Unreal Engine 4製インディーゲーム開発者座談会。「UE4の学習方法・オススメツール・外注先との付き合い方」編
ゲームエンジンUnreal Engine 4を使いたくましくゲームを作っている開発者4名が集い、開発における喜びや苦悩、コツや勉強法などを共有する本企画。参加者は『ジラフとアンニカ』を作る紙パレット(@kamipallet)氏、『Link: The Unleashed Nexus』を作るSig(@sleepyslowsheep)氏、『幻想郷ディフェンダーズ』を作る少佐(@__syousa__)氏、『Assault Spy』を作るWazen(@Assault_Spy)氏の4名で、司会を務めるのは引き続きEpic Games Japanの岡田和也(@pafuhana1213)氏。
前回の「私たちがUnreal Engine 4を選んだ理由」編では、Unreal Engine 4を導入したきっかけや、ブループリントをどの程度使ったのかといった話をしていただいた。パート2となる「UE4の学習方法・オススメツール・外注先との付き合い方」編では、UE4の勉強法や、アセットの使用頻度、外注先との付き合い方といった、より実践的なお話をしていただく。
とりあえず極め本
岡田:
今でこそドキュメントや本など資料が揃ってきましたが、UE4が出た2015年当時はそうではなかったかと思います。当時の勉強法と、今からUE4を使いたい人向けの勉強方法について教えていただけますか。
紙パレット:
参考書「Unreal Engine 4で極めるゲーム開発(以下、極め本)」ですね。むしろこれが出たから、ゲームを作れそうだと思いました。これを一通りやればゲームを作れるんじゃないですかね。
Wazen:
極め本をひととおりやろうとしたのですが、隅々まではできないというか、途中で少し飽きてしまいました。ただこれのおかげで自分でもどうにかできそうなところまで到達できたので、プロジェクトをスタートしました。そこから先は実装するに伴い、さらに学んでいった形です。プログラムの学習もそうだと思うのですが、実際に動くところを見るのが一番のモチベーションになります。あれやりたい→やり方を勉強しよう→できた!というのを繰り返すことが吸収への近道だと思います。極め本にのっているのは基本的な部分なので、それ以外のところで困った場合はフォーラム(UE4 AnswerHub)で聞きました。AnswerHubで質問すると、alweiさんという人に助けてもらって……。
※ alwei
ゲーム制作スタジオ Indie-us Gamesの代表。Unreal Engine 4に関しては屈指の知識を持つ。弊誌で執筆することも。
岡田:
alweiさん、でてきましたね(笑)。AnswerHubは日本語と英語どちらも見ていますか。
Wazen:
大体は日本語ですが、Google翻訳を使えばなんとなくわかるので、英語も見たりします。ただ、既出の質問がないか調べるぐらいはやらないといけないとは思っています。
#AssaultSpy 運動強化アーマーを着た二刀流モニターマン pic.twitter.com/JY6deO7Jln
— Wazen K | Wishlist MIGHTREYA on Steam (@WZN__K) July 29, 2018
※『Assault Spy』のスタイリッシュな戦闘シーンをアップし、ファンを喜ばせているWazen氏
少佐:
僕はまずUnreal Engineのシェーダーのコードを読んで、そこからUnreal Engineの公式のC++のチュートリアルをやって、Paper 2Dのプラグインを読んで仕様を把握して、プラグインと描画をかいてスタートした形ですね。
岡田:
コアですね。誰かのブログかなと(笑)。いきなりエンジンコード読むんですね。
少佐:
そうですね。とりあえずプロシージャルのメッシュを作り、それを使ってマップを作ったりします。そんなスタートでした。ブループリントなしでC++だけで作ろうと思ったんですが、さすがにアニメーションなどはC++ではアクセスできないので、描画周りはブループリントで置き換え始めました。
岡田:
普通はブループリントを使っていって、C++で補完する形が多いと思うんですが……逆方向からやったんですね。
少佐:
