基本プレイ無料シューターRPG『The First Descendant』開発者インタビュー。速すぎホバーバイクで最適化地獄、『ベヨネッタ』コラボの動機、裏話から今後の展望まで訊いた
東京ゲームショウ2025に出展した『The First Descendant』ブースにて、開発陣へのインタビューを実施。今後追加されるコンテンツのヒントや、日本のユーザーの特徴など貴重な話を聞くことができた。

ネクソンは8月7日より、オンライン協力TPSアクションRPG『The First Descendant』のシーズン3「Breakthrough(突破)」を開幕した。広大な新フィールド「アクシオン平野」やホバーバイク、8人協力のレイドボスなど、多数の新要素を導入した本シーズンは、2025年末まで継続的なアップデートが予定されている。さらに『NieR:Automata』に続き、『ベヨネッタ』との11月のコラボ実施が決定するなど、その勢いは増す一方だ。
弊誌は今回、東京ゲームショウ2025に出展した『The First Descendant』ブースにて、本作のディレクターを務めるチュ・ミンソク氏と、プロデューサーを務めるイ・ボムジュン氏へのインタビューを実施。今後追加されるコンテンツのヒントや、日本のユーザーの特徴など貴重な話を聞くことができた。また、実物大のホバーバイク展示などが大盛況だった『The First Descendant』ブースの模様もお届けする。

速すぎるスピードに悩まされたホバーバイク開発
——8月よりシーズン3「Breakthrough(突破)」が開幕し、広大なフィールドやホバーバイク、8人で挑むレイドボスなど、新たな要素が多く追加されています。特にプレイヤーからの反響が大きかったコンテンツはありますか。
チュ・ミンソク氏(以下、チュ氏):
さまざまな新規コンテンツを実装しましたが、その中でもホバーバイクが最も好評でした。これまで継承者ごとに移動速度の差があったのですが、ホバーバイクによってどのキャラクターでも快適に移動できるようになり、探索のテンポが劇的に向上しました。『NieR:Automata』コラボも非常に大きな反響がありましたね。

——ホバーバイクの開発で大変だった点や、こだわった点はありますか。
チュ氏:
ホバーバイクは従来よりも圧倒的に速く移動できるため、背景のグラフィックを高速で読み込む必要がありました。ローディングの最適化を進めながら、スピード感を損なわないよう調整するのが非常に大変でしたね。
そして特に気を遣ったのは、「他のアクションと自然に連携できること」です。たとえば走行中にグラップリングフックやスキルを使っても動作が途切れないよう、アニメーションの繋がりを細かく調整しています。
「追加するだけ」では終わらない
——シーズン3ではラウンジやホバーバイクのレースなど、戦闘以外の要素の追加も印象的です。今後もこうした戦闘ではないコンテンツは増やしていく予定でしょうか。
チュ氏:
現時点では戦闘以外のコンテンツを新しく増やすよりも、ラウンジやホバーバイクの価値を引き続き高めていくことが重要だと考えています。たとえば前回のアップデートでは、ホバーバイクでモンスターに衝突した際に押しのけることができる機能を追加しました。そのように新しいコンテンツを追加して終わりではなく、さらに充実させるような方向性で考えています。
——広大なフィールドでの壮大な戦闘が楽しめる「アクシオン平野」がシーズン3で追加されましたが、今後追加されるマップも広大なフィールドというスタイルになるのでしょうか。
チュ氏:
しばらくは新たな大型フィールドを作るよりも、「アクシオン平野」内のコンテンツを拡充していく方針です。ダンジョンや特殊イベントなど、既存エリアを活かして遊びの密度を高めることに焦点を当てていきます。

——9月のアップデートではハスキー犬「スノースレッドドッグ」が追加されました。現在3種の犬がバディとして実装されていますが、今後犬以外のバディを追加する予定はありますか。
チュ氏:
今のところは犬だけですが、これから新しくバディを増やす場合は、これまでと完全にタイプの違う外見、機能を持ったバディを追加しなければならないと考えています。実装やその時期は未定ですが、開発初期からさまざまなタイプのバディを実装する構想があります。
——今後のロードマップで、先覚者モジュールやラウンジ2.0など多くの新要素の実装が予定されているなかで、もっとも大きな変更点は何になりますか。
チュ氏:
10月に大きなアップデートがあり、そこで追加される「剣」による近接戦闘がもっとも大きな変更点になります(本稿公開現在、アップデートにて実装済み)。これまでの銃器とスキル中心の戦闘に近接戦闘がくわわることで、既存の継承者たちのビルドがまた新しい方向に発展すると考えています。
ほかには、11月に実装を予定している「先覚者モジュール」と「1対1の取引」も非常に大きな変化をもたらすと考えています。

