『ツーポイントミュージアム』は、博物館ゲームだけど遠征して成果品を漁るのが楽しい。硬派なヘンテコ博物館経営SLGの世界とは

今回試遊したのはPC(Steam)版で、本記事の画像もすべてSteam版(日本語版)のものである。また、プレイ内容はCity Act 1~City Act 2の当該範囲のみであり、ゲームバランス等、一部の仕様については製品版と異なる可能性があるので注意してほしい。

セガから、PlayStation®5/Xbox Series X|S/Steamで2025年3月5日(PlayStation®5版は4月17日)に発売が予定されている『ツーポイントミュージアム』。発売に先駆けて、同作をプレイする機会を得た。どういうゲームなのかという点を中心に内容を紹介する。

今回試遊したのはPC(Steam)版で、本記事の画像もすべてSteam版(日本語版)のものである。また、プレイ内容はCity Act 1~City Act 2の当該範囲のみであり、ゲームバランス等、一部の仕様については製品版と異なる可能性があるので注意してほしい。なお、今回の試遊時間は約7時間である。

世界に一つだけの博物館

プレイヤーの目的は博物館運営を任された駆け出しの学芸員で、誰もが認める博物館を作り上げることにある。

せっかく運営を任されたのだから、最高の博物館を作って来館者を満足させたい、と気合いだけは十分だったが、そのあたりの知識はない。それでチュートリアルで教えてもらった通りに、看板、自動販売機、植物などを設置して来館者を満足させるように心がけてみた。機械のメンテナンスや、掃除をする人も必要なので、コスパ、いや腕のいい管理員を配置し、管理を行き届かせるようにした。

また見てるだけだとすぐに飽きてしまう厄介な子供、いややんちゃなお子様を満足させるために、体験型の展示を開始した。子供はインタラクティブなものに興味を示すものだ。そうやって地道な努力を積み重ねた結果、来館者から多くの寄付をもらえるようになってきた。その後も言われるがままに与えられた目標を次々と達成していくと、連動して新たに遠征可能な地域がアンロックされていった。遠征と成果品の収集要素は、以前のTwo Pointの作品とは明白に違う要素であり、これがまたスリリングでたのしい。展示品はどこかで購入することはできないので、遠征で見つけてくるしかない。この要素により、確実に止め時が難しいタイプのゲームへと進化している。

遠征では、化石、骨、氷漬けの原始人などなど多種多様な「成果品」が得られる。中には巨大恐竜のように、パーツごとに出土し、フルセットを完成させるためには、複数のパーツが必要になるものもあった。このどこか「あつ森」のような要素は、是が非でもコンプしたくなるのが人情だ。素晴らしい成果品を手に入れたら、じっくりと考えて、新たに博物館を再設計するのも一興である。

そうやって遠征を重ねることで展示品も増えてきて、だいぶいい感じになってきたなと思っていたら、星ランクが上昇したと文化局から連絡がきた。最初の目標を達成できたのだ。

このとき心に去来したのは、もっとここで遊びたかったな、という寂寥感だった。情が移ったのだ。とにかくこれで、他の場所の博物館を運営できるようになった。ここも一応継続できるようだったが、RPGでカンストした後のレベル上げのように、少なからず目標を達成した博物館運営を続けるのはそれなりのエネルギーとこだわりが必要である。今回は時間の制限もあり、あとで微調整することを誓いつつ、後ろ髪を引かれる思いで次に進むことにした。

複数の博物館運営へ

次の博物館は海のそばにある「パスウォーター・コーブ」なるところだ。ここでは海洋生物の水槽を作ることができ、採ってきた魚を展示することが可能だ。見た目の印象も最初の博物館とはかなり違っており、新たなアイテムなども増え、学芸員としては嬉しい限りだ。

ところで、最初の博物館をやっていた時は、丁寧な導入のおかげか、遊びやすい作品だと感心していたが、「パスウォーター・コーブ」では、段々様相が変わってきたのを感じてきた。ここでは、漫然とやっていてはダメで、ちゃんと考えて運営しないとうまく進められなくなってきたのだ。平たく言うと、金に困ってきた。なるほど、一つ目の博物館は練習のようなものであり、「本編」はそんなに甘くはないということなのだろう。これからどう運営すべきかは、ここまで培った技量と知恵を使って自分で考えなければならないのだ。

博物館の存亡を賭けた戦いが始まったのだ。リニアだった展開から非リニアな展開。どうすればいいか。遠征を繰り返して成果品を売却し、寄付金を集めるだけでは利益が残らない。今までのようにとりあえず遠征だけしてればOK、という状況でないのは確かだった。

それで足掻き続けていたら、いろいろとわかってきた。スタッフは給料だけでなくスキルを見て配置すること。ゲストのニーズに答えること。価格が変更できること。装飾を施して「関心」を上げることの大切さ。関心は寄付の大きさに直結する要素である。他にも可視化された情報の意味を理解して博物館運営すること。そうやって細かく改善していくうちに、努力の甲斐あって少しずつ収支は上向いてきた。