逆方向からやりました。マジでオススメしません(笑)。ただ、そういう経緯があったので中身をよく知れました。ゲーム作りの流れはこれまでの経験から把握していたので、自分の知識をUE4にどう当てはめればいいのかを考えました。
岡田:
ということは、技術的に困った時はエンジンコードを見る感じですか。
少佐:
エンジンコードを見るか、英語のAnswerHubを見るかですね。それと、日本のブログですね。
Sig:
試行錯誤して、行き詰まったらYouTubeでチュートリアル動画を見ています。英語で喋っているのを見よう見まねで。真似するところから理解を深めていきます。
少佐:
僕もデザイン的な話ではYouTubeに頼っていました。「~~を1時間で作る」といった企画ですね。そのへんを一通り見て把握しました。
Sig:
その後、ブログなどが増えてきたので参考にしています。最近は、海外のフォーラムも漁っています。
岡田:
日本のみなさんはあまりフォーラム見られてないんですよね。海外フォーラムではサンプルなども公開されているんですが。このへんもユーザーの方に是非見てほしいですよね。
紙パレット:
極め本に手を付ける前に、ブログを見て少しだけやったことがあります。ただ、キーを押すと何かがスポーンするというところまでしか情報がなくて、自前で作ったモデルをいっぱい出して楽しんではいたのですが、それ以上は何もできませんでした。なにせ、ゲームのプログラミングにおいては素人でしたので。極め本が出たのと、我妻さんの話を読んだのと。それから一冊やればとにかくわかるという本(極め本)が出たので、それは一番最初から最後までやりました。PDFの付録も全部やりました。その後、自分のゲームを作る上で足りない知識はalweiさんや岡田さんのブログを見ました。
岡田:
そ、それはいいですねえ(照れ笑)。
紙パレット:
alweiさんと岡田さんのところを見れば必要な情報は書いてありました。僕はそんなに複雑なことをやってなかったですしね。日本語で検索しても出てこなかった内容でいうと、ゲーム内で物を調べる時などにダイアログ、データベースみたいなものを表示する方法がわからなかったんです。結局、ブループリントのアセットを買って解析して勉強しました。最終的には全部使えなくなり、全部作り直したのですが、ブループリントのアセットを参考にするのはいいかなと。自分の目的の機能があるものを買って中身を解析して真似して作ればいい。勉強できるんですよね。疑問はだいたいAnserHubを調べれば答えが出てくるので、今は情報が充実していると感じています。
岡田:
調べれば出てくるのは、オープンにしているメリットのひとつかなと思っています。会社の内製エンジンの情報とかググってでてこないでしょう?(笑)
一同:
出ないです(笑)。
今から始めるなら
紙パレット:
初心者が今から始めるとすればどれがいいですかね。極め本も結構前の本ですよね。
岡田:
そうですね、バージョン4.7ぐらいのものですよね。今の人にオススメしたい教材はありますか。
Wazen:
今のゲームのバージョンを考えても、やはり極め本がいいかなと思います。あとalweiさんの本と茄子さんともんしょさんのマテリアルデザイン本ですね。この3つがあればいいんじゃないですかね。
岡田:
今でいうとUdemyも評判がよくて……、みなさんはもうUE4歴が長いので使っていないと思いますが。
紙パレットさん:
Udemyのイチオシの人はどなたですかね。
岡田:
名指しするのは難しいですね……立場的に(笑)。
Wazen:
Unreal Festで登壇していた方じゃないですかね?Unrealお兄さんを名乗られていた(※)。
Udemy – 作って覚えるアンリアルエンジン 【Unreal Engine 4】 ~ダンジョンゲーム編~
https://www.udemy.com/unreal-engine-4-award/
岡田:
そうですね。アセットも色々入っていて安いというのはあります。定価は高いんですが、いつもはこのくらいの値段(95%オフの1300円)なので。本より安い。今後はUdemyのオンラインコースが増えてくるのかなと思います。
そういえば、みなさんはランチャー版を使っていますか。ビルド版を使っていますか。
Wazen:
ランチャー版ですね。
Sig:
僕はビルド版ですね。
岡田:
エンジンアップデートはその都度ですか?溜めてたりします?
