多数のスペインゲームスタジオ&300人以上のゲーム業界人が集結するイベント「スペインゲーム祭り」に参加してきた。古代祐三氏など有名クリエイターも多数登壇するTGS前夜祭

スペインを中心に大勢のクリエイターが集まり、スペイン発ゲームタイトルの魅力が盛大に紹介された本イベントの模様をお届けしたい。

東京ゲームショウ2025の前日となる9月24日、東京・神田明神ホールにて、スペイン大使館が主催する招待制イベント「スペインゲーム祭り」が開催された。本イベントは、スペインのゲームクリエイターが日本・世界のパブリッシャーや投資家、メディアとの交流をしつつ、スペイン発のゲームの魅力を広める目的で開催されている。

本イベントは、9月25日から開催されていた東京ゲームショウ2025に「Games from Spain」として出展するスペインのクリエイター、ゲーム企業が多数参加。言わば「東京ゲームショウ・スペイン前夜祭」として例年盛り上がりを見せている。今年の「スペインゲーム祭り」も300名以上の参加者が出席。会場の神田明神ホールは、さまざまな国の人々が盛んに交流をおこなっており、活気ある盛り上がりを見せていた。

本稿では、スペインを中心に大勢のクリエイターが集まり、スペイン発ゲームタイトルの魅力が盛大に紹介された本イベントの模様をお届けしたい。

本イベントのオープニングでは、『世界樹の迷宮』シリーズや『アクトレイザー』など、多数のゲームミュージックを手がけ、現在はゲーム開発会社エインシャントの代表取締役社長である古代祐三氏が、同氏が手がける2D横スクロールシューティング『Earthion(アーシオン)』のトレイラー映像とともに登場した。

古代祐三氏は、作曲家として長年ゲーム業界に関わる立場から、自身の経験も踏まえつつ、スペインの開発者たちにエールを送っていた。また、自身が尊敬するスペインのゲーム音楽コンポーザーとして、80~90年代アーケードゲームのサウンドを手がけたAlberto González氏の名前を挙げ、「たとえ国や文化は違っても、音楽と同じように、ゲーム文化もまた国境を超えると信じている」と語った。穏やかでありつつも、世界のゲーム文化を愛することが確かに伝わるオープニングトークに、会場は大きな盛り上がりを見せていた。

古代祐三氏のオープニングトークにより、会場が熱気を帯びたところで、本イベントのメインである各企業の代表によるプレゼンテーションが開始。開発中タイトルの紹介だけでなく、パブリッシングパートナーを探すもの、技術プレゼンテーション、ゲーム開発支援ツールのPR……などなど、多種多様なスペインの企業が、工夫を凝らしたプレゼンテーションをおこなっており、イベント会場は国際的な商談の場と化しているようだった。

ちなみに本イベントの参加企業は、以下の通りだ。

Vermila Studios
Undercoders
Terra Localizations
Selecta Play
Rising Pixel
Red Throne Studio
Quantum 24
Omaet Games
MoonMana Games
MaxiMJdev
Fundación UD Las Palmas
Foxter Studio
Entalto
Drakhar Studio
DEP Games
Daloar
Cosmic Spell
CoolmathGames.com by Tellmewow
Canary Islands Games
Bowl of Tentacles
Antidote

各企業のプレゼンテーションはスペインゲーム祭り公式サイトでも確認できるため、興味のある方はぜひチェックしてみてほしい。また、イベント会場には出展タイトルの試遊コーナーも存在。後述する食事・ドリンクを楽しみながら、プレゼンテーションで紹介されたゲームタイトルを実際に触ることができた。単なるビジネスの場でもなく、かといってゲームイベントでもない、陽気なパーティーのような交流の雰囲気がどことなく「スペインらしさ」を感じさせた。

各企業のプレゼンテーションに続く形で、かつてラブデリックに在籍し、『moon』『ちびロボ!』などを手がけたゲームクリエイター・西健一氏が登壇。西健一氏は、昨年も本イベントに登壇者として出席。その際に、スペインのカナリア諸島を拠点とする制作パートナーと意気投合。現在はKiriko the Mystic、邦題:『ムゲンノキリコ』を制作パートナーと共同制作しているとのことだ。

本イベントによってあらたな繋がりが生まれ、新規タイトルが生まれているという話を伺ったところで、SWERYの名で知られる、ゲームクリエイターの末弘秀孝氏が、自身の手がける最新作『HOTEL BARCELONA(ホテル バルセロナ)』のトレイラーとともに登壇。末弘秀孝氏は「ゲームのタイトルはとても重要」と話し、「タイトルに地名が入っていたら、その地域が呼んでくれて、出張としてそこに行く機会があるかもしれない(笑)」と冗談交じりに語った。

そして話題は、なぜ本作の対応言語に「カタルーニャ語」があるのかに移る。実際にスペインへ訪れた折に、NPOの方から「言語文化を守る運動にゲームの力を借りたい」という声掛けがあったとのこと。バルセロナは、スペインの中でもカタルーニャ州にある都市で、「古代カタルーニャ語」という言葉が話されていたそうだ。それを受け、ゲームが「言語の文化を守る」一助になれるかもしれないと思い立ち、本作の対応言語には「カタルーニャ語」を追加する運びになったと語った。

開発タイトルを絡めた、「スペイン繋がり」のユニークな冗談を交えつつも、文化的な背景のある開発秘話に、会場はトークショーを聞いた後のような盛況ぶりを見せていた。

また、本イベントでは本場のスペイン料理……パエリアや「原木」の状態から切り出される生ハム、デザートとして「フラン」と呼ばれるなめらかカスタードプリンなどにくわえて、スペインビールなども提供された。そうしたスペインの味を立食パーティーのような形式で満喫しながらも、商談をするもよし、試遊コーナーにて期待の出展タイトルを手に取るもよし、プレゼンに耳を傾けるもよしというように、参加者が自由に楽しめるようになっていた。

真剣な商談の場ではありつつも、仰々しいビジネスというような恰好ではなく、陽気なパーティーのような雰囲気でスペインのゲームを広めるイベント、スペインゲーム祭り。筆者は本イベントも、東京ゲームショウ2025の「Games from Spain」ブースどちらにもお邪魔させていただいたが、どちらも朗らかで開放的な印象を覚えると同時に、スペインの開発会社や企業が世界に進出・挑戦するのだという意気込みをしっかり感じとることができた。

さて、振り返り形式で東京ゲームショウ2025の前夜祭となる、スペインゲーム祭りのレポートを執筆させていただいたが、早くも本稿執筆時点ですでに、東京ゲームショウ2026の開催が決定(2026年9月17日~9月21日)されている。一般公開日も3日間に拡大されるそうなので、スペイン発のゲームタイトルに少しでも興味を持った読者の方は、次回の東京ゲームショウで「Games from Spain」ブースを訪れ、スペイン発の魅力あふれるタイトルに触れてみてほしい。

Yusuke Oizumi
Yusuke Oizumi

どんなジャンルも遊びますが、アーケードゲームとローグライクが特に好き。中毒性の高い作品を与えると喜びます。

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