ガンシューティングゲームの歴史の中で黒い輝きを放ち続ける至高の迷作『デスクリムゾン』とは

筆者は思い出してしまった。黒歴史の隅に隅に追い込まれながらも、未だ邪悪な黒い輝きを放ち続ける迷作ガンシューティングのことを。その名は、エコールからセガサターンで発売された悪名高きガンシューティング『デスクリムゾン』だ!

ガンシューティングというジャンルがある。FPS(ファーストパーソンシューター)とは違い、ガン型コントローラーを使ったプレイスタイルのジャンルで、FPSのようにマップを自由に歩き回れるのではなく、基本的には強制移動式。初期のころは『ワイルドガンマン』や『ホーガンズアレイ』といったファミコン向けのタイトルも登場しており、その歴史は古い。

また過去、アーケードでは大型筐体の特徴を生かした直付けタイプのガンシューティングが主流で、機関銃型のガンコントローラーを使った撃ちまくりの系のタイトルが多かった。1981年生まれの筆者のプレイ体験としては、アーケードゲームの『ターミネーター2 ジャッジメント・デイ』などが、極めて初期のガンシューティングゲームの記憶である。

1992年、コナミの『リーサルエンフォーサーズ』のヒットで状況は一変。それまでの撃ちまくり系ではなく、限りある弾数の中で、いかに効率よく敵を倒していくかという思考性を重視したガンシューティングが数多く登場するようになる。1994年にセガがリリースした『バーチャコップ』などは、ガンシューティングを代表する名作タイトルとして、今なお多くのファンに愛されている。ガンシューティングといえば、撃ちまくり型ではなく、『リーサルエンフォーサーズ』や『バーチャコップ』を思い浮かべる方も多いのではないだろうか。

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セガの名作ガンシューティング『バーチャコップ』(画面はセガサターン版のもの)

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しかし1990年後半を境に、ガンシューティングは徐々に衰退。現在、ガンを使ったシューティングとしてイメージされるのは、『コール オブ デューティ』、『バトルフィールド』『HALO』シリーズなどのFPSだろう。このガンシューティングというジャンル、もともと北米ではメインストリームではなかったことや、国内でも100万本200万本といったミリオンヒットに至るまでのジャンルではなく、どちらかというと、コアなゲームファンに支えられてきた経緯がある。また、タイトルによってデバイスは違うが、基本的にガン型コントローラを必要とする限定されたプレイ環境となる。さらに、『バーチャコップ』や『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド』など、有名タイトルもあるにはあるが、後に続くヒットタイトルがなかったことも影響してか、アーケードを除くと、今ではガンシューティングの新作タイトルを見かけることはないに等しい状況になってしまった。

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『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド』(画面はセガサターン版のもの)

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さらに苦しいことに、テレビがブラウン管から液晶へとチェンジしたことで、ガン型コントローラが使えなくなり、レトロハードを所有しているマニアですら、現役でガンシューティングをプレイしている人は少ない。そのためか、今やガンシューティングの熱心なファンなどはほとんど残っていないように思う。しかし、筆者は『バーチャコップ』や『リーサルエンフォーサーズ』に非常に深い思い入れがあり、今でも気が向いた時にこれらのタイトルをプレイすることがある。(家にブラウン管テレビも設置)

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ブラウン管テレビじゃないと、ガンコントローラが使えないのです……

そんな時、筆者は思い出してしまった。黒歴史の隅に隅に追い込まれながらも、未だ邪悪な黒い輝きを放ち続ける迷作ガンシューティングのことを。その名は、エコールからセガサターンで発売された悪名高きガンシューティング『デスクリムゾン』だ!

コアなゲームファンであれば、このタイトルを知らない方はいないだろう。あまりにもガビガビでショボすぎるポリゴンキャラクター、崩壊したステージ構成、無敵時間なしの理不尽すぎる超絶難易度など、悪いところを挙げだしたらキリがない。また、オープニングで主人公が言い放つ「せっかくだから俺はこの赤の扉を選ぶぜ」(扉は赤くない)、ダメージを受けたら「やりやがったな!」など、天然なのか狙っているのか微妙なラインをついてくる迷セリフも味わい深い。また、作りが超テキトーで、苦笑いを禁じ得ない取り扱い説明書など、ゲーム部分以外でもツッコミどころは満載。

しかしこの『デスクリムゾン』の破天荒さが逆にマニア心をくすぐったのか、一部で大人気を博してしまったのだ。ネット上ではネタとして使われるなど、静かなムーブメントを巻き起こすまでに至った。その結果、中古市場では価格が高騰。一時は一万円を超える値段が付けられる珍現象まで発生した。
これがただのダメなゲームだったら、ここまで人々の心に焼き付くことはないだろう。「クソゲー」の一言で片付けられて、地獄のそこで静かに永遠の眠りについていたはずだ。そうならないのは、この『デスクリムゾン』という作品に、どこか憎めない独特の魅力があるからに他ならない。そこで今回は、そんな『デスクリムゾン』について語ろう……と思ったのだが、すでにこの作品はいろいろなところで語り尽くされているので、今さら筆者があーだこーだ言っても面白くない。

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そんな時、筆者は思った。『デスクリムゾン』を語る人は数多くいるが、初代に偏りすぎてはいないか、と。ご存知の方もいると思うが、『デスクリムゾン』には『デスクリムゾン2 -メラニートの祭壇-』(ドリームキャスト)、『デスクリムゾンOX』(アーケード→ドリームキャスト)といった続編が発売されているのだが、これらは、初代に比べて語られることが極端に少ない。初代のインパクトがあまりにも大きかったということだと思うのだが、当然、『2』と『OX』も『デスクリムゾン』の名を受け継いだ続編だ。このまま無視するのはあまりにも惜しい。今回はガンシューティングの簡単な歴史と、『デスクリムゾン』の概要を知ってもらったわけだが、次回は、『2』と『OX』にスポットを当て、あまり知られていないその魅力を少しだけ語ってみようと思う。そんなわけで、次回に続く!

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筆者の『デスクリムゾン』コレクション
Naohiko Misuno
Naohiko Misuno

少年時代にセガサターンとネオジオを手に入れたことで人生が変わったフリーライター。雑食なので面白ければなんでもプレイしますが、独創性の強いゲームを好む傾向アリ。最近はスマホとSteamのゲームを漁りまくっています。オススメゲームがあったら教えて!

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