少佐:
それは悩んでますね(笑)。どうしようかなと。
Sig:
4.15からのやつが残っているのですが、そこから4.20にして大丈夫なのかなと……。
少佐:
リリースしたゲームをアップデートするのも、どうしようかなと思っていて。パッチを作ってもいいんですが、結局やってないんです。アセットの互換性も変わっちゃうので、調査に時間がかかってしまうんですよね。
岡田:
みなさんはやはり、落ち着いたタイミングで移行されるんでしょうか。
紙パレット:
新しいもの好きなので、割とすぐにアップデートしちゃいます。
少佐:
そうしたいのは山々なんですが……(笑)。
紙パレット:
そう聞くと、発売前にアップデートしないといけないなと思いますね。
少佐:
発売前の最後の段階でアップデートした方が絶対いいですよ。
岡田:
アップデートするとやはり調整に時間がかかりますか。
紙パレット:
僕の場合は1週間ぐらいは、やはりかかりますね。
岡田:
今後スケジュールを立てる時は、1週間を見積もったほうが良さそうですね。
Wazen:
どこかで線引きはしたほうがいいですね。これ以上アップデートしないとか。うちはもうアップデートはやらないですね。Steamで出してますし、デバッグで手一杯なので。
岡田:
デバッグもリリース後になると、いちからになりますしね。
Wazen:
前はリリースノートを見て魅力的な機能があればアップデートしていたんですが、今はもうできないですね。できる環境があればしたいんですが。
少佐:
僕の場合はひどいことに、PC版が4.16でPS4版が4.18になっているんです。リリースタイミングの都合で。そうしたバージョンごしのパッチなどをサポートしていただけると嬉しいんですが、やはりそれは難しいのかなとは思っています。
岡田:
そうですね、過去のバージョンともなると……。実はUE4のリリーススケジュールは少し楽になりました。一年に5.6回やっていたものが3.4回になってアップデートの頻度は落ちたのですが、その分ボリュームが増えまして……。ぜひアップデートはお早めに。
どんなツールを使えばいいのか
岡田:
少し話は変わるんですが、アセットの自作ってどのくらいされていますか。
Sig:
ほぼ自作ですね。
少佐:
背景は9割マーケットプレイスのもので、キャラは全部外注込みの自作です。エフェクトもそうですね。
紙パレット:
背景は7割ぐらいマーケットプレイスのものですね。Landscape auto materialとかUltra Dynamic Skyとか。定番のものですね。音楽は全部オリジナルです。SEは買ったものもあります。キャラクターはオリジナルですね。僕が100%作ったといえるのは主人公だけで、ほかは外注を使っています。1億円とかあれば何から何まで全部自分で作りたいんですけどね(笑)。ただマーケットプレイスだと10万円ぐらい出せば、だいたい買えるんですよね。
岡田:
アーティストさんなら、こだわりが強そうですよね。『Assault Spy』は、マーケットプレイスにないようなアセットも多いイメージです。世界観も独特ですし。
Wazen:
背景もエフェクトもSEもマーケットプレイスです。余談ですが、『PUBG』をやっている時に、車止めのアセットを見て、これ見たことあるなあと思っていました。白と赤のやつですね。UE4でゲームをつくったことがある人なら、『PUBG』の背景はマーケットプレイスのアセットを結構使っていることに気づくと思います。
アセットは自分で作るより断然早いですし、質も高いので3000円払ってゲームで雰囲気作れるなら安いものだと思います。マーケットプレイスさまさまですね。
岡田:
あまり使わない方からは高いと言われる時もあるのですが、作る工数とかを考えるとめちゃくちゃ安いと思っています。
Wazen:
超安いですよ。あれを安いと思えるようになったら、デベロッパーを名乗れるかなと。
一同:
(笑)
Sig:
アセットは安いんですけど、どうしても自分で作りたくなっちゃうんですよね。ただUltra Dynamic Skyとポストプロセス関係とか効果音はアセットですね。Blenderで作って、Substanceやって、UE4に持っていって。どこからどこまで自分の作品だろうというところもあるので。でもマーケットプレイスのものを置くと明らかに見栄えが良くなるので、悩むところですね。
