックをつくる作業に移行しました。自分はドット絵を打つのが趣味だったため、すべてのドットは自作しています。キャラクターのドット絵ができた時点で雪を作って投げるシステムを自分が仮組みし、後は相方に組んでいってもらいました。
トウシマ:
はい、自分は仮組してもらったシステムを仕上げていきました。自分が最初に取り組んだのは、システム面でキャラクターの挙動です。最初はキャラクターの基本的な挙動を作り、次にキャラクターセレクトの画面、キャラクターの調整をといった順でつくりました。
タキモト:
そのあとにステージのチップや背景、UI・キャラクターの立ち絵をつくり、最後に音楽をつくっていきました。曲をつくることも好きなので、一部の効果音を除き、素材周りはすべて自作ですね。
アクツクMVでアクションゲームをつくるときの、ちょっとしたコツ
タキモト:
アニメーションを作るときのスプライトのフレーム枚数に緩急をつけるとメリハリがついてオススメです。『SnowFighters』では、キャラクターのフレーム数は基本的に4~5fで固定です。しかし、必殺技の爆発やビームのアニメーションなんかは2fという早い切り替えで動かし、終わり際にはフレーム数を2f→6f→7fといった風に減速させていっています。
また、スノーボというスノーボードを使って移動するキャラクターが居るのですが、他のキャラクターと違って滑るような移動をさせたかったので、移動速度を変更する【移動とジャンプ】の項目で加減速にチェックを入れて、それを実現させています。
トウシマ:
キャラクターの中に必殺技で大きな雪玉を投げる子がいます。その雪玉は画面内のタイルを無視して縦横無尽に動き回りますが、一番下のタイルにだけは跳ね返るように判定の付け方を工夫しています。同じグラフィックですが、判定の設定を変えているので、見栄えのいい必殺技になっていると思います。
また、必殺技で分身するキャラクターがいるのですが、キャラクターの分身が投げる雪玉を本体に当たらないようにするために、コントローラーID変数の設定を使用しました。雪玉のコントローラーIDを親オブジェクトであるキャラクターと同じにして、同じコントローラーIDだと当たり判定を無視するという設定をしました。
ゲームづくりの苦労
タキモト:
このソフトウェアを使うこと自体初めてだったのもあり、仕様を理解するまでは回りくどい方法でシステムを組んでいたのもあって、相当数のバグと戦ってきました。グラフィック面の苦労でいうと、判定の付け方、に付随するものなのですが6体分のドット絵をバランスよく作るのはやはり大変でした。このゲームのキャラクターは、ひとりあたり判定の大きさが全員一緒なので、グラフィック側でも違和感のないように大きさを合わせるのに悩んだ覚えがあります。
トウシマ:
苦労というと、やはりバグ取りな気がします。かなりの数のバグがあったので、結構時間がかかりました。特にキャラクターはみんな必殺技が違うのでそこのバグが沢山あり大変でした。必殺技を使うと永続的に無敵になったり、キャラクターそのものが消失したり……。
ただ強いて言えば、バグを取るよりもバグを見つける方に苦労しています。何が原因か分からないと手の施しようがないので、周りの人たちにプレイしてもらって再現を見つけることもしばしばでした。
アクションゲームツクールMVのいいところ、悪いところ
タキモト:
『アクションゲームツクールMV』は、いい意味で“ツクールっぽさが出ない”ゲームを作れるところが、良い点だと思っています。自分はこれまでにRPGのツクールシリーズでもゲームを作ったことがあるのですが、それらに比べるとタイルや画面のサイズ、アニメーションのループ枚数やフレームまで自分で指定できるため自分の作りたいものが縛られずに作ることができ、気に入っています。
反対に、坂を作る機能があるのですが、エディタ上で直接線を引かなければならないのが少し大変です。あと無理をさせるとすぐ落ちます(笑)。
トウシマ:
基本的な機能だけで、プログラミングを使わずにいろんなことが出来るのが良いと思います。アクション同士をつなぐリンクの設定次第で、どんな挙動も作れるのではないでしょうか。大変なのは、フローチャートをコピーペーストするときに、複数のリンクとアクションを同時に選べないことですね。一部の設定だけコピーしたいときに二つのオブジェクトを行ったりきたりするのは大変でした。
新たなアクツクラーへのメッセージ
タキモト:
今は、ゲームは道具さえあれば誰でも作れるすごい時代だと思っています。自分はプログラミングに関してはからっきしなので、ツクールシリーズには毎度お世話になっております。アイデアをカタチにするのは思ったよりもカンタンです。技術に関して壁を感じている方でもぜひ試してみてください。
トウシマ:
『アクションゲームツクールMV』はとても手軽にゲームのシステムを作れるツールだと思います。いろいろな設定があるので、たくさん試してみるといいのではないかと。
『SnowFighters』は、今冬12月~1月頃にPC(Steam)にてリリースを予定しているという。 現在はプレイヤー同士での2人~4人対戦のみ実装。一人でも遊べるCPU戦を追加したり、演出面や操作性を改善すべくが、開発が進められている。リリースの告知などは公式Twitterアカウント(@SnowFightersTMT)で発信されているので、フォローしてみてはいかがだろうか。
アクションゲームツクールMVとは
アクションゲームを作りたい。でもプログラミングは難しい。そんなユーザーのための『ツクール』シリーズの新作(ストアリンク)。オーソドックスな2D横スクロールアクションはもちろん、ベルトスクロール、トップビュー、多人数対戦、レース、パズル、ビンポール、シューティング、メトロイドヴァニア…王道のアクションだけでなく、ホラー、アクションRPGも制作できる。2段ジャンプやバックステップ、武器変更、落ちる床も重力設定も、物理演算も楽に設定できる。タイル数回のクリックで、設定をしてステージを作成可能。自由度が非常に高い分、覚えながら理解を深めることが多いが、使いこなせれば多岐にわたるジャンルの作品が自由に作れるようになる。頭の中だけにあったオリジナリティに溢れるゲームを世界に生み出すことができるツール、それが『アクションゲームツクールMV』である。