セガ新作アクション『SHINOBI 復讐の斬撃』は「相手も強くて自分も強い」、先行プレイで感じた“キリキリのシノビ殺し合い体験”

『SHINOBI 復讐の斬撃』は難しいバトルの数々を、超ハイスペックな天才忍者のジョー・ムサシになって突破していく唯一無二の達成感を味わうことができる。シリーズの久しぶりの新作といえども、決してヌルくなったわけではない。本作はファンディスクではなく、現代のプレイヤーが楽しめるようにさまざまな工夫が凝らされているのだ。「忍」シリーズのポリシーを貫きながらも、現代のプレイヤーが楽しめるようにしたパブリッシャーのセガとデベロッパーのLizardcubeには称賛したい。
2025年8月29日の発売に先駆けて、本作のメディア向け先行プレイ体験会が実施された。今回プレイできたのは「朧の里」のステージと「提灯祭り」のステージだった。約40分の試乗を通じて得たプレイ感想をこの記事でお伝えする。弊誌が今回プレイしたのは、開発中のPS5版だ。記事で紹介しているスクリーンショットは開発中のバージョンで撮影したものとなるため、製品版で配信されるバージョンとは異なる場合があるので留意してほしい。
過去作を知らなくても問題ないが、知識があると感慨深いストーリー
アーケードゲームで産声を上げた「忍」シリーズはストーリーの描写が薄いところがあった。これは決して悪いことばかりではなく、その分アクションに集中できるという側面も存在しただろう。本作ではシネマティックなイベントシーンやキャラクター同士の会話イベントは増えているが、現代のゲームとしては適切な量の描写となっている。とにかくアクションを楽しみたいというプレイヤーにとっても、長いイベントシーンを見せられて興を削がれてしまうおそれは低いだろう。
最初に試乗できた「朧の里」は製品版でも第1ステージとなるようで、冒頭のイベントシーンではジョー・ムサシたちが穏やかに暮らしている様子が描かれる。朧の里で暮らしている面々にはジョー・ムサシの許婚だったナオコの姿もあり、『ザ・スーパー忍』(1989年)の最後で救出できた世界線のストーリーとなっているところだけでも往年のファンととしてはうれしかった。ナオコはジョーの子を妊娠しているらしく、家族が増えようとしている。こうしたキャラクターの登場描写は、過去作を知っていればいるほど楽しめる。

朧の里は各種のアクションについてのチュートリアルも含まれたステージであり、制限時間20分のうちにクリアすることはできなかった。それでも、世界征服のために軍事組織「ENE-CORP」を率いるルーズ卿の脅威は実感させられたし、本作を通じてジョー・ムサシと激しい戦いを繰り広げていくのは間違いないだろう。そのことは作品名に含まれる「復讐の斬撃」という物騒な言葉が示唆している。
ジョー・ムサシに不幸なことがあって復讐の旅に出るという予感をさせるが、道中で出会う仲間の存在がある種の清涼剤になっているかのような気がしてきた。ジョー・ムサシは寡黙だが、優れた実力によって尊敬を集めている偉大な存在だ。そうしたジョー・ムサシを慕う人物は数多くいるため、仲間との旅がどのようになるのかも興味深い。


一撃必殺のシノビ・エクスキューションが爽快感抜群
シリーズの黄金時代だった『ザ・スーパー忍』(1989年)と『ザ・スーパー忍II』(1993年)のころは、等身の高いキャラクターによる攻防のシビアなやり取りが醍醐味のゲームだった。過去作は正直に言って難易度はかなり高く、死に覚えを繰り返しながら試行錯誤して上達していくゲームだったといえよう。
本作の難易度もかなりの高さであることは疑いがない。序盤から遠距離攻撃を放ってくる敵は当然のように存在するし、こちらのジャンプの到達点を知っているかのような絶妙な高さで飛び道具を投げつけてくる。前衛と後衛に役割分担をして襲いかかってくる敵も序盤から存在するため、自キャラと敵キャラの距離感を見極めてタイミングよく攻撃していくことが重要だ。
バトルの難易度は高いながらも、伝説の忍者の異名を持つジョー・ムサシのスペックに違わぬ強さによって突破していくことができる。2段ジャンプや前転のアクションは序盤で解禁されるため、とにかくジョー・ムサシの機動力が高いのだ。攻撃を当てた際に時間の流れが止まるヒットストップが存在するため、積極的に攻撃すればするほどこちらのリズムでバトルを進めやすいのもいい。
新しい技を習得することでコンボがつながるようになり、空中で相手を浮かせて連続攻撃を叩き込んだり、相手を吹き飛ばしたあとの追い打ち攻撃もできるようになったりする。適切な回避から反撃をすかさず叩き込み、後詰めとしてやってきた敵も手裏剣で仕留める。そうしたスタイリッシュなアクションが自然とできるようになるほど本作のバトルは上達したいという欲望の掻き立てるものになっているし、触れやすいものになっている。