◎貴サークル「Reminisce」は、金曜日 西地区“る”ブロック-07b に配置されました。
ということで今年の夏コミも出ます!相変わらず3Dアクションです。
開発中の画面をちょっと出し#C94 #UE4 #LinkRH pic.twitter.com/fIBGPrj76q— Sig 🎮インディーゲーム開発 (@Sig_RS) June 8, 2018
※Sig氏もまた『Link: The Unleashed Nexus』の動画をSNSにて投稿し、ユーザーを魅了
少佐:
マーケットプレイスで買いはするんですけど、最終的に細かくいじってます。LOD(Level of Detail)を散々いじって、テクスチャの解像度を全部落としてます。PCならいいんですけど、コンソールだとそのまま使うのは厳しいです。
紙パレット:
モバイル向けのアセットだと、もともとが軽いので楽ですよね。(Epic Gamesがサンプルを配布している)『Infinity Blade』とか使えますし。
少佐:
それはありますね。
岡田:
この記事読む方はご存知だと思うんですが、やはりコンソールはPCよりもスペックが劣るので、ぴったりはめるというのは難しいと僕も思っています。なにかしら手は加えなければいけないかなと。
紙パレット:
僕は、モーションのアセットも結構使っていますね。マーケットプレイスじゃなくてAdobeのストア(Mixamo)のものを、そのまま使っています。あそこのストアは結構数もあります。モーションのクオリティが高いとゲームのクオリティが高く感じるので、本当はモーションもオリジナルで作る方がいいのですが。
岡田:
他の方は、モーションは自作ですか。
一同:
はい。
少佐:
僕のゲームはモーションの数も少ないので、視点でごまかしています。俯瞰だと目立たないかなと思うので。モーションには時間を割けられないんです。
Sig:
自作モーションは、ところどころ厳しく感じますね。どうしても細かい部分に粗が見えてしまうというか。
紙パレット:
自宅でモーションキャプチャーするとどうなるか気になりますね。Viveでとるとか。「Perception Neuron」とか。
岡田:
開発環境・機材関連の話でいうと、みなさんオススメのツールや機材はありますか。
少佐:
エ、エクセル……。
一同:
(笑)
少佐:
僕のところは、マップ生成は全部エクセルでやってます。マップチップもエクセルで書いてエクスポートしています。エクセルを方眼紙にして、全部マップサイズ決めて、細かく使っていくという。レベルデザインや配置などもエクセルでやっています。それをUE4で出力して、見た目をかっこよくしていく流れです
Wazen:
僕の家は電源が弱いんです。下の階で焼き肉とか焼くと、電源が落ちるんですよ。真っ暗になってしまう。だから無停電電源装置をおすすめします。
一同:
(笑)
Wazen:
下で焼き肉しても怖くない。モニタは落ちてもPCは落ちないぞと思えます。
岡田:
セーブデータが消えないのは、大事ですね(笑)。
Wazen:
あとはSVN(Apache Subversion)ですね。サブバージョンをバックアップできる。SSDにまるごとUnreal Engineを入れたら早くなりますよね。
少佐:
それは僕もやってます。Unreal Engine専用SSDがあります。
岡田:
ゲームエンジンだとやはり、データも大きくなるので、SSDとメモリもたくさん載せていただけると……。512GBはほしいですね。
紙パレット:
2TBのやつを使っています。
Wazen:
1TBでマウントをとろうとしたんですけど、2TBの方がいた……。
一同:
(笑)
岡田:
作業時間を短縮できるので、スペックはほしいところですよね。ちなみにみなさん、使っているモデリングのツールはBlenderですか。
紙パレット:
昔から使っていて慣れている、Maxを使っています。
Wazen:
Mayaです。Blenderを使うとストレスがたまって辛いんです。メタセコイアなら使えるのですが、少し機能が足りなくて。結局、業界の標準がMayaなので、誰かと共有して作業する場合はMayaじゃないと厳しいかなと。
岡田:
Epic GamesはMax派が多いですね。Maxのスクリプトだけ公開されてMayaがないとかありますね。
少佐:
僕らは最終的には全てBlenderを経由しています。Blenderにインポートする前は様々なツールが使用されています。他にはエフェクト作成としてEffekseerを使用しています。
紙パレット:
ほかには、うちはPerforce(ソフトウェア構成管理ツール)を使っています。確か5人までなら無料です。あとはチームコラボレーションソフトウェアのConfluence(コンフルエンス)を使っています。こちらも小規模チーム向けのプランがあって10名までなら月$10で使えます。
Wazen:
Confluenceは、ページが分かれていて仕様書を書いていくような感じですか。
紙パレット:
そうですね。誰でもワープロ感覚で書き込めます。
外注先とのコミュニケーション
岡田:
有益な話が聞けたところで、外注の話をしましょう。UE4は外注しやすいとはよく聞きますが、実際はどうですか。外注する際に注意していることなどはありますか。
少佐:
仕様書を書くことですかね(笑)。エクセルに情報を詰めて、あとはイメージどおりに返ってくることを祈るのみ……。
Wazen:
外注で悩んでいることは、外注とゲーム制作の相性の悪さですね。ゲーム制作は試行錯誤の作業じゃないですか。ただ外注すると、作ってもらってからやり直してもらうということがやりづらいんですよね。上限回数を設けてくださいと相手方に言われることもありますし、今やりとりしている代金では対応できないという話にもなってきます。最初に伝えるところをすごく頑張らなければいけない。頑張って伝えるためのコストも高いと思うんです。そういう相性の悪さがあります。ただ、自分の時間だけではゲームを作れないので、外注を使わざるをえない。付き合っていかなければいけないものなので、悩んでいるところです。
理想としては、イメージがずれないように資料を作り説明をして指示することですよね。もしくは、はじめの段階で、やりとりの行ったり来たりが発生してもいいような契約を結んでおくか。その場合は多めにお支払いする形ですね。もしくは、予算として割り切り、自分でアレンジする形もあります。中には「満足するまで作ります、フィードバックをください」と言っていただける方もいて、そういう方はありがたく思っています。BGMの方に多い印象ですね。外注は大量に使っているわけではないんですが、みなさんの体験談を聞きたいなと思い共有しました。
紙パレット:
僕は会社勤めのとき、特にキャリアを積んだ後半の頃は自分で手を動かすことは減っていました。なので他の人に仕事を振っても、自分の世界観ができていれば自分の作品だと思えるので、外注することにあまり抵抗はないですね。絵まわりについては、会社勤めのときに発注の経験がありましたし。たとえば漫画のシーンでは下書きは自分で描いているのですが、仕上げとかは外注先にお任せしています。
背景の3Dモデル制作をMotonakさんという、UE4の神社のアセットを作った有名な方に担当して頂いています。あの方はすごく優秀です。通常は、背景の設定などをがっちり書いて、この通り再現してくださいとお願いするんです。でもMotonakさんぐらいになると、簡単なラフで伝えるとグレーボックス(ラフ)がきて、一度歩いて広さを確認してみるといった流れでスムーズに進められます。
外注は優秀な人と組んだほうが楽になると思います。やり取りの回数も減りクオリティも高まりますし、いろんなところを汲んで、いい具合に仕上げてくれますしね。最初は外注先をひとつだけにしようと思っていました。僕が絶対にできない「音楽」です。音ゲーの要素があるのに音楽がつくれなくて(笑)。そこはイメージだけ伝えて、音楽担当の方にお任せで制作して頂いています。
Wazen:
BGMって、専門分野じゃないですか。自分は分野外なんですけど、あがってきたBGMが思ったのと違うぞ、という時はフィードバックを返しますか?