何より、部屋の正しい作り方を理解したのが、大きなブレイクスルーになった。部屋はルールを理解しないで何となく作っていたので、あまり活用できていなかったのだ。が、必要に迫られ、試行錯誤を続けていたら、部屋の成立要件を勘違いしていることに気がついた。いつも最低成立要件で作っていて、サイズを大きくしていなかったのだ。我ながらバイアスとしか言いようのない、単純な思い込みによるミスだったが、とにかくそれ以来、より本作を楽しめるようになったのは確かだった。

さっそく、既存トイレを拡張することにした。トイレは、博物館の規模に対してあまりにも狭い上、ケチって一つしか設置していなかったので、混雑が常態化していた。それで面積を広げ、大量の便器と洗面所を配置し、ほかにも消毒液、ハンドドライヤーを擁する要塞のようなトイレ施設を作った。

巨大トイレの効果は絶大で、一気にトイレ渋滞は解消した。が、今度は掃除が大変になってオペレーション的に回らなくなってきた。今までも清掃は最少人数で回していたので、仕事が増えたことで疲れや不満を口にし始めた。それで仕方なく、今度はスタッフルームを拡張し、自動販売機、ウォーターサーバー、ゲーム機などを置いて懐柔してみたところ、部屋でくつろいでくれ、たぶん不満は解消されたようだった。単純、いや気のいい奴だ。調子に乗ってお土産売り場も拡張した。着ぐるみを置き、ガチャも増やした。リフォームされた土産店の客足は上々で、レジはいつもパンク気味と大変にぎわうようになった。寄付金に頼らない、コストを切り詰めたスタンドアロンでの運営を目指す筆者としては、大満足である。

そう。あくまで本作は遠征ゲームなどではなく、博物館を運営するシミュレーションゲームなのだ。遠征は本作の重要な要素ではあるが、あくまで一部分に過ぎないので、遠征だけしていても博物館の発展は望めない。

だいぶ運営方法がわかってきたところで、並行して開放された「あの世」にある「ウェイロン・ロッジ」という博物館も始めてみた。超自然現象が起こるという、これまたユニークなエリアである。やれることが増えに増えて、再び嬉しい悲鳴を上げることになった。だがこのあたりで試遊終了。ここからもっと楽しくなりそうなところで止めざるを得なかった。無念である。

手触りについて

本作は触り心地がいい。画像や文章ではなかなか伝えにくいが、操作性がいいのだ。博物館を作るゲームであり、作りたいイメージを具現化できるかどうかは重要に決まっている。これからどんな場所に仕上げていくのか。どのように光をあて、どのような導線に誘導していくのか。効率にこだわってもいいし、見た目にこだわってもいいが、それらは自在に操れる。

チュートリアルは丁寧で、微に入り細を穿ったものだった。オブジェクトを意のままに動かせ、角度を変えたり、回転させたりすることはすぐにマスターできる。細かいUIの部分のできがいいので、終始余計なストレスを感じることなくゲームを楽しむことができた。

ビジュアル面も素晴らしい。背景も細かいところまでこだわられて作られており、思い思いに楽しむさまを眺めているだけでも飽きない。作った自慢の博物館を誰かに見せたくなってくる。

本作で少し残念だったのは、遠征で展示品を探すのが楽しい故に、品の種類が若干少なく感じる点か。遠征は、専門家が何を持ち帰ってくるのかが楽しみ過ぎて、何度も何度も行かせてしまい、根こそぎ集めてしまいがちになったので、もう少したくさんの種類があるといいのに、という欲望が生じてしまったのだ。

なんにせよ、この遠征して成果品を獲得し、それを展示するという流れはかなりの完成度であり、はまる要素なのは間違いない。ところで、本作の面白いところは、苦労して手に入れた成果品なのに、あっさりと売却が可能なところであろう。本来厳重に扱われるべき存在のはずなのに、簡単に金銭に変えられる、そういうファンタジー性は本作の醍醐味であり、Two Pointシリーズ「らしい」ユーモアの一端と言えそうだ。

最後に

ゲーム序盤に親しみやすいグラフィックや、充実したチュートリアルから受けるであろう本作の優しげな印象は間違っていない。だが実はその印象は、このゲームの仮初めの姿というのもまた正しい。

本作には奥行きがある。誰でも気楽に楽しめる上、マニアもちゃんと楽しめるようにするのは、どんなジャンルであれ容易ではない。複雑なルールが採用されている遊びは、何でも覚えれば面白いが、そこにたどり着くまでのハードルは高くなるからだ。だが本作はとっつきやすく、やりこむとまた違う姿を見せてくれる懐の広さをもっている。本作で採用された「遠征」の要素は、Two Pointシリーズの新たな境地を切り開いたと言っていい宝探しの楽しさと驚きに満ちており、しっかりと腰を据えてやりこみたくなるような作品である。

Masamune Oda
Masamune Oda

ゲームは何でも遊びますが、とくにシミュレーション系が好きです。時々古いゲームからしか得られない栄養をとってます。

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