“好みで決めた”『ベヨネッタ』コラボ
——TGS開催に合わせて『ベヨネッタ』とのコラボが発表されました。このコラボの経緯を教えてください。
チュ氏:
これはイさんの好みです(笑)
イ・ボムジュン氏(以下、イ氏):
(笑)『ベヨネッタ』は私が幼い頃から大好きな作品なんです。『The First Descendant』の世界観とも非常に相性が良いと感じ、ぜひ一緒にやりたいと思いました。

——関連して、8月には『NieR:Automata』とコラボした衣装が追加されました。こちらは開発初期段階ではミッションやボスの追加も検討していたとお聞きしましたが、衣装やモーションの追加に絞った理由はありますか。
イ氏:
本来はミッションやボス戦も検討していたのですが、シーズン3の実装規模が大きく、現実的なスケジュールを考慮して衣装・モーションに絞りました。ただし、今後のコラボでは専用ストーリーなど、より踏み込んだコンテンツ展開を予定しています。
——ということは、すでに予定しているコラボもあるということでしょうか。
イ氏:
はい。詳しくはお答えできないんですが、具体的に考えていることはあります。
日本のプレイヤーは「性能を極める」傾向あり
——過去インタビューで、プレイヤーベースが非常にグローバルで、多様なフィードバックがあると語られていましたが、日本のプレイヤーに見られる特徴はありますか。
チュ氏:
『The First Descendant』の特徴として、キャラクターやゲーム内のさまざまな要素を組み合わせて多様なビルドを作ることができます。そのなかで、欧米のプレイヤーは自由な発想でビルドを試す傾向がありますが、アジア圏、特に日本のプレイヤーは「性能を極める」傾向があります。効率を突き詰め、最適解を導き出すプレイスタイルが多い印象です。ビルドの種類自体は欧米の方が多いものの、上位ランク帯で目立つのは日本のプレイヤーです。

——日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。
イ氏:
『The First Descendant』はコンソールでプレイしているユーザーの割合が非常に高く、そのなかでも特に日本のユーザーの方々の貢献度が非常に高いです。リリースから今まで非常に熱心にプレイしてくださっているユーザーが多いので、感謝の気持ちを込めて、今回TGSではいろいろなコンテンツを直接お見せしたいという思いで来ました。
チュ氏:
普段から、日本のユーザーやYouTuberの方々がアップロードしてくださる動画や攻略法などを楽しませてもらっているので、日本のユーザーの方々が実際どのようにゲームを楽しんでいらっしゃるかに興味がありました。今回TGSで日本のユーザーの方々の生の声を聞きながら、よりグローバルに多くのユーザーが楽しむことができる『The First Descendant』を作り上げるために努力していきます。ありがとうございました。
――ありがとうございました。
ホバーバイク「ボルテックス」が圧倒的存在感を放ったTGSブース

ここからは、東京ゲームショウ2025の『The First Descendant』ブースの様子をお届けする。まず目を引いたのは、シーズン3の新要素「ラウンジ」を再現した白基調の空間だ。清潔感と未来感を併せ持つデザインは、まるでゲーム内の一室をそのまま持ってきたかのよう。『The First Descendant』を知らない来場者も足を止め、フォトスポットとしても人気を集めていた。

そして最大の目玉は、実物大のホバーバイク「ボルテックス」の展示である。流線形のボディに赤い塗装が映え、光沢のある質感がまるで実機のようなリアリティを放つ。全長は大型バイクほどで、画面の中では軽やかに見える乗り物が、実物では迫力と重量感を伴って迫ってくる。ゲーム内で改めてホバーバイクに乗るときの体感も変わりそうだ。シーズンのテーマ「突破」を表したような疾走感を感じる力の入った展示物となっている。

隣接スペースにはラウンジの部屋も再現され、人類の拠点「アルビオン」からの夕景を眺められる窓が設置されていた。さらに中央のベッドには、『ベヨネッタ』の衣装を纏ったコスプレイヤー・月野ももさんが登場。世界観に完全に溶け込んだ姿は、まさに両作のコラボの必然性を感じさせるものだった。

ラウンジには所持している継承者を配置する機能があるため、ゲーム内でも今後ベヨネッタの衣装を着た継承者をラウンジに配置できるのかもしれない。いわば『The First Descendant』の未来を先取りしたかのような展示は、否応なしに期待感を高める空間だった。

「チャレンジングスピリット」と「サービス精神」。開発チームの情熱
インタビューを通じて印象的だったのは、チュ氏とイ氏の言葉に一貫して感じられる「チャレンジングスピリット」と「サービス精神」だ。実装上の困難を乗り越えて実現されたホバーバイク、そして剣、新たなコラボと、次々に挑戦を続ける姿勢に迷いはない。リリースから1年以上を経ても、『The First Descendant』の世界はまだ進化の途中にある。年末までさらなるアップデートが控えるなか、ネクソンが描く次世代TPSアクションの到達点を見届けたい。
『The First Descendant』は、PC(Steam)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに基本プレイ無料にて配信中だ。
[聞き手・撮影・執筆・編集:Yusuke Sonta]
[編集:Sayoko Narita]