紙パレット:
イメージと違うときはフィードバックを返しています。ずっと音楽のディレクションをやってきた方であればうまくできるのかなと思うのですが、僕は経験がないので苦労しています。一応、Googleスプレッドシートで音楽のシートみたいなものを作って共有して、このステージの曲はこういうイメージですというのを伝えるようにしています。
Wazen:
相手の出方をうかがいながら、リテイクを出すかどうか考える時はありますね。クオリティを求めるのはユーザーを喜ばせるためなので、妥協はできない。一方で、あまりリテイクが多いと相手は怒りますし、ゲームを完成させないといけないというジレンマも感じます。
紙パレット:
もともとリテイクの少ない人を選ぶというのは重要かなと。Motonakさんはリテイクがほとんどなくて、細かい調整を一回するくらいです。優秀な方だと楽ですね。
岡田:
決定権があるからこそ、やり取りもしっかりしないといけないんですよね。ありがとうございます。
Wazen:
イラストをやっていただいたおぐちさんは、ゲームそのもののクオリティを引き上げてくれました。ゲームの顔となるイラストを描く方なので、外注と言っても、ちょっと毛色が違うかなとも思いますが。音楽を作る方や、Motonakさんもそういう方なのかなと思います。
Sig:
やっぱりイラストとボイスだけは外注しないといけないので……。
少佐:
ボイスのディレクションはヤバいです。フルボイスでテキストは3万文字以上あるので、かなり大変でした。キャラ数も多いので声優さん十何人とかになりました。面白かったのは、声優さんをまとめる声優さんがいたことです。まとめ役の声優さんにツテなどで候補者を紹介してもらって、そこから声を聞いて選んでいくという流れでやりましたね。
Wazen:
僕のゲームのテキストはギャグテイストなんですが、僕が書いたところとニュアンスが違うというのは何個か聞き逃したものはありましたね。声優さんをまとめる声優さんと同じように、音響監督さんなどもいらっしゃるので、素人でもこうしたいというのを監督さんに伝えれば声優さんにわかりやすく説明してもらえます。そういう方に頼れば自分のイメージした内容に仕上がると思います。ただ、最初は慣れないので、どうしても難しいですよね。
紙パレット:
スタジオを借りて収録が終わった後で、なんか違うなと思ったとしても、リテイクするにはコストがかかりますしね。一発収録で終えられるよう、しっかり事前準備をしておくことが大事です。
少佐:
僕の場合は自宅録音が多かったです。声優さんの自宅とか。ただ、そうなると音質の調節とかが難しくなります。クオリティを求め始めると、いいスタジオを借りないといけないという話になってしまいますね。
紙パレット:
大手会社が作っているゲームのクオリティに近づけたいと思えば思うほど、どこらへんで妥協するべきか悩ましくなります。
一同:
ああ……(同意)。
岡田:
大手会社も実は予算や時間の制約の中でやっていたりしますが、それでもクオリティを近づけるのは難しいですよね。外注先の人がUE4を使っているケースというのは珍しいのでしょうか。
紙パレット:
そうですね。Motonakさんとはプロジェクト全体を共有して、直接調整してくださいという形でお願いできますが、基本的にはデータでのやりとりですね。
少佐:
同じく、基本的にデータですね。
岡田:
UE4で仕上げまでやりますという外注さんがいると嬉しいですか。
少佐:
レベルデザインとか含めて相性が良くないと厳しいと思います。お願いしたとしても、最終的には自分で直すことになりそうなので。
岡田:
ありがとうございます。それでは、制作まわりでEpic Gamesに求めていることを教えてもらえますか。