バトルは基本的なアクションのやり取りだけでも洗練されているが、一定の条件下で複数の敵を瞬殺できる「シノビ・エクスキューション」は今回の試遊でもっとも爽快感に満ちていた。敵には体力のほかに処刑ゲージが設定されており、ジョー・ムサシの攻撃で処刑ゲージがチャージされることでシノビ・エクスキューションを発動可能。シノビ・エクスキューションで倒すことのできるようになった敵には頭上に「滅」の文字が表示されるので、「滅」が表示される敵をまとめて葬り去ったときの気持ち良さは格別だ。
ジョー・ムサシが条件次第で相手の一撃死を狙うことができるのは忍者の神秘性を体現しており、とりわけ東洋のカルチャーとして忍者が好きな世界中のプレイヤーの胸に刺さるのではないだろうか。シノビ・エクスキューションを発動できるだけの処刑ゲージをチャージするには、数の限られた手裏剣攻撃や隙の多い強攻撃で敵にダメージを与えることが必要だ。ハイリスク・ハイリターンのシノビ・エクスキューションを取り入れた本作のアクションは現代に通じる戦略性の高さを生み出した。


探索要素はサイド要素で本筋はステージクリア型の2Dアクション
ジョー・ムサシと敵キャラクターの距離が少々離れていてもシノビ・エクスキューションは発動可能だ。一気に距離を詰めて問答無用に相手を斬り伏せる爽快感は確かだが、移動したあとのことも考えられない。たとえば、相手が足場から離れた空中に浮かんでいる場合はむやみにシノビ・エクスキューションをしてしまうと落下死する危険は高くなるだろう。
とりわけ、今回の試遊会で第2ステージ目としてプレイした「提灯祭り」は足場の悪いところが多くて敵とのバトルよりも落下ダメージに苦しめられた。ジョー・ムサシの自重で沈みゆく船の上での戦いを強いられる場所も存在し、沈没を遅らせようとするとちょうどそこに敵の飛び道具が放たれる始末である。
本作はいわゆるメトロイドヴァニアではない。シリーズの伝統を受け継ぐステージクリア型の2Dアクションゲームだ。それでも探索要素は過去作よりも拡張されており、行き止まりの道を行ったり来たりして先へ進む道を探していく。レバーを上げ下げすることで行ける場所が増えていくのだが、正直なところ移動も攻撃も連続で行うことのできるジョー・ムサシのプレイフィールからすればもどかしく感じた部分も否定できない。次へ進むためのレバーがある場所はプレイ中に画面誘導で教えてくれるし、マップを見ることもできるので探索自体に悩む必要がないのが救いだ。


ステージの背景グラフィックは、どの場所も描き込まれている。1つのステージのなかでも屋外や屋内のさまざまなロケーションが存在し、ジョー・ムサシの機敏な動きに合わせて移り変わる景色の美しさは格別だ。「朧の里」と「提灯祭り」の2つのステージだけでもグラフィックや探索していて受ける印象がかなり異なったので、製品版でプレイできる各ステージのバリエーションも多彩なものになっているはずだ。
緻密なグラフィックは、セガと組んで本作を開発するLizardcubeの功績が大きい。『ワンダーボーイ ドラゴンの罠』(2017年)と『ベア・ナックルIV』(2020年)は開発に参加したLizardcubeの貢献は広く知られていることであり、レトロIPの復活を実現させることのできる稀有な開発スタジオと言えるかもしれない。『SHINOBI 復讐の斬撃』にしてもシリーズ久しぶりの新作だが、黄金時代を迎えていた『ザ・スーパー忍』(1989年)と『ザ・スーパー忍II』(1993年)をベースに現代でも通用するグラフィックと快適なバトルシステムがLizardcubeによって実現した。


適切な回避の方法を選択するのが重要なボス戦
ボスは通常の敵とは一線を画する強さを持つ。その代表的な例は「ダークアタック」だ。ダークアタックは正面から止めることも避けることもできないため、2段ジャンプなどによってかわさなければならない。ダークアタックで喰らうダメージは結構大きいので当然回避したいが、相手は通常の攻撃も織り交ぜてくるのが厄介だ。ダークアタック発動時には紫のオーラが表示されるので、そちらを見れば対処はしやすい。
第2ステージ目の「提灯祭り」のボスは弱攻撃ではダメージの通らないシールドを持っていたため、まずは強攻撃でさきにシールドを破壊する必要があった。溜めの必要な強攻撃と瞬時の回避が必要なダークアタックの相性は最悪で、きちんと見極めないとあっという間に体力を削られてしまう。ただし、ゲームオーバーになったとしてもボス戦の場合は直前にチェックポイントが設けられているのがありがたい。死に戻りを繰り返して、苦戦したボスを倒すことができたときは達成感があった。
本作にはかなり細かく難易度を調整する機能が搭載されている。敵のHPや攻撃力を半減させることができるほか、敵の攻撃頻度を下げることも可能とのことだった。さらに、難易度の調整はプレイ中いつでもできるため、どうしてもクリアできない場合はそちらを活用するのもいいだろう。試遊をプレイした限りでは理不尽なほどの難しさは感じなかった。ジョー・ムサシのハイスペックを活かせるように考えて戦っていけば、勝ち筋が見えてくる。そのバランス感覚は『ザ・スーパー忍』と『ザ・スーパー忍II』に通じるものがあり、伝説のアクションゲームがよみがえったことを実感できるものだった。


IPホルダーとしてのセガの誇りとLizardcubeの情熱の融合によって開発中の『SHINOBI 復讐の斬撃』は、シリーズの復活を期す絶好のタイトルだ。『SHINOBI 復讐の斬撃』は2025年8月29日に発売予定。プラットフォームは、PS5/PS4/Nintendo Switch/Xbox Series X|S/Xbox One/PC(Steam)となっている。通常価格は3300円(税込)。予約すると特別価格の2970円(税込)で購入可能(PS5/PS4版はPS Plus会員のみの割引)となっている。