少佐:
パッチまわりはなんとかしてほしいですね……(笑)。資料がなかったのは、パッチとマルチランゲージ(多言語対応)ですね。他言語対応については、自分で記事をあげて共有しました。
紙パレット:
エンジンの日本語対応が中途半端で……。ブループリントの機能が日本語になっていると、気持ち悪いところはありますね。
一同:
ああー。
紙パレット:
あの辺は日本語化しなくてもいいような気がします。ただヘルプだけは日本語化しておいて欲しいですね。読むのに少し時間がかかるので、個人的にはオンラインヘルプだけでも集中して日本語化してもらえるとありがたいですね。
Wazen:
エンジンまわりの不満はいっぱいあるんですけれど、とにかくもっとゲームを簡単に作れるということをアピールして、人口を増やしてほしいですね。UE4ってどうしても敷居が高いイメージがあるじゃないですか。UE4というとリッチなイメージは普及しているのですが、簡単に使えると思っている方は少ないのかなと。もっと人口が増えればUnreal Engineを使っている人の地位も上がりますし、コミュニティも盛り上がります。今でも普及活動はやられているとは思うのですが。
岡田:
そうですね。難しいですね。僕が個人的に悩んでいるのは、こういう集まる機会というのを設けられていないことですね。コミュニティを広げたり、開発者同士で話す空間がTwitterしかないんです。コミュニティの方が勉強会を開いているのですが…。そうした活動をもっと広げられたらいいなと思っています。
紙パレット:
ほかには、トゥーン系のサンプルアセットなどが充実するといいのかなと思いますね。シンボルとなるキャラクターがいたりとか。僕自身はトゥーン系にあまり興味を持っていないのですが、一般的には食いつく人が多いと思うんですよね。UE4でもトゥーン系の作風にできるのですが、できるというイメージはあんまり定着していないという印象です。
Sig:
確かにUE4のシンボルとなるようなサンプルがあれば、それを使った画像や動画を作ることで人目につくのではないでしょうか。
紙パレット:
コストをかけてマスコットキャラクターみたいなものを作ってもらえれば、いいんじゃないかなと思います。
Wazen:
最近だとVTuberが流行っているので、UE4なら3クリックくらいでVTuberを作れますよ、みたいなアピールができれば宣伝になると思うんですよね。プログラムみたいにブループリントというもので線を繋いだらゲームを作れるんですよ、みたいに「ゲームを簡単に作れる」ことをもっともっと押し出していくべきだと思いますね。簡易的な制作ツールを使ってゲームを作ってみようと考えている中高生向けにUE4を推していくとか。とにかくすごいものなので、広めてほしいと思っています。
紙パレット:
僕も少し前までUE4はハードルが高いと思っていました。実際にそう感じるのは、動かすのにハードウェアのスペックが求められる点ですね。開発環境を揃えるための初期コストが少し高いんです。10万ぐらいのパソコンだと、内蔵GPUだけでは厳しいかなと。パソコンの買い替えから始めないといけないので、学生さんには厳しい。ゲーム業界の知り合いでも、ゲーミングPCを持っているのはUnreal Engineを使っている人くらいですね。ただ最近は大分安くなってきたので、『PUBG』や『フォートナイト』がもっと流行って普及していくといいかなと思っています。
岡田:
ありがとうございます。参考にさせていただきます……!
「インディーゲーム開発の苦悩とやり甲斐」編に続く
[執筆:Minoru Umise]
[撮影:Ryuki Ishii]
[編集・校正:Minoru Umise/Ryuki Ishii]